【光風 INTERVIEW】歌に託された日本語のメッセージ。

GREEN MASSIVEでオリジナルとしては5年ぶりとなるアルバムがリリースされたのは3月。4月にはワンマンライブも予定されていたが、コロナ禍によって中止となってしまった。ファーストアルバムが発表されたのは9年前の3月のことだった。原発事故とコロナ。歌に込められたメッセージ。


文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 林 大輔 photo = Daisuke Hayashi

— スカバンドのCOOL WISE MANでトランペットを吹いていた光風さんが、歌うことを選んだきっかけからお聞きできればと思います。

 簡単にいうと、トランペットだけじゃ食っていけないって思ったんですよ。トランペットは弾き語りのように一人でできるわけじゃない。トラックを流して、そこに乗せていくというスタイルならできるかもしれないけど、そのことをあまり前向きには考えられなかったんです。一人でやれることって何かなって考えて、アコースティックギター一本で歌うようになった。32歳の時のことです。

— それまで歌は作っていなかった?

 作曲するくらいで、歌詞は書いていなかったですね。高校時代にバンドで歌ったりはしていたけど。

— 歌った最初のライブは?

 あるイベントに誘われて、そのイベントはアコースティック一本でっていう雰囲気でもないから、即席でバンドを作ったんです。ライブしたら、意外におもしろかったんです。じゃあ次のライブを決めようかっていうことがきっかけ。それがGREEN MASSIVEの原型ですね。

— 歌ってみてどんな感覚があったのですか。

 感覚を得るというよりも、やるしかないという。とにかく場数を増やそうと思って、ストリートでも歌っていましたね。今じゃ考えられないけど、10日連続とかも当たり前にやっていたし。

— 最初に歌うとき、どんな歌を歌いたいと思ったのですか。

 漠然としていたっていうか、特にコンセプトはなかったですね。バンドがバンドとして形になっていくことで、メッセージ性も強くなってきたように思います。

— ファーストアルバムを2011年にリリースした。

 リリース日の1週間後くらいに311があって。当時って殺伐とした雰囲気もあったじゃないですか。ライブをやるな、電気を使うなとか言われて。日本ではメッセージ性の強いことをアルバムにして発信しているバンドって少ないじゃないですか。311がきっかけっていうわけじゃないんだけど、歌でメッセージを発することを自分に課したのかもしれない。

— 5年ぶりとなる4作目『地下街の人びと』も3月11日のリリースでした。

 311ということはまったく意図したわけではなく。当初は3月10日を考えていたんだけど、流通をお願いしているディスクユニオンから水曜のリリースを打診されて。水曜がたまたま3月11日だった。ダブアルバムはリリースしたけど、オリジナルを出さなきゃと思いつつ、今年は出そう、今年は出そうと思って5年も経過してしまったというのが実感です。メンバーそれぞれの活動もあったから。

— レコーディングをいつからスタートさせたのですか。

 去年の6月。12月には出るかなと思っていたんだけど、すべてが終わったのが1月に入ってからでした。

— どんなアルバムにしたいと思って動き出したのですか。

 4枚目のアルバムって大事だと思うんですね。世界のいろんなバンドを見ると、1枚目から3枚目までで自分たちの音を確立させて、4枚目で変化を感じさせてくれるバンドが多いような気がしていて。例えばクラッシュ。クラッシュの4枚目って『サンディニスタ』なんです。『ロンドン・コーリング』よりさらにパンクという枠を超えて、メッセージ性が強い作品を発表した。

— その意味でいうと、時間を必要としていたというのもわかります。

 レコーディング自体は4日で終わったんです。今回は準備をすごくしたし、メンバーが集まってリハーサルする時間も多かったから、レコーディングでは集中できたかなって思います。

— このアルバムで、何と発したいと思っていますか。

 世の中に対して、なんでそうなんだっていう問題提起をしたいんです。日本のミュージシャンも、ちゃんと声を上げていかないと。

— 自分たちのことをレゲエバンドだと思っています?

 サウンドやリズムとしてはレゲエの曲が多いけれど、自分たちではレゲバンドだとは思っていなくて。強いて言えばルーツロックレゲエバンド。ジャンルはなんでもいいんです。レベルミュージックという言葉で紹介されることもあるけど、自分が当然だと感じていることを歌っているだけ。今回のアルバムでは、あえてレベルミュージックという歌詞が出てくるんだけど、それは誰も言わなくなった危機感を感じているから。思いを日本語にして歌っている。

— 日本語に対するこだわりは強いものがある?

光風 最近の音楽を聴いてると、基本歌詞を英語にして、日本じゃなくて海外を標準にしていることが多くて、それはバンドやアーティストのひとつの方向性だと思うけど、響きとしての日本語、音としての日本語、そしてメッセージとしての日本語が自分には聞こえてこない。俺は日本でやりいし、最初は日本人に届かないと意味がないなって思っていて。

— 歌を作るのは、どんなときが多いのですか。

 作るぞって決めて作りはじめるとなかなかできないから、言葉をひとつひとつ拾っていって。書いて、まとめて、省いていく。同じ言葉を使わないとか、そういうことを積み重ねていくと見えてくることがあるんです。自分のなかから浮かび上がってくる言葉ってどうしても似てきちゃうから、本を読んだり、映画を見たり、旅をして、いろんなものを吸収していますね。昔の歌って、永続的に聞かれるというか残っている歌が多いじゃないですか。時代を代表する世代を超えたクラシックナンバーになっている。今の時代はそんな歌が少ないと思うんです。それはもしかしたら、今が良ければいいという考え方に起因しているのかもしれない。時代に合っている感情を歌にすればいいという空気感が満ちているというか。

— 時代に合った感情を歌にするのではなく、もっと根っこにあるものを歌にして残したい?

 もちろん音も大事にしているけれど、もっとも大事にしているのは歌詞。例えばボブ・マーリーは、日本の中学生でもわかるような歌詞でシーンをついている。誰もがわかる言葉で撃ち抜く。そういう歌詞を俺は書きたくて。

— ソロとトリオとGREEN MASSIVEというバンド。それぞれで活動しています。

 全部おもしろいんですよね。今年はアルバムをリリースしたこともあるから、GREEN MASSIVEが増えると思うけど。バンドでやればバンドっていいなって思うし、トリオでもソロでも、それぞれおもしろさを発見できて。やりたいことがちょっとずつ違う。演奏する曲は同じかもしれないけど、それぞれに違う表情がある。その意味では自分のなかでバランスが取れているんですね。

— 残念ながら、4月上旬に予定されていたレコ発のワンマンライブは延期となってしまいました。

 ギリギリまで開催したいと思っていたけど、新型コロナウイルスの感染拡大状況を考え、延期という判断にしました(※後に中止と発表)。新型コロナウイルスが収束し、状況が好転したときには必ず開催します。

— 今必要なことって、どんなことだと思いますか?

 バンドのなかでも意見が違うのは当たり前。その違いをいかに楽しめるのかっていうのがバンドじゃないですか。同じ方向性を抱いたミュージシャンは、ユナイトしていかないとなって思うんです。いろんなパーティーを交わらせて大きなパーティーにしていく。そうしないと巨大なものは倒せない。輪をなして団結する。

— 人の心を団結させることって音楽の大きな力だと思います。

 日本という国がひとつの会社だとしたら、今は健全ではない会社だと思う。その会社を変えていくためには、社員みんなで団結していかなければならない。文句や愚痴ばかりを言ってしまいがちになってしまうんだけど、ひとりひとりが何をできるのかっていうことを考え、実行することが大切だと思う。それが小さなことでもね。俺は歌で意志表示しようと。

— その意味では、歌というものがあってよかったですね。

 そう思います。俺の表現方法は歌しかないから。

— 光風 & GREEN MASSIVEが持つメッセージの強さ、そして正直なメッセージが多くの人に伝わっていくことを願っています。

 みんな自分の頭で考えてほしい。その音楽が好きか嫌いか。SNSとか他人の意見に流されるのではなく、自分で好きって思えたものを素直に感じてほしい。もっと自分の感覚を大事にして聞いてほしいと思っています。

(取材日・1月27日/3月31日)

「地下街の人びと」

COOL WISE MANのトランペッターとして活動を続けながら、30代になって歌うことを決意。2007年にGREEN MASSIVEを結成。2020年3月に5年ぶりとなる4作目のオリジナルアルバム『地下街の人びと』を発表。日本語によるメッセンジャースタイルを貫いている。4月にリリースライブが予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために中止となった。延期となった2020年のフジロックへの出演が決定していた。

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