TOSHI-LOW×茂木洋晃・対談「ほんとうはなんでもイチから考えられる」自らが考え形づくるフェスのカタチ。


いまや秋口もフェスが目白押しだ。9月に開催されるキャンプインフェスの代表格として人気のあるNew Acoustic Camp(以下、ニューアコ)。そして昨年からリスタートを切った山人音楽祭(以下、山人)は、ニューアコの翌週に開催予定。どちらも群馬県で開催される。昨今は開催されるイベント数も増え、形態も多彩になってきた。この両イベントはともにアーティストがオーガナイザーを務めている。
ニューアコのオーガナイザーTOSHI-LOWさん(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND/BRAHMAN)と山人オーガナイザーの茂木洋晃さん(G-FREAK FACTORY)。春から秋にかけては、出演者としても全国各地の野外イベントを巡っている。オーガナイザーとして、出演者として。いま感じていることなどを聞いてみた。

Text&Photo(portrait)=Naomi Sudo

–––– 両イベントとも開催が間近に迫りました。一昨年はニューアコにG-FREAK FACTORYが出演、そして今年は山人にいよいよBRAHMANが初出演ですね。ようやく!といった感じでしょうか。

茂木 やっとですよね。やっとTOSHI-LOWが出てくれる。嬉しくもあり、背筋が伸びるところでもある。よりよくするためにアドバイスもくれるだろうし。なによりもどんなライブになるのか、ちょっと想像ができない。今年はBRAHMANやTHE BLUE HERBとか物凄い人たちがいるので、真逆な人たちをブッキングでは考えたりしましたね。

–––– お二人はオーガナイザーでもあり出演者でもあります。気心知れた仲間が主催するイベントへの出演というのはどんな心境ですか?

TOSHI-LOW アーティスト主催だと、仲が良ければいいほど、泥は塗れない。もちろん変なライブできないし。だからイベンターがやっているものとは少し違った感じだね。俺は対バンに近いような、そういう意識がある。

茂木 俺もまったく同じだね。いろいろなフェスに出させてもらって、なかには貴族の遊びみたいなフェスもあったりして。群馬ロック(山人音楽祭の前身)を最初にやったときはバンドの主催ではなくやりたいと思っていた。それは、バンドが活動休止したりしたら、「できない」という状況が生まれてしまうから。でも、アーティストが表に立つと、向ける矛先がある意味分かりやすい。

–––– さまざまなフェスやイベントを経験されて、これはいいな真似しよう!これはやめよう!みたいなものはありますか?

TOSHI-LOW やらされているフェスは嫌だね。フェスという形でなにかやらなければいけないんだったら、フェスがベストだと思う。でも、なんかそれがいつのまにかフェスをやっていることがとても負担に見えてしまう人もいる。気は使って当然だと思うけれど、本当にやりたいのかなって、やれば楽しんだろうけど。なんて言えばいいんだろう、感じてしまうんだよね。

茂木 バンドよりもイベントが先にいってしまっている感じ?

TOSHI-LOW そうだよね。フェスをやっている人を演じなきゃいけないみたいな。裏方だったら裏方で楽しめばいいし。俺はどんなポジションでも楽しいと思うけれど、自らのバンドをよく見せるようなフェスって、大変なんだと思う。レコード屋さんでもさ、「最高傑作!」なんてPOP見かけるけど、作った自分じゃ書けないでしょ。自分で自分を褒めるって、ね。例えば、バンドのメンバーなんかもそうで、バンドの名前がなかったとしたら男4人とかの集まりでしょ。そうしたら、俺、俺、俺ってなる。そこにバンド名があるから、もし意見が割れてもバンドとしてどっちがいいのかって譲り合えると思う。だからフェスもフェスとして、みんなが楽しめることとして譲り合えると俺は思ってる。

茂木 俺らは完全に別のものというか、自分のバンドとその山人音楽祭っていうものをあまり一緒くたには考えてない。地元のヤツらと面白いことしたいっていう、本当にシンプルなことから始まっている。だからもちろんガマンしなきゃいけないこともあって、ガキじゃないからお金が動いている部分だって理解している。ただ、分かるんだけれどもそのなかで、ここは譲れてもここは譲れないっていう、戦いを毎年毎年やっているかな。バンドとはまったく関係なく、生まれた土地の誇れるものっていうか。誇りなんていったら大げさだけど、大切なものをね。ひとつでも増えたらいいなと。

TOSHI-LOW 他のイベントに出演したりすると、人の家とか行くのと同じでね、同じ商売だから見えちゃうのもあるんだよね。

茂木 ここにこんなに金かけてるんだぁ、とかもあるね。

–––– それはやはりオーガナイザー目線ですか?

TOSHI-LOW いや、飲食店目線(笑)。ラーメン屋みたいなとこ行ってもさ、行けばちょっと分かるというか。入った瞬間に店員の感じとか、トイレ入ったらひどいなぁ~とか。どうしても見ちゃうよね。そのときに改善できるものなのであれば、俺は言うからね。アーティストラウンジとかで「お酒なくなっちゃんたんです~」ってさ、杓子定規に対応されたこともあったけれど、場所が山奥だったら俺だって言わない。でも、目と鼻の先にスーパーがあるような状況だよ。例えば本当に金がなくって、「自分が持ってるこれならあります、これ飲みましょう!」って出してくれたら、それでもいいんだよね。

茂木 マインドなんだよね、物理的なことを言っているわけではなくってさ。自然のことだと思う。

TOSHI-LOW 「みんなできる範囲でやればいいんだよ」っていうのも気にくわない。ちょっと無理しろよって。せっかく客人が来ているのに、少しは無理しろよ!前のめりでって。やっぱりいいフェスとか面白いなっていうのは、いろいろなものを改善していこうという姿勢が見える。レイアウトも含めて。こうしてくるんだ~とかも思うし。

茂木 結果失敗だったとしてもね。山人も今年はフードコートの場所を変えようかってレイアウトを考えていて、ギリギリまで考えてやってみようって思ってる。結果戻すかもしれないけれどね。

TOSHI-LOW なんでもやろうとすると「それ無理っすね」ってなる。制作現場ではよくあることじゃない? 「こうしてみたい」とかあると制作チームはOKだけど、設営チームからはNG出たり。イベントを作っていくなかでは、とにかくいろんな目線があるからね。でもやっぱり失敗したとしても、考えてみたりやってみるっていうのは価値があると思う。

–––– イベントとしてよりよくしていく。つねに試行錯誤を繰り返していく、と。

TOSHI-LOW それがゆえに終わってしまうなら、それでもいいと思ってる。必要とされなければそれはそれで役割が終わったと思うし、堂々と胸張って終わりといえる。イベントを一生続けていきたいとかじゃないからね。続けばもちろんいいけれど、ね。40代になって経験もある程度してきて、知識も得て、それなりに修羅場もくぐってきた。そのうえで、俺たちができるのは場をちゃんと作ること。自分たちでそういうことがきちんとできないと、そのまま50代とかまで生きてしまったら、ただの偏屈になっちゃうからね。だから若いバンドがイベンターに乗っかって、いわゆるフォーマットの中で「自分たちフェス」みたいなやっているのを見てると、もったいないと思う。そのときはそれでいいけど、集客もあるだろうし。でも、本当は全部を作ることができる。なんでステージがそう並んでいるのか、とか。自分たちの意思で変えられるのに。大人たちは面倒くさいことをしたくないから「こういうものなんです」ってだいたい言うよね。突き詰めていくと、本当に要るものや本当は要らないものとかも分かってきたりする。俺は意地悪だから問い詰めるけどね。なんで?なんで?なんでー?って、何回も聞く(笑)。フェスの現場だったら、その道のプロフェッショナルとも話ができるしね。

–––– 来場される方々にメッセージをお願いします。

TOSHI-LOW 俺たちは自由を求めてやってるので、それを自分で気づいてやって欲しいなぁと思う。

茂木 来場者が出演アーティストを見ているのと同じように、俺たち側も来場者を見ているんだよね。お前が俺を見ているくらい、俺もお前を見ているよっていう。そのなかでね、モラルというかおのおのが持っているマナーでもって、信じていたいね。

TOSHI-LOW 最低限の楽しめる環境っていうのは、俺たちが頑張って作る。それが楽しかったら、それはあなたたちが自分たちで楽しんだんだよって。もし楽しくなかったとしても、それも自分たちで選んだ結果。それ以外になにか文句があったら、直接言いに来て欲しいね。いつでも聞くよ。会場でウロウロしてるから。ちょっとコレないんじゃん?とかね。

茂木 そうだね、もっともな話だったら「ごめんな~」って謝れるし。来年反映できるように頑張るわ!って。見えているけれど見えていない部分もいっぱいあるから。分からない部分もあるからね。

–––– お二人ともありがとうございました!


EVENT INFORMATION

New Acoustic Camp (ニューアコースティックキャンプ)

2010年にスタートしたキャンプをメインとした音楽イベント。2012年から開催場所を山梨県から群馬県みなかみ町に変更し現在にいたる。全出演者ともアコースティックでの演奏となり、通常とはひと味違ったステージが魅力だ。

開催日:2017年9月16、17日

場所:群馬県みなかみ町 水上高原リゾート200 ゴルフコース・スカイコース

出演予定:チャラン・ポ・ランタン、EGO-WRAPPIN’、Gotch、ハナレグミ、HAWAIIAN6、木村カエラ、NakamuraEmi、Salyu、ACIDMAN、LOVE PSYCHEDELICO、片平里菜、LOW IQ 01、MONOEYES、大橋トリオ、ストレイテナー、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND、ほか


山人音楽祭(やまびとおんがくさい) 

2012年、2013年、2014年は群馬ロックフェスティバルとして開催。2015年諸事情により開催を見送ったが、2016年に山人音楽祭として復活した。今年2回目を迎え、昨年に引き続きチケットはすでにSOLD-OUTとなっている。

開催日:2017年9月23日

場所:ヤマダグリーンドーム前橋

出演予定:アルカラ、打首獄門同好会、G-FREAK FACTORY、 天才バンド、10-FEET、HAWAIIAN6、04 Limited Sazabys、BRAHMAN、マキシマム ザ ホルモン、ヤバイTシャツ屋さん、夜の本気ダンス、ほか


0コメント

  • 1000 / 1000