【Caravan】自分の街に向けられた視線。

旅のなかで何かを感じ、何かを受け取り、歌をつむいできた。コロナによって旅に出られないという、今までにはなかった日々。移動から定点観測へ。何気ない日常から見えてきたものから浮かび上がってきた音楽。

文 = 宙野さかな text = Sakana Sorano
写真 = SUSIE photo = SUSIE


―振り返ってみて、2020年はどんな一年でした?

 移動して、いろんな街に行ってライブをするっていうことがメインだったので、そこがなくなったことで常識が一回壊れたっていうか。ライブができない、旅ができない。こんな状況は生まれてはじめてと言っていい1年でした。


―落ちたり上がったりという精神的なバランスはどうでした?

 よくわからないけど、正直、波はありました。みんなが落ちているときは、俺は関係ない、俺は俺みたいにいられたけど、割とみんなが調子が良くなっていくと、俺はこのままでいいのかって不安になったりとかさ。フラットでいるのが難しい、センターでいるのが難しい1年ではありましたね。それも含め、変な言い方かもしれないけど生きている実感はあったかな。できることをやろうって前向きになって配信ライブをしたり、PVを自分で編集してみたり。いろんなことにチャレンジした時間でもありましたね。


―ライブができないことを、逆に違うことでポジティブに転化させていたのかもしれないですね。

 昨年秋から少しずつライブははじめているんだけど、1本1本の重みは前よりも増していると思います。それはステージに立つ俺らだけじゃなくて、お客さんもある種の覚悟と決意を持ってくるわけじゃないですか。ライブで楽しい時間を共有するっていうことは、本当に幸せなことで、なんてありがたいことをやれてたんだろうって思いましたよ。人に会うことですごく元気になったり活性化される部分もあるじゃないですか。


―音楽の制作にはすぐ向かえたんですか。

 コロナに関係なく、2020年の頭から新しい作品の制作に入ってはいたんです。春先にミニアルバムを出して、それを持ってツアーへなんて思っていたんですけどね。コロナ禍で感じたことを日記みたいにまとめて、それをアルバムにしようと気持ちを切り替えたんです。


―つくる歌自体に変化はあったのですか。

 自分では変わってる気はないんだけど、今まではどこか遠くだったり、まだ知らない何かに触れに行こうだったり、移動してどこかに向かおうよっていう歌が多かった気がする。Caravanっていう名前だし(笑)。例えば「Hometown」では自分の街を歌ったんだけど、そんなことは今まではできなかった。自分にとってはいいことだと思うんだけど、自分の足元を見つめ直すというか、ホームグラウンドを味わい直すというかさ、そんな感覚がすごくあって。定点観測で自分の街を毎日見ていると、ユニークさだったり個性みたいなものが浮かび上がってきて。


―そう思えるようになったのは実体験もあってのことだったのですか。

 田んぼをやったんです。田んぼに素足で入って、田植えをして、稲刈りもする。コロナのニュースがテレビでは毎日流されているんだけど、田んぼに行くとそこにはまったく別の世界があってさ。行くたびに稲は育っているし、微生物も虫も鳥もその無農薬の田んぼでは健やかだし。結局は人間だけがバタバタしているんだなって思えて。自然に触れて、主食を自分たちで育てて、ちょっと視点を変えるだけで客観的な見方ができたんですよね。もうちょっと遠くを見ようよっていう感じにはなれましたね。


誰もがかつてとは違う時間が存在していたのは確かで。

 人と人の距離は離れているんだけど、心のなかで近くに感じる人が増えているように思います。聞いてほしい人たちが明確になるというか。あの人に聞かせたい、あの人たちに贈りたい。そういう伝えたい熱量が増えたように思います。物理的に離れたんだけど、精神的には近くなっている。


―その思いを、次はライブでもつなげられるといいですよね。

 不特定多数の人がそれぞれ感じたことを持ってきて一ヶ所に集まって、笑顔に包まれて、音楽をシェアする。そこはすごくエネルギーが満たされるっていうことを、あらためて感じました。ライブっていうものからみんな距離を置いちゃったから、ライブは素晴らしいもので楽しいんだよっていうことを1からつくっていかなきゃいけないっていう感じもしていて。


―思い描いているそのライブの姿っていうのはどういうものなのですか。

 できるかどうかわからないけど、イメージとしては気持ちのいい野外で自分たちのイベントはやりたいと思っていて。みんなが安心できる場所で、音楽もあって、美味しいものもあって。そういう1日をつくれたらなって思います。今年か来年かわからないけど。


―新しいライブの場所、音楽の場所ですね。そこには音楽と笑顔が溢れているように思います。

 それはみんなのためっていうよりも自分のためなんですよね。自分がそういう世界であってほしいっていう理想があるからさ。自分のため、そして家族も含めた近くにいる人のため。自分のためだったら大変なことでも頑張れるし、大変だとさえ思わなくなるわけだし。誰のせいにするわけじゃなく、自分たちの楽園は自分たちでつくりたいって思っています。


高校時代にバンドを結成し、ギタリストとして活動。2001年よりシンガー・ソングライターとしてソロ活動をスタートさせた。全国を旅しながらライブを重ね、活動の幅を広げてゆく。04年4月にインディーズデビュー。翌年にメジャーに移籍。11年にメジャーを離れ、翌12年に プライベートレーベル Slow Flow Musicを立ち上げた。大手流通を通さずに、ホームページとライブ会場を中心に作品を発売。最新CD作品は20年11月に発売された『Bittersweet Days』。ダウンロード&ストリーミングで「光について featuring 山崎円城」が5月5日にリリースされた。7月4日にLIVE EXTRA 2021"Radio the Caravan" ~ All Request Day ~が東京・草月ホールで行われる。https://www.caravan-music.com/


LIVE INFORMATION

Caravan LIVE EXTRA 2021 " Radio the Caravan " ~All Request Day~

7月4日(日)草月ホール(東京・青山)

open 16:15/ start 17:00 ※19:30終演予定

ticket 全席指定 ¥5,500 Radio the Caravanステッカー付 ※ローチケ電子チケットのみ


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