Oregon Clips 宝船はスペースシップとなり【DACHAMBOアメリカ・オレゴン紀行】


太陽が月によって覆われる皆既日食。ほぼ1年に1回、地球のどこかでこの天体ショーは行われている。今年8月21日、北米大陸を横断するように皆既日食が起こった。アメリカ、オレゴン州の沙漠地帯で開催された野外パーティーが〈OREGON ECLIPS〉。世界各国のパーティーオーガナイザーが集結して、世界各国からアーティストを招いて7日間に及ぶパーティーを開催した。日本を代表して出演したのがDACHAMBOだった。日蝕という特別な時間に受け取ったものとは何だったのか。

文 = AO YOUNG text = AO YOUNG
写真 = 宇宙大使☆スター photo = Uchu Taishi ☆ Star


 皆既日食。


 結論から言えば、はるかに想像を超えていた。噂でも写真でも知っていたし、ましてや2009年の奄美大島では、薄曇りだったが体験している。しかし、乾ききった壮大すぎる大地の果てで、ゆっくりと月が太陽に重なってくるなか、ぐんぐんと気温が下がりだし、はっきりと太陽と月と自分と地球が、ひとつの直線で結ばれた瞬間、鳥肌が止まらなかった。肉眼で見えるブラックホールな太陽と、それを取り巻く淡く青い光、間接照明のような360度のパノラマ夕焼けのなかで、口をぽっかり空けて立ちすくみながら、涙が止まらない感じ。奄美大島の時の涙はなんだったんだ!?(DVD『ECLIPSE ROAD』参照)てくらい、言葉にするほど嘘っぽくなるような、そんな全身で受け止める体験でした。


 そして、そんな体験をしたその夜、あの一番デカいステージでライブをやれるなんて… 地球規模でこんなに光栄なことはないよって思ってしまう。



 今回のドラマチックな旅は、我が楽団DACHAMBOが、アメリカ・オレゴンの皆既日食会場で行なわれるビッグ・パーティー〈OREGON ECLIPSE 2017〉の出演が決定した、年明けより始まっている。


「行けるかも!?」という小さなきっかけから、どういうわけかメインステージのヘッドライナー前に抜擢されたり、機材や予算の調整、はたまた初のクラウドファンディング大成功! まで、トントン拍子にはいかないが、メンバー同士喧嘩したり仲直りしたり、VISAの申請も一番張り切っていたOMIちゃんだけ、なぜか面接で落とされ、出発2日前に受理される、という小さなミラクル(というか既にドラマチック)は続き、そしてアメリカに着いてからも、小さな奇跡は連続するのであった。

 アメリカに到着したのは、イベント開始日の8月17日。


 ポートランド空港に降り立って最初に感じたのは、湿度がまったくない! ということ。日本の夏と違って、暑くても汗かかないし、ビールもぬるくならない! こんなに過ごしやすい夏がこの世界にあったのか。雨もほとんど降らないので山火事も治まらないらしい。これはダイヤモンド・リングにも期待が高まる。自然も多いし人も優しいし、さすが全米住みたい街NO.1だ。しかし、我々が向かう会場は、砂嵐の巻き起こる荒野。必要なサバイバルグッズを買い集め、ディスペンサリーショップをハシゴして、大渋滞を回避しながら会場に到着したのは、18日の深夜。


 会場は、ポートランドから車で4時間くらいの、バカでかい国立公園のなか。大阪市の面積と同じくらいだという。到着早々、さっそく迷子になりながら、会場を探検して回る。

 レーザーと星が降り注ぐ会場は、ひたすらデカく、巨大な光るオブジェも会場中に散乱している。とにかく、突発的に発生したブースも含めると大小30近くのステージやエリアがあり、EDMはもちろん、テクノ、ハウス、サイケデリック・トランス、アンビエント、ファンク、ヒップホップ、はたまたブルーグラスのステージまで。大好きなジャムバンドもたくさん出てるし、音楽以外のアーティストや、世界各国のシャーマンまで招集するという徹底ぶり。日本代表Re:birthチームを含む、10ヶ国のオーガナイザーで運営されているのだが、会場にいた5万人が好き放題やってるようで、ひとつのデカいフェスというアートを、みんなで楽しく組み立ている感じが、来たるべき皆既日食に向かって、ひとつになっていくみたいでわくわくした。


 そして、果てしなく歩いた一番奥に一番デカいメインステージ、DACHAMBOが演奏する、その名もそのまんま「ECLIPSE STAGE」がある。HATAさんと下見に行った時は、照明のチェックをしていたのだけれど、これぞアメリカのビッグ・ステージ! というサウンドシステムと照明がエグいくらいに設置されており、まだステージに立ってもいないのに、興奮が収まらなかった。〈フジロック〉でいうグリーンステージか、それ以上の規模だと思う。


 標高が高いのか、夜はとにかく寒く、ダウンを着ていても震える時もあるほど。アーティストテント村に戻って、寝袋と毛布にくるまって凍えながら寝るのだけれど、陽が昇り、午前中にはテント内がサウナ状態になる。なので、みんな同じくらいの時間に起き出してくる。あまりの暑さと砂嵐、そして広大すぎる会場に、中年達は出かける気力を失い、それぞれ日陰を探して昼寝スポットを確保する。オレはアーティストが集まるラウンジのような、タープとソファーだけの場所がお気に入りだった。後発隊でやってきたエージだけは、遅れを取り戻すべく朝から気球に乗る行列に並んだり、池に飛び込んだり、昼間の会場を誰よりも満喫していたようだった。

 そんな折、出演の前の日にゲリラライブをやらないか? という話を持ちかけられた。誰も見ず知らずのバンドが、いきなりメインステージに立つよりも、宣伝とリハを兼ねて演奏した方が良いというスタッフの提案だ。正直言うと、気持ちはメインステージに照準を合わせていたので、まったくやる気がしなかった。機材も音響もほとんど揃ってない状況で、中途半端な状態を晒すよりは、メインの出演でビシっと決めた方がかっこいいと思ったからだ。しかし、オレ以外のメンバーはどんな状況でもやる気だった。そしてこのゲリラライブが、次の扉を開くきかっけとなる。


 20日の夜、ストリング・チーズ・インシデントの演奏が終わって深夜2時。メインステージから真逆に30分くらい歩いたところにある、チルアウトスペースのような場所にドラムが一台、アンプも足りない状況の中、DACHAMBOの音が少しずつ重なっていく。あまりの気候の違いにギターのチューニングも狂いまくり、弦も切れまくり。それでも演奏中、ふと顔を上げると、たくさんの外人さんが目の前で楽しそうに踊っているのだ。その楽しさは勝手にどんどん広がり、まったり座っていた人達もどんどん立ち上がって踊り出す。結成間もない頃の、代々木公園でやったゲリラライブの感覚によく似ていた。1時間あまり演奏した後の盛り上がりは、見知らぬ土地でも音楽で繋がれる自信になり、いろんな人に話しかけられるようになる。そして、何よりライブをしたフロアのボスが、なんと〈バーニングマン〉のステージのひとつを担当しているスタッフだったのだ! 話はどんどん〈バーニングマン〉のブッキングに進み、The MANが燃える一番盛り上がる日のステージまで用意してくれるところまで進んだのだが、飛行機の予定や予算などの大人な事情で、初日のステージのヘッドライナーという扱いで、招待してくれることになったのだ。これ以上どうぶっ飛べばいいんだ!?  


 ライブが終わったのが朝方4時過ぎ。皆既日食を観測する為に朝8時集合。これは寝たら危ない。というか興奮覚めやらず、寝れなかっただけだけど、またまたひたすら歩いて、日食をみんなで観測する為に建てられたソーラーテンプルという寺院へと向かう。


 中央ではネイティブの酋長や沖縄のカミンチュなど、世界中のシャーマンがメッセージを唱えている。睡眠不足と歩き疲れで意識朦朧としてるなか、太陽が欠け始める。太陽と月が完全に重なるまで、相当な時間が経っているように感じながら、徐々に気温が下がっていく。


 皆既日食に関しては、体験した人それぞれの受け止め方があると思う。太陽が闇に包まれるって、昔の人は恐かったと思う。


 しかしダイヤモンド・リングが瞬き出し、暖かさが戻ってくる時に分かる太陽の偉大さは、今まで思ってた以上の感謝が、誰にも溢れだす瞬間だった。そしてそれを、名前も人種も超えて共有することの喜びが、そこにはあった。

 すべてにおいて感謝しか残っていない中年バンドは、その夜最高のステージをすることになる。ステージから見渡せるパノラマの夕焼けが徐々に暗くなり、ステージでは待ってましたと巨大なレーザーや照明が放たれる。会場にいる9割以上の人が知らないと思われる、日本人バンドの演奏に、人々も徐々に集まり出してくる。気持ちのなかでは、神風のハチマキ絞めた愛の特攻隊長である。無我夢中で演奏していたので、最後の方で電源を落とされたのも気がつかなかった。どうやらストリング・チーズ・インシデントの都合で演奏時間が短縮されていたのだが、1〜2分押した所で電源を落とされていたらしい。んなもんオレタチの都合でも責任でもなんでもないのだが、気づいたらプロレスのレフリーの様に舞台監督が乱入。強制終了しようとしていた。オレはそいつをシカトして、もちろん最後の「PEACE!!」まで言わせてもらった。特に問題にはならなかったが、アメリカのショウビジネスの徹底ブリを垣間見た気がした。後になって、イベントの最高責任者がその話を聞いて「COOL!」と一言褒めてくれていたらしい。俺にとっては表彰状だと思う。

 その後も、ストリング・チーズ・インシデントの完璧な演奏を楽しんでると、アメリカ人の友達がいっぱいできたり、そいつらみんなでスティーブ・キモック・バンドを観に行ったり、ようやく会場の全体を把握する頃には、次の会場へ向かわなければならない、いつものパターンが待っていた。ポートランドに戻り町のライブハウスでGIGをした後は一路〈バーニングマン〉へ。


 そこには、オレゴンの感動すら吹き飛んでしまう、世界一クレイジーと呼ばれる世界が待っていたのだが、字数の題でまとめきれないので次の機会に。

 とにかくアメリカのパーティーシーン、そしてポートランドの町中でも感じたことだが、究極の自由には、究極の自己責任が付いてまわるのだと。日本人のように他人の目を気にして、ファッションや言動を選ぶことはしない。自分が好きなことは、とことん好きにやる。たくさんのジャンルのたくさんのアーティストを目の当たりにして、自分のなかに必要なものは、演奏を上手にすることでもお客さんの盛り上がりを気にすることでもなく、誰よりも自分でいようとすること。そういう人達が、とてもカッコ良く開いていて、お客さんだろうがアーティストだろうが、参加するということを誰よりも楽しんでるようだった。何万人という人達が、まったく違うベクトルを持っていても、各自の思いやりとマナーで、ひとつの素晴らしいアートが完成できることに興奮した。


 フェスが日常として入ってきている今の日本では、責任を人に譲り、自分の常識や生き方までも変えられず、その枠から出ようとしないことが、安心だと思ってる人が多いように感じるのだけど、そもそもフェスってなに? 祭ってなに? ひとつの場所に人が集まるということは、それだけで意識を変える力があるのに、コンビニエンスなフェスでは気づかないことも多い。音楽と自然と人間の営みの調和のなかで、後から気づかされることの大切さ。ちょっとした気遣いにも感動したい。そんな想いを、日本に持ち帰ってこれただけでも、とってもミラクルな旅だったと思う。DACHAMBOの、今後の日本のPARTYシーンの役割が、ちょっとだけ分かった気がしました。


 今回のDACHAMBOの旅に夢と希望を託してくれた皆さんに、心より感謝して。


~ダチャンボ皆既日食映像化大作戦~

クラウドファンディング大成功ありがとう!!

DVD完成記念試写パーティーという名の忘年会!!!

DACHAMBOは3日間全て異なるセットでお出迎え!


★12/15(金)大阪 パインブルックリン

OPEN/ START18:00

上映会 21:00予定

DAY 1 Dachambient set

Special Guest : AQATUKI

★12/16(土)豊橋 Greenstone Cafe

OPEN/ START16:20

上映会19:00予定

DAY 2 Dope Jamin’ set

Special Guest : チャッカーズ

★12/17(日)青山 月見ル君想フ

OPEN/START / 18:30

上映会19:30予定

DAY 3 Cosmic Dance set

Special Guest : 佐藤タイジ (シアターブルック)

Guest DJ :Moc (Powers) / shintalow (BLUEBLACK)

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