サーフ&ファームという自然を楽しむコミュニティの構築。【高橋直也(いのちの郷) VS 成瀬大輔 (フタバフルーツ)】

サーフィンと農。一見、畑違いにも感じられるけれど、そこには「自然と向き合う」という共通項がある。サーフ&ファームというつながりから見えてくる楽しみながら地球と共存するコミュニティ。

文・写真 = 宙野さかな text・photo = Sakana Sorano

ー 高橋さんが農業に入っていったきっかけを教えてください。

高橋 しばらくアメリカに行っていて、帰国してお金がまったくなかったので、日払いで稼げることってパッと思いついたのが農業だったんですね。長野県川上村の農業法人で、日払いで稼げるということを知って。片道切符だけで行ったんです。そしてそこで働かせてもらうことになりました。


ー 果物屋であるフタバフルーツの成瀬さんと高橋さんは、どういう経緯で知り合ったのですか。

高橋 長野の後、茨城に素晴らしい土つくりをしている農家さんと方と知り合って、勉強をする気持ちで茨城に来たんです。働きながら、いろんな農法を学びたくて、月に1回のペースで全国の農家さんに会いに行ってたんです。たまたま高知の生姜農家さんのところに行ったときに、夜に一緒に飲もうよって誘っていただいて、その飲み会の席に(成瀬)大輔さんもいらして。

成瀬 高知のいの町に日本一の生姜をつくる男がいるんです。その男がサーファーであり、ビニールハウスのなかにランページをつくるようなぶっ飛んだファーマーなんですね。彼との真ん中に友人がいて、紹介してもらって、ちょうどその日に会いに行っていたんですよ。


ー ふたりが会ったのは偶然だったのですね。成瀬さんは、なぜ農家に会いに行っていたのですか。

成瀬 果物屋として、商品としてできあがったものしか売っていなかったので、つくり手の気持ちを知るというか、つくり手と一緒に遊ぶことによって、お客さんへの伝え方が変わるんじゃないかって思ったんですね。農業からインスピレーションをもらう。やっぱり大好きな仲間たちがつくったものをセレクトしたいじゃないですか。フタバフルーツの進化型はフタバフードじゃないかって思っていて。

高橋 大輔さんは、ニンニクひとつでも果物ひとつでも、いろんな角度からスポットライトを浴びさせてくれる人なんですよね。見せ方の違いで、野菜にとってもすごくハッピーなことをしてくれているんです。

成瀬 自分はファーマーでもないのに、サーフ&ファームっていうことが浮かんだんですよ。サーフは僕にとってはアンテナを立てて行動するっていうこと。そしてファームが土を守るコミュニティ。その意味で(高橋)直也もサーフ&ファームの大切な仲間なんです。


ー ファーマーはサーファーが多い?

成瀬 いっぱいいますよ。スノーボードも多いですし。

高橋 僕は下手ながら、ちょこちょこやっていたんですよ。茨城に来て、サーフィンをやっている農家の方がいたから、休みの日には連れていってもらって。

成瀬 サーフィンもスノーボードも、自然を相手にするスポーツじゃないですか。しかもひとりで自分のペースでできる。自分の楽しみと仕事が、自然という部分で一致している。

ー 今年も梅雨時期に全国で豪雨が降ったり曇りが続いたり。天候の変化はどう感じていますか。

高橋 農業に入ってまだ7年で長くはないのですけど、そんな自分でも変化をすごく感じますね。雲の流れなどを見ていると、あと何時間後に雨が降るとか、農家さんは感覚でわかっていたんだけど、それが当たらなくなってきていますね。野菜に関しては、暖かいことによって、育とうとグングン伸びるんですけど、味が伴っていない。本来持っているはずの最大限のパフォーマンスが発揮できていないんです。野菜たちは、いち早く気候の変化を受け入れているんですね。気候が変わっても、それを受け入れて育とうとする。次は人間である我々が、野菜たちのその声を聞いてあげないと。

成瀬 食べるっていうことに、多くの人の意識が向くようになってきていると思うんです。いっぽうでコロナによって都市では自由が狭められてしまった。あらためて自由の大切さを考えますよね。コロナ禍で外出自粛になったとしても、畑では自分の好きなものを育てられる。その野菜で自分の好きな料理で、おいしく食べることができる。そのことによって身体も喜ぶんですね。畑では自由でいられる。

高橋 農家にとってはステイホームではなくステイファームですから。

成瀬 今はシフトする世の中じゃないですか。果物を通して出会った人たちと新たな道をつくっていきたいんですね。その道が文化をつくっていくことになる。だから自分は果道家でありたいなって思っているんです。

高橋 同世代の若いファーマーも全国で増えています。みんなが地球のこと、未来のことを考えていますよ。

成瀬 茨城に直也がいるように、その土地その土地に、おもしろいファーマーっていっぱいるんです。人が人を呼んで、そこで何かが生まれている。

高橋 自分が暮らしている地域を盛り上げたいっていう気持ちも大きくなりましたね。この地域で、自分は何ができるのなっていうことをよく考えています。成瀬 全国の仲間が集うサーフ&ファーム・フェスをいつかやりたいんですよね。農を通して人と人がつながり、地域と地域、地域と東京につながりが生まれる場になると思うんです。

成瀬大輔 フタバフルーツ
東京都中野区で80年近く続くフルーツショップの3代目。サーフィンやスノーボードをライフワークに、自然を愛し、人とのつながりを大切にしている。農と暮らしを結ぶ様々なアクションを展開中。http://futaba-fruits.jp/


フタバ presents 秋の収穫祭

日時:10月17日(土)18日

会場:表参道COMMUNE

LIVE:東田トモヒロ

高橋直也 いのちの郷
放送作家になることを目指して青森から上京。およそ2年にわたり、志村けんさんの付き人も務めた。日払いの仕事を求め農業の道へ。茨城で農業法人・いのちの郷を立ち上げ、サツマイモ、ニンニク、ケールなどを有機で育てている。https://www.facebook.com/inochinosato/

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