緑豊かな高尾山の麓で追求する新しいスローファッションのカタチ。【福元卓也・理恵(Botanic Green)】

1600種類もの植物が自生するといわれる緑豊かな高尾山。その麓で、草木染めをメインに服を作り続けるBotanic Green。2人が移住先に高尾を選んだのは必然だった。

文 = 加茂 光 text = Hikaru Kamo
写真 = 北村勇祐 photo = Yusuke Kitamura


ー 出身はどちらなのですか。

卓也 兵庫県の宝塚です。若い頃からトランスやレイブミュージックが好きで、野外パーティーに参加するなかでヒッピーカルチャーに出会いました。そしてサイケデリックを経てオーガニックという思想に辿り着いたんです。


ー ボタニックグリーンはどのようにして生まれたのですか。

卓也 高尾に引っ越してくる前はずっと大阪でショップをやっていたんです。オーガニックコットンやヘンプのウェアを扱ってたんですが、そのうち自分たちのブランドを立ち上げようということになり、店に余っていた生成りのTシャツを染めたのがはじまりです。当時は工房なんかなかったので、河原に道具を持っていって橋の下で焚き火をして染めていました。


ー 草木染めを選んだ理由は?

卓也 ブランドを立ち上げる際に、「なにかキャッチーな謳い文句はないかなぁ」と思って図書館でいろいろ調べていたんです。そこで「若葉による緑色染め」という染色方法を知った。これならヨモギなど、どこにでも生えている野草で服を染められる。しかも使う草によってグレーっぽかったりカーキっぽかったりと、グリーンの色味が千差万別なんです。それが面白かった。最初の数年は、いろんな草でひたすら服を染めてました。


ー ブランド初期の作品の、さまざまな色合いのグリーンが印象的です。

卓也 草木染めにしか出せない色があると思うんです。草木染めで合成染料のようなビビッドな色を目指す人もいるけど、自分はくすんだ渋い色が好きで。最近は保存できる草木染めの染料も使っていますが、なるべく自然に近い色を作るよう意識しています。 

ー 東京へ移住しようと思ったのは?

卓也 大阪に住みながら東京のイベントにも出店してたんですけど、深夜バスで東京と大阪間を行き来するなかで、東京に拠点を置いてやってみたいなという思いが徐々に膨らみ、ふたりで大阪から上京しました。


ー 移住することで苦労などはありませんでしたか。

理恵 高尾は人口も多くないし、東京ではあるので都市に向かって開かれている感じもある。閉鎖的な空気もないし、無理に地域に馴染まなくても許される雰囲気があるんですよね。家にこもって服作りをするうちらにはピッタリだったのかも。一方で高速道路のトンネル工事反対運動の中心にいた坂田晶子さんみたいな方もいて、彼女のまわりに面白い人が集まっていたので仲間はすぐにできました。


ー なぜ高尾だったのでしょうか。

卓也 一番の決め手は高尾山の豊富な植生です。ここは冷温帯と暖温帯の植物の分布が交わる植生豊かな場所で、1600種もの植物が自生している。これはイギリス全土に自生する植物の数に匹敵するほどなんですよ。ブランド初期の代名詞ともいえる色調豊かな緑色は、高尾だからこそ出せた色かもしれません。


理恵 私も関西出身なのではじめての東京暮らしは心配でしたけど、直感的に「ここだ!」って思いました。来た当初はふたりで裏山を歩き回って染めに使う植物を採取してました。ものすごい手間なんで山の草だけで染めようとすると採算が合わなくなっちゃうんですけどね(笑)。


ー 高尾以外は候補にならなかったのですか。

卓也 僕は東京も好きなので、軸足は自然の近くに置きつつ、もう片方の足は東京に置ける場所がよかったんです。その意味で高尾は最適な環境でした。


ー 最近はデニムやパーカなどのウェアも作られています。

卓也 服を染めるだけじゃなくて、時代に合ったファッションを追求したいという思いでオリジナルのウェアを作っています。


理恵 デザインはすべて彼の担当で、工場やパタンナーさんとのやりとりは主に私が担当してるんですけど、私たちは服飾を勉強したわけじゃないので実際に形にするのがめちゃ大変なんですよ。彼のこだわりが強すぎて折り合いがつかず、「もう一緒にやってられへん!」って思うこともあります。服のデザインもどんどん変わっていくし。まぁ、そこが彼の良さでもあるんですけど。


ー 今後ボタニックグリーンが目指すものとは。

卓也 スローファッションのシーンって、時代に変化されちゃいけないという考えの人が多いんですよね。だから、素材は超良いんだけどデザイン的な刺激が少ないものが多い。僕は時代の変化とか若者のファッションをどんどん取り込んで、ストリートファッションとスローファッションそれぞれに、新しくてクールなデザインを提案していければと考えています。

Botanic Green服のデザイン、染色作業を主に卓也さんが担当し、生地メーカーや縫製工場との調整、事務仕事などを理恵さんが担当する。ブランド立ち上げ当初はTシャツやレギンズなどのアイテムが中心だったが、現在ではブランドオリジナナルのデニムやパーカー、バッグなど幅広いアイテムを製作する。https://botanicgreen.com/


ローカル サルーン  関東片田舎喫茶併設的洋品店

田園地方の喫茶併設のいなたい洋品店に見たてたBotanic Green のマーケットイベント。当初、春に予定されていたが夏至の日に開催が決定。honobono号、plant design SOU、つくるプロジェクト、森の民なども出店。Botanic Green からの姉妹ブランドとも言える「Meek Weed」もはじめて披露される。toi toi toi による生放送前夜祭も生配信される。

開催日時:2020年6月20日(土)21日(日)11:00 ~ 20:00

会場:原宿 SPACE BANKSIA


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