RAINBOW CHILD 2020 岐阜県八百津町 西田優太
福島原発事故は多くの人に気づきをもたらし、その気づきが行動へとつながっていった。被災した家族を保養することを目的に活動している海旅キャンプ。そしてそれをきっかけに立ち上がった〈RAINBOW CHILD 2020〉。このタイトルには20年前に開催された〈RAINBOW 2000〉のメッセージを継承するスタンスも込められている。
文・写真 = 菊地 崇 text・photo = Takashi Kikuchi
ー〈RAINBOW CHILD 2020〉を立ち上げたきっかけはどういうものだったのですか。
西田 東日本大震災以降、僕らは災害支援をしていて、東北でいろいろ活動していくなかで「保養」ということを思いついたんです。八百津に福島の子どもたちを夏休みに呼んで、思いっきり外で遊んでもらう。海旅キャンプという名前で、その保養キャンプは今も続いていて、毎年募金によって開催しているんですね。イベントの収益によって、その保養キャンプの経費を捻出できないかなって思った頃に、たまたま〈RAINBOW 2000〉のプロデューサーだった越智純さんにお会いしたんです。
ー〈RAINBOW CHILD 2020〉という名前から、〈RAINBOW 2000〉との関係をイメージしていました。
西田 〈RAINBOW CHILD 2020〉をはじめるまで、僕はフェスには行ったことがなかったんですよ。たまたま越智さんと会って、話をして、それでスイッチが入ってしまったんです。今年で5回目の開催ですから、2013年のことですね。不思議な縁だと思います。
ーあえてフェスのタイトルを〈RAINBOW CHILD 2020〉とした理由は?
西田 僕は〈RAINBOW 2000〉に参加していないし、どういうフェスだったのかも知りません。けれど越智さんとの話のなかで、いろんな問題が世の中にありつつも2000年まで踊り続けようという思いで名付けたということを聞きました。大震災があった後だし、大変な状況が降りかかってはいるんだけど、僕らは2020年まではやろうという意志を込めて、このタイトルにしたんです。
ー実際に2014年にフェスをスタートさせました。その踏ん切りはどう自分でつけたのですか。
西田 勢いですかね。昔から何事もそうです(笑)。25歳のときに名古屋でバーをはじめたんですけど、そのときも勢いだけでした。バーをはじめたらすぐに大震災があって、被災地に飛んで行った。これも勢いです。やってしまうと、もちろん失敗します。そしてそこからいろいろ学ぶ。
ー何か思いついてしまうと、すぐに行動に移してしまうんですね。
西田 そうなんですよ。すぐに行動してしまう。それでうまくいったことはないです(笑)。だけど続けていれば、いつかは必ず…。去年の〈RAINBOW CHILD 2020〉は雨にやられてしまって、大赤字を抱えてしまいましたけど。
ー続けるモチベーションってどこから生まれてくるものなのですか。
西田 フェスをやって、今まで一度も成功したことがないからじゃないですか。
ーフェスで成功するということは、何をもって成功と感じるのでしょう?
西田 わからないですね。満足しちゃうと次の展開がなくなってしまうのかもしれないですけど。毎年、これをもうちょっとやっておけばということばかりなので。だからまたやりたくなるんでしょうね。
ーフェスを開催するにあたって、もっとも大切にしていることとは何ですか。
西田 ありきたりですけど、当日の事故など、問題が起きないように準備していくことじゃないですかね。事故があったとしたら、フェスがいい思い出になるはずなのに台無しになってしまう。店と一緒で、また来たいと思ってくれるようにすること。
ーそれでは一番の喜びとは?
西田 設営から本番、撤収まで大変なことばかりです。だけどちょっと時間が経って、誰かがフェスのことをつぶやいていないかなって気になってチェックしてみると「楽しかった」とか書いている。それを見るとやってよかったなって思います。県外や海外からもこの日のために手伝いに来てくれる仲間がいるんですけど、そういう仲間たちとフェスで顔を合わせられることもうれしいですよね。〈RAINBOW CHILD 2020〉をやっていないとずっと会わなかった人たちが、フェスをきっかけに顔を合わせる。
ーだからこそ、同じ時期に同じ場所でやるっていうことも大切なのかもしれないですね。
西田 バーをやっていても感じているんですけど、コミュニケーションの場所がどんどんなくなってきていると思うんです。会うよりSNSだったりで済ませてしまうことって多くなっているじゃないですか。今の時代、これからの時代にこそ、集う場所が大切なんだと思います。だからこそいろんなフェスが全国で開催されている。これはすごくいいことだと思います。
ーフェスにはメッセージも込められるべきだと思っています。〈RAINBOW CHILD 2020〉に込められたメッセージとは?
西田 八百津という町を盛り上げたいという気持ちはもちろん持っています。ただ最初は、この町じゃなきゃいけないっていうことではなかったですね。たまたま八百津の山なんやをベースに海旅キャンプをスタートさせて、1回目の会場が山なんやだったというだけ。昔、四国のお遍路さんを歩いて廻ったことがあったんです。そのときに多くの地元の方と話す機会があって。おじいちゃんやおばあちゃんがすごく世界平和のことを願っているという印象を受けて。だからこそ今の日本がこうして平和なのかなって思ったんです。今度は僕らの世代が世界平和を願ったり思ったりすれば、それが次の世代にも伝わっていくのかもしれない。だから大きなテーマとして「世界平和」ということをずっと思っていまず。そのきっかけがフェスであったり音楽であったり。そこで平和を楽しむというか確認するというか。そういう場所でありたいなって思っています。
ー世界平和のためには、何が必要だと思いますか。
西田 産業として戦争よりも儲かる何かを生み出すことじゃないですか。それがフェスだったり音楽だったらいいなって思っています。もちろんそれが現実になるかどうかはわかりませんけど、そういう思いを持ってやっていますし、そう思うことでそこから何かが生まれるかもしれないですしね。
RAINBOW CHILD 2020
8月12日(日)
蘇水公園特設会場(岐阜県八百津町)
出演:bird、Rickie-G、Dachambo、かむあそうトライブス、SAIRU、DELI、工藤真工、他
www.rainbowchild2020.com
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