秘境祭インタビュー オールナイトという時間が作るストーリー

山梨県小菅村にある玉川キャンプ村。都内から車で2時間程度の山のなかのキャンプ場で、オールナイト・パーティー秘境祭が開催される。チケットは限定300枚。会場には露天風呂もあり、何よりも参加する人の居心地の良さを求めている野外フェスだ。奥多摩駅から無料のシャトルバスも運行され、終電で奥多摩駅にたどり着けば、会場に行けるという。今年10回目の開催を迎える秘境祭のオーガナイザー、木下竜さんにインタビュー。


–––– 今年で10回目の開催となる秘境祭。そもそも秘境祭を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。

 高校生の時にフジロックに初めて行き、大自然のなか踊り狂う数万人のエネルギーにすっかり虜になり、いつか出演したいと思ったんです。それから数年、キャンプにどハマりし、大自然のなかで酒を浴びるほど飲む快楽にすっかり虜になりました。その頃もバンドをやっていたんですがまったくフジロックからオファーがかからなかったので、自分でやったらいいのではと思いはじめたのがキッカケです。

–––– どんな特徴を持ったフェスですか。

「究極に遊べる」「極上の体験」「夏の終わり」が大きなテーマとしてずっとあります。その享楽と夏の終わりの刹那のエモーショナルを制作チームが共有して祭を作り上げています。特徴としてはバンドステージも20時間オールナイトてぶっ通しでやったり、誰でも参加できるカラオケ大会や樽酒の鏡割り、過去には自由に参加しJAMSESSIONができるスペースを用意したりしていました。

 デコレーションチームのsidyuuri+vaaaahanaは毎年会場のアートテーマを設定してこの日のためだけに装飾を制作しているのですが、毎年景色の変わる会場、ステージは本当にクリエイティブと情熱、新しいチャレンジで溢れていると思っています。

 会場内に露天風呂があって最高です。温泉に浸かっていながらにして音が楽しめるなんてヤバくないですか?!300人限定にしてるんですが、運営してるだけで仕事に追われて終わってしまうのではなく、一緒に乾杯したり踊ったりしたいし、自分達も楽しみたいんです。居心地の良さを何より大切にしていて、お客さんが気持ちよく過ごせる、遊びやすい場作りを常に追求してます。自分としてじゃフェスというよりパーティーだと思ってます。

–––– オールナイトにこだわっている理由は?

 夏の終わりぐらい一晩中朝までハシャギたいなぁと思ってます。フェスに行くと、テントで盛り上がってしまって早い時間に飲み過ぎちゃってツブれてしまうことがよくある。変な時間に復活したけどステージやってなくて、さみしいって思っちゃうんですよね。ならば、ずっとやりましょうよと。タイムテーブルは壮大なDJMIXみたいなものだと思っていて、絶対に深夜にハマる音とか、サンセットはこの人にお願いしたいとか。朝日とともにこの曲なら突き刺さるだろうなとか思って組んでるとどうしてもオールナイトになってしまいますね。1日という時間が見せるグラデーションと音楽の相乗効果は、自然のなかいると本当に説得力を持ってグッと伝わってくると思っています。

–––– この10年でどんな変化を感じていますか。

 リピーターのお客さんが年々多くなってきているのを実感していて本当にありがたいです。秘境祭のスタッフやクルーもみんないい年齢になっていて、結婚とか仕事とか人生の転換期になっても変わらない熱量でやってくれいてるのは本当にありがたく稀有なことだと思っています。もちろん出会いもあれば別れもありますがそれが1番エモいです。パーティーはお客さん、関係者をふくめ、絶対に同じメンツ、同じメンバーは集まらない。毎年奇跡が炸裂してるとしか思えません。それが秘伝のタレみたいに、いい塩梅になって混ざっていくパーティーの熟成を感じます。個人的にはまったくのズブのシロウトだった初年度開催は運営がヒドすぎて参加者全員に土下座したんですが、最近は土下座しなくなりましたね。少し成長したという所でしょうか(笑)。

–––– 高円寺の阿波踊りの会場でプレイベントを開催するなど、他のフェスとは違う動きが感じられます。そのアイデアはどこから生まれてくるのでしょうか。

 秘境祭以外の時は毎週どこかしらでパーティーをやったり出演したり遊びにいったりしています。秘境祭のブッキングは現場でヤバいと思った方だけをブッキングしているので、その表現が生まれる現場に出来る限り身を置いておきたいってのはあります。また秘境祭のプロモーションはほとんどが現場での口コミやSNSぐらいですので、いろんな人が集まる場所で賑やかにやって、我々の雰囲気を直に感じてもらうのが一番だと思っています。DJやバンドだけでなく音以外のいろんなコンテンツも入れます。新しい表現はいろんなが交わる所で生まれると思っているので。もちろんただなんとかなく寄せ集めでやってるわけではなく、流れやストーリー性、全然違うジャンルだけど今後交わったら面白そうだなという関係性は物凄く意識してます。

 高円寺の阿波踊りはampcafeという普段はアートギャラリーでやらせて貰っていて、今年で3年目になりました。外でDJやノイズのライブがあって、いろんな人が踊りながらビール飲んでて、前の建物にレーザーを当てたりして、カオスが広がっていてました。普段、現場にいないような方々に向けてアプローチできて面白かったです。とにかくアィデアは現場で遊んでたらこういうの楽しくないかな?って所から来ているのかなぁ、と思います。

–––– 会場の玉川キャンプ場はどんなところ?

 東京都と山梨県の県境にある小菅村の山の中にあって秘境祭という割には意外にもアクセスがいいんです(笑)。車でも都内から2時間ですし、電車でも中央線に乗って奥多摩駅からバスで30〜40分ぐらいで行けちゃう。都内からも直通バスも出しますし、奥多摩行きの最終電車に乗ってもらえれば、会場まで行けちゃいます。終電は新宿発が22時半くらいです。綺麗な川もあるので、川遊びや釣りもできたり、今年の秘境祭では完売しましたがバンガローも多く、キャンプグッズがなくても過ごせます。トイレも綺麗でウォシュレット付きの所もあるほどです。10分ぐらいあれば全部回れるほどのコンパクトな会場です。風光明媚で至極快適なキャンプ場です。

–––– 秘境祭の今年の見どころ、遊びどころは?

 毎年デコレーションチームが今年のために制作している会場装飾は、出来上がりが本当に楽しみです。今年は透明なモノを見る感覚、略して「透覚」という造語がアートのテーマです。何やら昼と夜で浮かび上がってくるものがあるとのことで、是非注目して下さい!アーティストでは今年初出演のラビラビやニューアルバムを出したばかりのTempalay、新世代バンドと言えるDALLJUB STEP CLUB、各所で話題沸騰中のチャッカーズ、大トリにはアナログレコードを世界的に見ても最速ペースでリリースしている最高のスキンヘッドレゲエを鳴らす井の頭レンジャーズ、毎年出宴し本当に秘境祭を愛してくれているNETWORKSやドラびでおとテンテンコの合体LIVE、DJにはALTZややけのはら、名古屋のpigeon recordsのHATTORIなど全アーティスト現場で見てヤバいと思ったアーティストをお招きしているので、有名無名にかかわらずすべて見所ですね。今年も20時より天国酒場という居酒屋とラウンジが合体したムード溢れるステージでは、千葉白浜で毎年開催しているzipangという野外フェスのオーガナイズチームのメンバーがプロデュースしてくれていて、毎年かなり盛り上がる自由参加のカラオケ大会以外にも怪談など力いっぱいふざけてくれるようで、酒が劇的に進むと思われます。秘境祭のフライヤーデザインを担当してくれているHayato Holhy Horiがアートスペースをプロデュースしてくれて、様々なライブペイントやアートの仕掛け、限定オフィシャルグッズも楽しみです。

–––– 秘境祭でどんな時間を過ごしてもらいたいですか。

キャンプサイトでのんびりキャンプしながら仲間とBBQをするのでもいいし、川遊びするのもいい。ずっと踊り明かしてもいいし、露天風呂で長風呂してもいいと思います。全方面の遊び方を自由にやってもらえれば。今年は10周年でよりお祭りやお祝いムードが溢れまくってると思うので。早い時間から参加してもらって、たっぷり夏の終わりの空間を楽しんでいって欲しいです。

秘境祭2017

開催日:9月9日(土)〜10日(日)

会場:玉川キャンプ村(山梨県小菅村)

出演:RABIRABI、Senkawos、Tempalay、ドラびでお+テンテンコ、チャッカーズ、ALTZ 、他


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