【もののけ祭りインタビュー】日本人としてのアイデンティティを再確認する「祭り」。

夏の終わりに、新しい祭りが産声をあげる。戸隠で開催される「もののけ祭り」だ。そのフェスのタイトル、そして開催される戸隠という場所から、多くのフェスとは違う何かを感じ取っている人も少なくないだろう。日本という場所に暇られたものとは何か。それを祭りという時間のなかで表出したいのかもしれない。もののけ祭りのプロデューサーである腰塚光晃さんにインタビュー。

–––– どういうきっかけで、もののけ祭りを開催することになったのですか。

 5年前に中目黒にKAPUKIという着物屋を開き、その流れから多くの日本伝統を革新する表現者と出会い、江戸とかぶくをテーマにした本「ぶ -江戸かぶく現代」を昨年に出版しました。和をオリジナルのスタイルで表現する多くの人達を取り上げました。自分はもともと写真家ですが、最近は仕事でもどんどんプロデューサー的な役割が増えてきていて、デスクワークで紙の表現も悪くないけど、もっとリアルな、和の革新的表現の場を作りたいと思っていました。

 そんな中、絶妙のタイミングで長らく通っていた戸隠の仲間が、「なにかやってみないか?」と提案してくれて、戸隠でやれるなら、超本物の日本で一番かっこいい祭りができるビジョンが頭に浮かんだので、思い切ってやってみることにしました。

–––– もののけ祭りのコンセプトを教えてください。

 コンセプトはたくさんあります。一言で言えば、日本人として一番アガる唯一無二の祭り。フェスと祭りはまったく別のものだと思ってます。祭りはフェスに比べて、いい意味での人との交流がたくさんあります。例えば、今回のもののけ祭りのメインステージは縄文やぐらです。そのやぐら作りは樹齢70年の杉の大木を自分たちで山から切り出すところから始めています。そこには、地元の山の持ち主の方、木こりの方、設計士の方など、多くの方々からの協力があって、やぐらが立ち上がっています。まさに、自然の恵みをいただき祭りを立ち上げる、身の研ぎ澄まされる仕事でした。

–––– 今回のもののけ祭りの特徴とは?

 第一回目なので手探りも多いですが、そのぶん、どきどきわくわく感がハンパないと思います。作っている自分達も毎日がそんな感じ。フェスでもあると思うけど、伝説の一年目って納得しちゃう感じです。たぶん、今回が一番空いてるはずだし、気候も少し秋を感じる感じで最高だと思います。前例のない第一回目に来場を決めた人の多くは、もののけ祭りにビビッときた人だと思います。それは出演者も同じ、みんなのこの祭りへの期待が最高のグルーヴになると信じてます。

–––– 会場の戸隠はどんな場所ですか。

 とにかく清らかで森と空気が美しい。コンビニも信号も無い。自分は日本で一番かっこいい場所だと思ってます。先日始めて戸隠に来た自分の友人が言ってました「危うく戸隠をしらないまま死ぬところだった」と(笑)。

 修験僧(山伏)の聖地だった戸隠山を莊嚴さはとてつもなく、何度となく奇跡のような景色を見てきました。奥社参道の杉並木など、400年前の先祖たちが作った空間デザインの凄さ。これも日本有数だと思います。奥社参道の随神門を超えて始まる杉並木で感じる最強の結界感。これはぜひ体験してほしいです。そしてこの空間デザインを車もチェーンソーもなかった時代にやろうとした先祖の思いに心が重なります。今の時代、自分が生きてるときのことで精一杯。でも奥社の参道を作った人たちは、子孫のことを考えてあれをやったんだと思います。

–––– フェスは、未来のライフスタイルを提示する場でもあると思っています。どんな未来像をもののけ祭りでは感じてもらいたいですか。

 日本は明治維新によって、あえてオリジナルを削ってきました。すべての行き過ぎたものは、必ず戻ってきます。オリジナリティを捨て欧米を入れまくる日本のライフスタイルはピークを過ぎ、より日本的な表現、粋という価値観に目覚めている人も増えてきています。もののけ祭りはそのムーブメントをもっと、かっこよく、大きくしていきたいです。そのことによって、各々がマスメディアにコントロールされることなく、自分の価値観、ルール、表現方法を見つけていける世の中に少しでも近づいていければいいと思います。お金がなければ生活できない。そんなのナンセンスってみんなが言える世の中にするために、祭りだけでなく、空き家を利用した新しい生活スタイルの提案も行っていきます。

–––– キャンプするお客さんは、どのくらいを想定していますか。

 半分くらいだと思います。スキー場での開催のため周辺にはロッジなどの宿泊施設も多いので、キャンプ慣れしてない人でも楽しめる場所だと思います。

–––– 8月31日が「天鈿女命の新月祭」9月1日が「天手力雄命の太陽祭」と記載されています。この名前に託した思いを教えてください。

 戸隠は神話として有名な岩戸伝説でまつわる場所です。ご存じない方はググってみてください。

簡単に説明すると、太陽神 天照大神が弟の素戔鳴尊の乱暴を怒って岩の中に隠れてしまいます。世の中は暗闇になり多くの災いが起こります。そこで芸能神のアメノウズメ(天鈿女命)が岩戸の前で舞を踊り、天照大神を誘い出し、世の中に光を復活させる物語です。天照大神が二度と岩戸に隠れないよう力の神アメノタヂカラオ(天手力雄命)が岩戸を投げた先が戸隠。その岩戸が戸隠山と言われています。

 芸能、音楽、アートが、世の中の闇を取り除く。それがもののけ祭りのテーマのひとつでもあります。表現によって風穴をあけた芸能の女神アメノウズメ、それは歌舞伎の起源と言われる出雲の阿国のかぶき踊りとも重なります。そのかぶき踊りを復活させる、日本舞踊家花柳凜の舞台、コムアイのYAKUSHIMA TREASURE、火舞師の酔月、四つ打ちを超越したデジタルコンポーザーのLemnaなど、女性の表現者が新月の夜を盛り上げます。一転して、翌日はアメノタヂカラオを彷彿させる男祭り、血湧き肉躍る舞台が怒涛のよう押し寄せます。

–––– もののけ祭りで、参加するみなさんにどんな時間を過ごして欲しいですか。

 自分が日本人に生まれたことを謳歌し、誇りをもって生きていけるように、普段の自分を解き放ち、乱痴気騒ぎしてほしいです!

もののけ祭り

開催日:8月31日(土・新月祭)〜9月1日(日・太陽祭)

会場:戸隠スキー場(長野県長野市)

出演:YAKUSHIMA-TRESURE(水曜日のカンパネラ × オオルタイチ)、Lemna、Nyantora + duenn、TURTLE ISLAND、切腹ピストルズ、佐藤タイジ、ほか



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