【佐藤タイジ/インタビュー】ジャンルも世代も越える場としてのソラリズム。使われていない野外ステージの活用法。

全国のいたるところに使われていない野外ステージがある。そこを会場としてライブやイベントなどを企画し開催していく。それがシアターブルックの佐藤タイジが考えた「ソラリズム」だ。野外フェスとも違う、これからのライブのあり方。4月に東京・あきる野市のキャンプ場の野外ステージを使って初開催された「ソラリズム」後に、「ソラリズム」の目指すべき道を聞いた。

–– 4月に「ソラリズム」を開催してみて、どんな思いが浮かび上がってきましたか?

 すげえ楽しかった。なぎら健壱さん、金子マリさん、清春くん、そしてMOMIJIちゃんに、民謡クルセイダーズのメンバー。ものすごい多様性があって、日本の音楽の伸び代がここにあるのかなって。


–– 「ソラリズム」の構想は、いつころに芽生えはじめたのですか。

 去年9月の「THE SOLAR BUDOKAN」の前あたりから。「THE SOLAR BUDOKAN」からスピンアウトしたようなイベントをやりたいなってずっと思っていたんですよ。コロナ禍になり、安全な環境でライブをするためにはどうすればいいか。ライブハウスを野外に移すっていう考え方に至ったんですよ。去年は「THE SOLAR BUDOKAN」を配信でやって、外であればライブをやれるっていうことが実感できた。ライブハウスは苦境に立たされている。ライブに関わってきたスタッフも仕事がなくなっている。ライブ業界は前年比で8割も落ち込んでいるんです。2割減の8割ではなく8割減。そんな苦しい業界は他にはないですから。ライブがやれるようになったとしても、しばらくは元には戻らない。だったら野外に活路を見出すべきじゃないかって。


–– それで日本のいたるところにある野外ステージの活用を思いついた?

 使われていない野外ステージって日本各地に数多くあって。野外ステージがある町の公園も少なくない。そこを行政がコントロールしていて、使用するハードルを妙に高くしている。今は緊急事態宣言やないですか。音楽業界の緊急事態宣言はしばらく続くんです。そのことを野外ステージの近隣に住んでいらっしゃるみなさんにも理解していただく。みんなが納得できるやり方っていうものを、みんなが探している。公園の野外ステージでライブをやるのだから、通りがかりのおっちゃんやおばちゃんも、小さな子どもも、みんなが楽しめる場として作り上げていく。


–– それが「ソラリズム」であり、お祭りに近いものだと

 地下などにあるライブハウスって、ジャンルを限定して、世代も限定して、眼底されたなかでみんなでギューっとなるのことが楽しいわけやないですか。それをやるのはしばらく無理だと思う。音楽好きにとっても、楽しみ方を変えていかないとダメな時代なわけやないですか。従来とは違う楽しみ方。今まではライブハウスに行かへんかったおっちゃんやおばちゃんたちにも、当たり前に参加できるような場所にしていきたいんですね。音楽のジャンルは、ものすごく細かく分類されてきた。それって誰が決めた垣根なんやって思う。年齢もジャンルも垣根のない楽しみ方ができる場が「ソラリズム」なんやと。


–– フェスに近いんだけど、フェスとは違う空気感が「ソラリズム」にいて感じることができました。

 もっとも現代的なやり方を提示できやんちゃうかなって思っていて。だから終わった後は楽しかったし、気分が良かったし、やった満足感がありましたね。


–– 今年の「THE SOLAR BUDOKAN」は?

 やろうとしております。今の状況のなかで、どんだけおもろいことができるか。おもろいことをやっていきたいんですね。


–– 「ソラリズム」も「THE SOLAR BUDOKAN」も、みんなが前向きになれる場になれると思います。ミュージシャンもスタッフも、お客さんも、地域の人も。

 そうなってほしいんですね。最近気に入っている言葉が「進歩」。進化でではなくてね。たまたま知り合った霊長類の研究者がボノボの進歩について教えてくれたんです。ボノボとチンパンジーは、遺伝子的には同じ生き物なんです。リーダーはボノボがメスがチンパンジーがオス。ふたつの集団が新しい餌場を見つけたとしたら、チンパンジーは殺しあって独占しようとするのに対して、ボノボは餌を分けあうんだって。まったく同じ遺伝子を持った動物でも、次のステージに行けるものと行けないものがいる。人間だって次のステージに行けるはず。別に進化する必要はないんです。テクノロジーの進化とか言っているけど、そんなのは進化でもなんでもなくてね。大切なのは、人間がどれだけ進歩できるかっていうこと。


–– 進歩するためには、みんなが考え、行動していくことが必要なんだと。

 こっちにいきたいって思わないとそこにはたどり着けないんですよね。争いたくないし、分断してほしくない。なるべく全体でシェアできる場や環境を作っていきたいんですね。


–– その意味でも、全体でシェアする場としてのソラリズムの方向性は未来的だと思う。

 野外ステージでのライブは続けられる。「ソラリズム」には確かな意義があるようにやってみて感じています。続けていって、それを実証していきたいですね。

写真 = 高橋良平

ソラリズム夏2021

開催日:7月18日(日)

会場:多摩あきがわ ライブフォレスト自然人村

出演:シアターブルック、Char、清春、Afro Begue、ほか

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