原宿から伊豆南へ。戻る場所を確認するために。【リリー&とおる(As it)】

リリー&とおる(As it)
シーズンに入るとほぼ毎週末にどこかのフェスかイベントへ。自然のなかや地方都市から原宿に戻るというサイクルが続いた。果たして原宿は戻るべき場所なのだろうか。その答えを探すために伊豆南での暮らしがはじまった。

文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi

写真 = 宇宙大使☆スター photo = Uchu Taishi ☆ Star


ー ふたりはいつ頃から伊豆南方面に来るようになったのですか。

リリー 震災があってからですね。とおるがサーフィン、私がボディボードをやっていることもあって、休みが取れればよく海に行っていました。震災後、湘南から北の海には入らなくなって。それで伊豆南に来るようになったんです。来るとペンションや民宿などで部屋を借りて泊まることになる。それだとお金もかかるので、物件を借りたほうがいいねって話が出て。それで下田の外浦に家を借りたんです。オフの時間を充実させるために。


ー それは何年くらい前のこと?

リリー 3年半前ですね。

とおる 以前から知っていた人たちも少なくなかったんですけど、少しずつ知り合いも増えていって。来るたびにいいところ、いい人と出会うことができたから、どんどん深さも広がりも出てきて。


ー そして原宿にあったSOLを閉めて、伊豆南に越してきた。

リリー SOLは原宿で18年やっていました。イベントやフェスの出店のときには、スタッフにお店を任せて。出店が終わって、伊豆南に一戻ってきて疲れをとってリセットして、原宿の店に戻る。原宿ではお店に寝泊まりする。そんなスタイルでしたね。

とおる 僕にとっては、原宿はいたい場所ではなかったし。


ーフェスにはいつ頃から出店するようになったのですか。

リリー 10年くらいやっています。もともと音楽イベントが好きだったので。だから出店という名目で遊びに行くというのがはじまり。最初はフェスに行きたいという気持ちがあって、じゃあ出店という形態にしたらいいかって。出るようになったら、やっぱり楽しくて。そこで出会う人たちも刺激をもらえる人が多くて。そこでつながって、今度がこんなイベントがあるからって誘われるようになって。

ー フェスに出店してお店に戻ってくる。そのサイクルであれば、むしろ原宿という場所にこだわらないほうがいいかもしれませんよね。

とおる 彼女がより体感していると思っけど、原宿の街はどんどん移ろいでいて、外国人ばかりで、日本人はお金を持たなくなって。個人経営の店は淘汰されて、資本のあるところばかりになってしまっているんです。

リリー おもしろい人も少なくなりましたね。古着も安いものがより求められるようになって、ものが持っている価値よりもリサイクルというニュアンスが強くなってきて。ビンテージに価値を見出す若者が減ったのかなあと思います。伊豆南に来て感じるのは、いいものに対してお金を払える人のパーセンテージが多いってこと。もちろんライブや芸術に対しても同じ。


ー 完全に引っ越してきて、どんなことを感じていますか。

とおる ストレスはほとんどなくなりましたね。友だちや興味を持ってくれた人が寄っていってくれる。

リリー 伊豆南の人って、新しもの好きかもしれない。なんだかんだみたいな感じで、日々誰かが寄っていってくれます。とおるこっちがいいと思ったのは、地元の人たちが寛容なこと。僕らのような、何をやっているかわからないような見てくれの人間でも、差別しなくて個性として見ていてくれる。住んでいて違和感のなさを感じるんです。

リリー こんな風貌でも、じいちゃんばあちゃんが優しくしてくれて。こんな私たちみたいな人こそ、地域のために頑張ってくれるっていうことをわかってくれているみたいなんですよ。


ー ここでどんな暮らしをしていきたいと思っていますか。

とおる 自分の作ったビールをいろんな人に飲んでもらいたいですね。まだオープンして日が浅いんだけど、好きな音楽をかけて、いろんな人が交流する場になりかけているから、そこを発展させていきたいなって思っていますね。

リリー 人生を折り返しているので、今までに味わったことのない穏やかな生活というか(笑)。ご飯をちゃんと作って食べる。そんな当たり前のことがまったくできていなかったので、逆にそういうことを大事にした暮らしをしていきたいなって思っています。原宿のときは本当に忙しくて。友だちが来ても、忙しそうだから帰るねってよく言われていたし。ここではとことん一緒にいる。食べて、飲んで、話して。それが今までにできなかったことだから。フェスの出店も続けますけど、地元のイベントにもできる限り参加しようと思っています。地域のためにお手伝いできることはして。それがここに暮らす役割だと思うので。


リリー & とおる(As it)
裏原宿のビンテージ古着とリサイクル&ハンドメイドのセレクトショップ「SOL」。18年も続いた原宿の店をクローズし、伊豆南で8月8日にクラフトビールを提供するオープンバーとホステルも兼ねた「As it」としてオープン。フェスの出店は現在も進行中。
http://asit.beer


INFORMATION

1月2日(水)1月14日(月)まで吉祥寺パルコ1FにPOPUP SHOPとしてSOLが出店。「DEALを見た」と言ってくれたら10%OFF!


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