多摩川が近くにある暮らし。【榎戸 大吾(A&F)】

小さかった頃から近くに川があり、川で遊んでいた。今も子どもと一緒に遊びに行く。特別なものではない身近な自然との程よい距離感のある暮らし。

文 = 宙野さかな text = Sakana Soarano
写真 = 伊藤 郁 photo = Kaoru Ito


ー 羽村に自分たちの家を建てたのは、いつ頃だったのですか。

榎戸 6年か7年前ですね。そもそも青梅で生まれ育って。横浜に住んでいたこともあったのですけど、子どもを育てる環境がいいと思って青梅に戻ってきたんです。そして羽村に越してきて。


ー A&Fでリペアの仕事をしていますが、リペアの仕事をするようになったきっかけは?

榎戸 小さかった頃にボーイスカウトに入っていたんですね。ボーイスカウトもいろいろあって、キャンプや山登りなどアウトドア寄りのところだったんです。高校時代は青春18切符でどこまでいけるかやってみたり。そしてアウトドアが好きでREIで働くようになったんです。


ー 南町田にあったREI?

榎戸 そうです。REIはわずか1年半で撤退してしまったんだけど、スタッフはタレント揃いだったんです。なんでもいいから自分ができることをアピールしていかないと生き残っていけないという雰囲気があって。僕はミシンができたから、簡単なミシン仕事をするようになったんです。その後、帆布屋さんに行ったんですけど、すぐに辞めて。REI時代の仲間にパタゴニアのリペアを紹介すると言われて、それからリペアの仕事をするようになったんです。


ー その後にA&Fに入ることになるのですね。

榎戸 現会長の(赤津)孝夫さんがカバンの修理を会社としてやりたいと言っているんだけど会ってみないか、と誘われて。会長は「リペアを会社で持つことは夢のひとつ」と話していました。もう14年か15年前のことですよ。長く使ったものって、やっぱり愛着が出るじゃないですか。直して使いたいっていう人は、山ほどいるんですよ。


ー 使い捨てではなくいいものを長く使う。

榎戸 僕は家具作りの木工の学校を出ているんです。けれど設計とかデザインは苦手。何かを作るよりも直すことが好きなんです。使っていたものを直す。それは僕の仕事なんだけど、また使えるってみんな喜んでくれるんですよね。その顔を見るとやっていてうれしいっすよ。


ー 羽村での暮らしはどうですか。

榎戸 すごく居心地がいいですよ。古い人ばかりではなくて、外に出て戻ってきたという人も多いし。なんか柔らかいです。うちらのように、子どもを育てる環境としての魅力があると聞いて新しく入ってくる人もいます。保育園がアレルギーの対応をしてくれたりとか、週末ごとにプレーパークがあったりとか。


ー ここで暮らすメリットをどう感じていますか。

榎戸 新宿の仕事場までドアトゥドアで1時間半ちょっと。都区内の人からは「よく通うね」って言われることもあるけれど、週末の楽しさは格別なものがありますから。逆にコンクリートに囲まれた都区内に住むのは、うちでは考えられないですよ。


ー どんな遊びをしているのですか。

榎戸 近くに多摩川があるんですけど、夏は川ばかり行ってますよ。上の子どもが小さな頃は、田んぼに行ってトンボを追いかけたり、虫を捕ったり。そんな身近な自然に触れる遊びばっかりですよ。


ー 遊べる川が近くにあるっていいですよね。

榎戸 川が近くにあるところで育っているから、川がないと耐えられない。学校の決まりとしては遊泳禁止。子どもだけで川にいかないようにとも言われています。最初はもったいないと思えるほど、川で遊んでいる人は少なかったですけど、うちらが遊ぶようになって増えてきたように思います。「ここで泳げるんだ?」なんて聞いてくる人もいるし。夏が涼しいのもいいですね。


ー 距離感やバランス感がいいということ?

榎戸 地域が抱えている楽しさって言ったらいいのかな。それは自然だけに限らず人も。適度な距離感もいいんです。おじいちゃんおばあちゃんも、自分のところの子どもだけじゃなくて、どこの子どもでも大切にしている人たちが多い。地域のおじちゃんから僕に、そして子どもたち世代に、地域の持つ特性なり文化なりが受け継がれていけばいいなと思います。


ー 近い未来の目標を教えてもらえないですか。

榎戸 できればこっちでリペアの仕事をしたいっていうのが目標ですね。リペアはミシンがあって宅急便の集配があればどこでもできる仕事です。ミシンに向かうということに関しては新宿でもここでも同じ時間なんですけど、風とか音とか季節の匂いとか違うんですよね。家に土間があるんですけど、ゆくゆくはここでできたらなって。

榎戸大吾
パタゴニアでリペアの仕事をスタート。グレゴリーでリペアを募集していることを知りA&Fに転職。今では、バッグだけではなく、ウェアやテント、ファニチャーまで幅広くリペアを行なっている。出身は青梅。自然に負荷をかけない暮らしを心がけている。https://aandf.co.jp/

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