【森波インタビュー】できる限りの形を、今に刻むための音楽の場。

春以降、ほぼすべてのフェスが中止、もしくは延期の決定が出されるなか、宮城県登米市で行われている森波が、当初から予定されていた日付を変えずに開催することが発表された。多くのフェスファンが、コロナ禍で開催が難しいという状況を認識しつつも、どこかでやってほしいと願っていたはずだ。オーガナイザーの柴田道文さんにインタビュー。

–––– 開催を決めた、もっとも大きな理由を教えてください。

 中止は絶対にありえない。かといって延期も根拠を示せない。ではどんな形で今年、森波の痕跡を残せるか…?そんなことを実行委員で何度も話し合いました。

 実際はGWあたりまでは決まっていたブッキングを全てキャンセルし、別の形で会場変えずに無観客での配信の検討もしました。私たちにとって年一回、あの場所で音楽を鳴らすことは、大げさではなく宗教儀式のようなものです。あの場所と音楽が並立してないと、私たちの精神の置きどころが危うくなる。そしてなにより、様々なリスクはゼロにならないけれど、今年、空白を作ると来年以降、絶対に後悔すると思いました。

 このような状況下で実行委員が思ってること、感じてることをギリギリのラインで何らかの形で残さないと、悪い意味で未来が大きく変わるような気持ちになりました。ですので、あの場所で今年できる限りの形を残したかったのです。何度も原点に立ち返り、深く議論を重ね、出演を予定してた演者のみなさんにお話を聞いたり、会場側とも再三協議をしたり、その中で、シンプルに今年やれるだけのことをやって、来年以降につなげていこう、ということで開催を決意しました。

–––– 県をまたいでの移動が許された今、登米に暮らしている方々は、遠方からの来客に対してどう思っている印象を持っていますか。

 こればかりはなんとも言えないと思います。すでにこんな田舎ですが、他県ナンバーは日常的に見るようになってますし、そもそもナンバープレートがなにを意味してるのか、個人的にはいまだ困惑していますが、近隣の方々がどのように感じるかは、正直わかりません。

–––– フェスには飲食の出店も欠かせません。どんな対応を考えていますか。

 毎年、東北各地の音楽で繋がっている方々に出店していただいて、このパーティーを大いに盛り上げてもらってきました。心苦しいのですが、今回は一切の出店は無くし、ドリンクとフードは主催側とCAFE GATIで最小規模での供給となります。

–––– 音楽やアートが、人々に与えてくれるものとは?

 何時間あっても話し足りない壮大な問いですね(笑)。音楽、アートに限らず文化全般といっていいと思うんですけど、このご時世、状況下で改めて感じたのは、権力vs反権力、保守vsリベラル、いのちvs経済…といった非常に単純化した二項対立を乗り越えるためにあるのかなと。「ためにある」というよりはそういう可能性を持っている、と言った方が正確かもしれません。それは森波を続けてきたことの大きな原動力ですし、これまでも、これからもそういうことを信じてやっていきたいです。

–––– 2020年の森波が、どんな時間になることを願っていますか。

 今回、みなさん言葉にならない感情を抱きながらご来場、あるいは生配信を閲覧なさると思います。それはお客さんだけでなく、実行委員も関係者も演者さんも同様だと思います。いろんな意味で、生涯忘れがたい時間と体験になればと思っています。


森波

開催日:7月23日(木・海の日)開演11:00 /終演17:55予定

会場:伝統芸能伝承館 森舞台(宮城県登米市)

出演:cro-magnon、CHAN-MIKA acoustic set、Coastlines、Hanah Spring with 小林洋太 小林眞樹 森俊之 沼澤尚、Toshizo and Happy Cats、Keyco with Sympa SP Band、TOKIO AOYAMA


0コメント

  • 1000 / 1000