三条楽音祭インタビュー 行政と市民による手作り感あふれるフェス

新潟県三条市。行政と市民が作り上げる入場無料のフェスがある。今年で9回目の開催となる三条楽音祭だ。全国各地で多くの祭が古くから開催されてきた。フェスもそんな祭のひとつになれるのかもしれない。そんなメッセージが、三条楽音祭から発信されているのかもしれない。続けていくことで、その地域にどんな未来が築けるのか。三条楽音祭実行委員長の大橋賢太さんにインタビュー。


写真=アリモトシンヤ


–––– 三条楽音祭は今年で9回目の開催となります。

 昨年は多くのお客さんに足を運んでいただき、晴天にも恵まれ、歴代で一、二を争う観客動員数3,300人を達成し、終わることができました。アンケートを取ったんですが、うれしいことにポジティブなメッセージばかり寄せられて、本当にみんなに楽しんでもらえたんだな、と終わってから感じました。

 年々、楽しみにしてくれるお客さんが増えていることを実感すると共に、運営側としても来てくれたお客さんにもっと三条の文化を知ってほしいという気持ちが膨らみ続けています。

 開催地三条市の重点施策「下田地域の活性化」の一環として三条楽音祭は開催され続けていますし、当然、三条市のGOサインが無ければ実行委員会も動けないわけですが、これまで続けさせてもらっている下田地域に、恩返しするためにも、市のGOサインの前から実行委員会は今年も開催する前提で動き出し、今年はどんな工夫を凝らそうか、早々から会議を重ねてきました。

–––– どんな特徴を持ったフェスですか。

 行政と市民が作る、手作り感溢れるミニマムなフェスです。利益目的ではなく、地域貢献を目的としていること、そして、スタッフや地元のみんなが知恵や技術を持ち寄って作るからこそ出せる、ピースフルな空間こそ三条楽音祭の魅力だと思います。また、隣の燕市と併せ、三条市〜燕市は金属加工業で世界シェアを誇る職人の街です。今後、少しずつ「職人技」をフェスで体験できるような、地域独特の個性も出していけたらな、と考えています。

–––– 無料のフリーフェスにこだわり続ける理由は?

 三条市と一緒に行うイベントなのですから、半分は公共のサービスのような位置づけになると思っています。老若男女、子どもが小さくてなかなかイベントに行けない人から四六時中フェス三昧の人。その人の置かれた状況に関わらず、一日限りのお祭りを楽しんでほしい、という気持ちから、無料フェスとして開催し続けています。

–––– 会場の中浦ひめさゆり森林公園とは、どんな公園ですか。

 会場へは臨時の無料シャトルバスでの移動でしか迎えないのですが、道中、田園風景を楽しんでください。徐々に田んぼから山の風景に変わり、細い道を抜けると…そこが会場の中浦ひめさゆり森林公園です。山の中にポツンと存在する森林公園は、決して大きくないのですが、ロケーションは最高です。木々に囲まれ、小川が流れる会場はいるだけで森林浴気分になれます。駐車場近くには棚田が広がっています。開催時期は稲刈りの時期になるので、きっと、新潟らしい風景を目にすることができると思います。

–––– 今年も一日だけの開催ですが、キャンプインにするなど、2日間にする予定はないのですか。

 今のところは考えていません。会場が小さいこともあり、キャンプインしてしまうと、イベント運営に支障が出てしまうんです。もちろん、他のキャンプ場やお店と提携して前日イベントなど開催できれば面白いですが…そうすると完全にスタッフ不足ですね(苦笑)。それよりも、前日にスノーピークや八木鼻キャンプ場、嵐渓荘や古民家宿泊施設などに泊まってもらって、ラフティングやハイキングを楽しんだり、金属加工工場の体験ワークショップに参加してみたり、と三条楽音祭以外で三条市〜下田地域を楽しんでもらえたほうがうれしいですね。そして、もし三条市を楽しんで移住でもしてくれようものなら、ぜひ三条楽音祭のスタッフに応募してほしいです!(笑)。

–––– 出店やワークショップも、フェスを彩るコンテンツです。どんな出店やワークショップがありますか。

 今年も地元のイタリア料理屋さんやジャマイカ料理屋さん等の多国籍料理から、ラーメン屋さんや唐揚げなどの大衆料理屋さんまで多くの飲食店さんが集まってくれました。物販では個人のフリーマーケットから麻染の洋服屋さん、木工を使ったアクセサリーや麻紐やハギレを使った雑貨等、プロアマ問わず、多くの店舗が出店してくれます。マッサージ店も2店舗出店します。 ワークショップでは例年大好評のボクシングワークショップやジャンベ教室も開催されます。今年は過去最大の出店数なので、ぜひ、色んなお店を見て回ってほしいです。

 それと、昨年から始まったスケボーエリアは今年も健在です。スケボー好きなお客さんはぜひ、スケボー持参で来てください! また、今年一番見て体験してほしいところなんですが、ワークショップでは県央地域の伝統工芸や産業とのコラボワークショップを開催します。ひとつは鎚起銅器職人の大橋保隆さんが行う、鎚起銅器制作体験ワークショップ。「鎚起」とは鎚(つち)で打ち起こすという意味です。鎚起銅器は一枚の平らな銅板を鎚で打つことを繰り返し、立体的な形の器を作り上げる県央地域の伝統工芸です。もうひとつは三条の(有)永塚製作所さんが開催してくれる、金物産業の端材を使ったミラーボールづくりです。この土地の産業と触れ合うことで、県外や市外から来てくれたお客さんが新潟県の県央地域は面白い場所だな、と感じてもらえれば本望です。

–––– 三条楽音祭で、どんな時間を過ごしてもらいたいですか。

 音を楽しみ、自然に感謝。祭りを通して街を知る。僕の中では三条楽音祭は「山の中に現れた一日限りの街」というイメージなので、お客さんにはそこにある文化や自然を思いっきり楽しんでほしいです。そして、開催地について、何か新しい発見や気付きを持ち帰っていただければ最高ですね!

 一日限りのお祭りです。みんなで一緒に楽しみましょう!

三条楽音祭

開催日:9月3日(日)

会場:中浦ひめさゆり森林公園

入場料:無料

出演:Polaris、KODAMA AND THE DUB STATION BAND、SAKI & the factor、SAIRU、GOOFY KINGLETS(新潟)、久保田リョウヘイ 、他


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