東日本大震災をきっかけに熊本と福島をつなぐ活動を続けている東田トモヒロ。その活動を、無理することなく継続させるために動き出したのが「RICE FIELDFES」だ。みんなで苗を植え、育てて、収穫する。そこから笑顔が循環する。
文 = 宙野さかな text = Sakana Sorano
写真 = 宇宙大使☆スター photo = Uchutaishi☆Star
東日本大震災は、多くの人が何かを考えるきっかけとなった。自分たちはどう暮らしていくのか。自分たちの大切なものとは何か。熊本に住むシンガー・ソングライターの東田トモヒロさんも、食べることをあらためて見つめ直したという。そのひとつとして行ったのが、田んぼを借りて、主食である米を自分で育てて食べること。
東田さんが東日本大震災後に立ち上げたのがCHANGE THE WORLD。原発事故により、今までとは異なる暮らしのなかにいる子どもたちに、九州熊本からたくさんの元気を届けようとするプロジェクトで、今も南相馬のよつば保育園に不定期だけれども無農薬の野菜などを送っている。今年も、東田さんの地元の名産であるスイカが送られた。
去年までは仲間と自分たちが食べる米を主に作っていたけれど、隣にある3枚の田んぼも借りられることになり、 〈RICE FIELD FES〉を新たにスタートさせた。 〈RICE FIELD FES〉はこの増えた田んぼで田植えや稲刈りをイベントとして開催し、収穫した米をよつば保育園に届ける。その1回目となる田植えイベントが6月末に開催された。
ワークショップに参加したのは子どもも含めておよそ40名。小さなお子さんを持つファミリーがほとんどだった。田植えがはじまるとほぼ同時に雨が落ちてきた。田植えの数日前に熊本を含む北九州はやっと梅雨入り。大地に生きる植物にとっては恵みの雨だったに違いない。よつば保育園の近藤能之先生も南相馬から駆けつけ、東北と比べて時期がはるかに遅い田植えを初体験した。
子ども達の多くは、何度か田植えをしたことがあるという。むしろ大人達のほうが、田植えがはじめてという人が多かった。〈RICE FIELD FES〉をサポートしているのが、循環する農業を目指している熊本ののはら農研塾とKEEN。のはら農研塾の野原健史さんは、長崎県川原で開催された〈A WITNESS TO KOHBARU 〜失われるかもしれない美しい場所で〜〉やCandle JUNEさんの〈SONG OF THE EARTH〉などにも参加している。東田さんの田んぼの米は、のはら農研塾のヒノヒカリ。ほとんどの苗は40日程度育てられて田植えに使われるのだけど、のはら農研塾では60日育てた苗を田植えに使っている。この20日の違いで、収穫する際の稲は大きく、そして強くなると野原さんは教えてくれた。
KEENはブースを設け、 Tシャツプリントのワークショップを実施。FEEL GOOD STORE by KEENとしてシューズのチャリティー販売も行った。受付としてティピが建てられたことやKEENの出展によってフェス感が増している。
田植えを続ける間、雨はどんどん強くなっていった。子ども達は田んぼから上がり、大人達が一心不乱に苗を大地に植えている。そして2時間、2枚の田んぼの田植えを終えた。
「準備その他はいろいろあるにせよ、本当に楽しい時間でしたね。雨にも関わらずみんな笑顔で何よりでした。はじめて田植えを経験される方々もたくさんいらっしゃって、時間があればひとりひとりに感想を聞きたかったけれど。昼食の時間や別れ際のみなさんの表情、スタッフサイドの雰囲気や達成感のなどを感じると、やって良かったなと思いました。これまで一緒に田んぼやCHANGE THE WORLDをやってきた仲間、そしてKEENのメンバーともより深いところで繋がれた気がしました。それは田んぼというひとつの水のなかに一緒にいて、ささやかだけど美しい目標にみんなで揃って到達できたからかも」と東田さん。
一粒の種もみが一本の苗になる。田植えする際の苗は3本くらいが適当だ。田植えした後、苗は分けつしていく。ご飯茶碗一杯分の米は、だいたい2株分だと言われている。つまり米6粒が茶碗一杯分になる。
熊本でみんなで植えた米は、数ヶ月後には黄金色の稲穂になって、次の稲刈りワークショップで収穫される。そしてその米は、福島の子ども達のお腹を満たし笑顔をもたらしてくれるだろう。その笑顔は間違いなく次の年の〈RICE FIELD FES〉の大きなエネルギーとなる。〈RICE FIELD FES 〉とは、米がもたらしてくれる笑顔の循環なのかもしれない。
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