ライブができなくなってしまった日々のなか、ギターを手にしたことで浮かび上がってきたのが自分の音と向き合うことだった。ボーカリストなどのゲストミュージシャンに依頼するのではなく、すべて自分で完結することを前提にアルバムは制作された。
文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 北村勇祐 photo = Yusuke Kitamura
— 竹内さんは、様々なプロジェクトを進行させている。ソロ名義のアルバムとしては久しぶりのリリースになります。
origami PRODUCTIONSから竹内朋康ソロ名義で出したのが6年前。そのときも打ち込みからトラックメイクまでひとりでやっているんですけど、ラッパーとかシンガーとかゲストに入ってもらっていましたね。
— 今回はインストアルバムだし、すべてひとり?
人と会ってレコーディングできないという状況だし、全部ひとりでやり切っちゃおうかなと。マスタリングも、誰かに頼むわけでもなく自分で。
— いつアルバムを作ろうと思ったのですか。
ここ数年、年間に200本くらいライブをやって、作品を作る気持ちが全然湧いてこなくて。ライブこそ最高の芸術だと思っていたんです。まさかライブができなくなるっていう状況になるとはみんなが思っていなかったんですから。
— 人に会ってはいけないということが、今までの生活シーンになかったわけですから。
アメリカやヨーロッパからロックダウンがはじまったじゃないですか。ニューオーリンズ在住のギタリストの山岸(潤史)さんから3月中旬に電話をもらって、「ライブができるうちに存分に楽しんでいたほうがいいよ」と。日本でライブができなくなるなんて、半信半疑でしたけど。
— ソロアルバムを制作することに、気持ちをすぐに切り替えられたのですか。
最初は様子見ですよ。自粛はすぐ終わるんじゃないかっていう気持ちもあって。でも時間が過ぎていくうちに、どうもしばらくは終わらないようだ。俺はひとりでも作品を作られるわけだから、音に向き合おう。レーベルも自分では持っていなかったので、リリースと合わせて立ち上げよう。曲も1から作りはじめて、結局2週間くらいでやっちゃったんです。今から振り返ると、なんであんなにできたんだろうって思いますけどね(笑)。
— 創作への意欲、音楽へのモチベーションがそれだけ高かったということ。
あれだけ毎日ライブをやっていたのだから、毎日曲を作るのもそれほど変わらないっていうか。音楽に向かうという自分の流れを止めるのが嫌だったんですね。動いている自分を止めちゃったら終わりだなって思って、動け動けって自分に言い聞かせていたのかもしれないですね。
— どうやってひとりでつくっていったのですか。
ビートさえ決まれば、そこから自由に曲を広げられる。まずビートを作って、次にギターのリフでもベースのラインでも、何かひとつが乗せられれば、そこから膨らんでいく。エネルギーがパッと生まれるというか。自然と生まれてくるエネルギーを掴むっていう感じですね。すごくシンプルに考えて制作していたと思います。この1曲で世界を変えてやろうとかではなく、シンプルに気持ちいいところを捉えていく。ライブでもセッションではそのときのグルーブをみんなで掴むじゃないですか。その感覚に近い作業。
— 自分の音楽に向き合えたということでは、いい時間ではあったと。
そう思うし、その時間をうまく使えたなって思います。今の自分を表現できているっていう意味では大きかったし、自分を動かしているといいことが起こるっていうことを改めて知りましたね。
— インストにもこだわりがあった?
今回はスピード感も欲しかったんです。俺にとってはギターが表現の武器になる。ボーカルを入れるよりも、まずは今の自分を表現したかった。ボーカルが入ったナンバーも好きで仲間もいっぱいいるけれど、それは今の状態でなくなったときにやればいいことだって思って。
— 今、ライブへの欲求はありますか。
もちろんありますよ。だけど誰も不快な思いをしてもらいたくない。ちょっとしたわだかまりが心の中で芽生えてしまう。それが払拭できたら、ライブという場で今回のアルバムを表現したいですよ。ライブって、ライブに行っている、そこにみんなが集まっているということが楽しいんですね。そこで友達が増えたりだとか。そこから生まれるカルチャーが、今の自分をつくっている。
— 前に戻るんじゃなくて、ライブの新しい方向性を探っていく。
そう。それがどういう道なのか、まだ誰もわからないですけど。
— ソロアルバムを自分で手にした今の感覚は?
コロナ禍でこれだけ時間があって、集中して今の自分の音を作った。この1枚で近況報告にもなるし情報交換もできるわけじゃないですか。気負っていない今の自分が残せていると思います。達成感もすごくあります。自分のレーベルも立ち上げて、自分の場も持つことができた。ここから楽しみがまたひとつ増えたっていう感覚です。
取材協力 = POWERS2(元住吉)
1994年に永積タカシ(ハナレグミ)と竹内が中心になってSUPER BUTTER DOGを結成。97年にメジャーデビューを果たした。08年に解散した後、マボロシ、Dezille Brothers、シイタケ、Magic Numberなど、様々なユニットやバンドを並行させて活動。2014年、ギターのみならずすべての楽器を自ら演奏した初ソロアルバム『COSMOS』をリリース。ここ数年は年間200本近くのライブで全国を巡っていた。今年6月、6年ぶりとなるソロアルバム『BREAKS & TORUS』をTomoyasstone名義で発表。リリースに合わせて、自主レーベルMIDORIYA Recordingsを立ち上げた。
LIVE INFORMATION
10/15 IWAZARU @元住吉 POWERS2
10/16 Tomo Tomo Club @元住吉 POWERS2
10/24 Hanah Spring Shunské G & the Peas (ゲスト参加)@元住吉 POWERS2
10/27 The Яeverse @元住吉 POWERS2
11/02 IWAZARU @渋谷 The Room
11/03 Tomo Tomo Club @横浜高田 和田食堂
11/16 Tomo Tomo Club @大和 あかりや
11/24 Planet Green @渋谷 The Room
11/26 男だらけ @元住吉 POWERS2
11/27 前田サラBAND @元住吉 POWERS2
12/02 Planet Green @元住吉 POWERS2
12/10 IWAZARU @元住吉 POWERS2
12/13 Momiji & Bluestones @元住吉 POWERS2
12/25 Tomo Tomo Club と愉快な仲間たち @元住吉 POWERS2
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