次なる20年のための確かな一歩。【cro-magnon】

cro-magnon
ボストンで出会った3人が日本に帰国してバンドとして活動をはじめてからちょうど20年。cro-magnonとしてスタートしてから15年になる。バンドとして継続的に時間を共にするために、新たな一歩を記す。

文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 伊藤愛輔 photo = Aisuke Ito


ー 新作がリリースされました。何年ぶりになるのですか。

コスガ 4年半ぶりになるのかな。

大竹 作り出したのは3年くらい前。どういう形になるのかは別にして、常に新しい作品を作りたいとは思っているのだけど。かつては1年に1枚のペースでリリースするのが当たり前のようなサイクルで、それが当たり前じゃなくなってきたっていうか。


ー むしろ1年に1作品というペースが異常のようにも感じる。もちろん、そのペースで作品を表出し続けられるアーティストもいるのだろうけど。

大竹 これから20年30年と続けていくうえで、自分たち主体で制作をしてみたいという思いが強くなって。新たなやり方みたいなものをいろいろと話したり構築したりするのに、けっこう時間がかかった。新しいcro-magnon、制作チームとしてのcro-magnonもなんとなく見えた。時代の流れに沿ってクリアできた結果としてこうして新作ができたのだから、さあまた作ろうっていう気持ちが充満していますよ。


ー 確かにcro-magnonがスタートした時代と違って、作品の形が違ってきているよね。 CDやアナログだけではなくなったというか。

金子 CDの価値がどんどん低下していると思います。若い世代が、どれだけCDという形を欲しているのかわからないし。

大竹 でもデータだけだと残っていかないと思う。誰かの家やスタジオに行って、自分の好きな作品を見つけたとする。それだけで同時代を生きている繋がりが感じられたりするじゃないですか。

コスガ 今はシングルで1曲ずつダウンロードできるし、アルバムのこの曲だけっていう聞き方もある。アルバムとなるとコンセプシャルなものだし、なかなか難しいかもみたいなことを最初は3人で喋っていましたね。でも結果としてアルバムになった。新作は現在のcro-magnonそのものですよ。等身大のcro-magnonかもしれない。

大竹 十数年前とは状況が変わってきている。それに対応して俺たちは新たなスタートを切った。そしてここから20年30年歩み出せる。

ー 3人は今40代中盤。欧米のミュージシャンを見ればまだ先は長いと思う。

大竹 ミュージシャンに引退はないはず。ツアーを今までのように続けているcro-magnonと作品をリリースしたときだけちょこちょこっとライブをするようなcro-magnon。ふたつの経過の違いによって、20年後の説得力も違うと思う。ちょっと作品をリリースするのは空いてしまったけど、ちゃんと作品も出して、日本を周り続けて。それで20年経ったら伝説のバンドになれるんじゃないかなって。


ー 確かに日本ではそれをやり通したバンドはいないかも。

大竹 巧ちゃんもツヨシも、他のミュージシャンともいろいろやっているし、そういう日々の積み重ねがミュージシャンの本懐っていうかさ。それを続けることが一番大切であって、そこをこれからも大切にしていきたいなって。俺たちは音楽に毎日従事する。


ー 3人にとって、音楽は職業であると同時に自分の一部分でもあるわけだから。

大竹 すごく簡単なことで、俺だったらスティックを握る。歯を食いしばってということじゃなくて、自然と音楽とともに1日を送っていく。コツコツした毎日が大事になってくると思う。それが80歳まで続いていったとしたら、自分たちから出る音がさらに説得力を持つと思う。


ー 日常に音楽があるということ。

大竹 アメリカの日常の音楽と日本の日常の音楽は違うんだよなあ。

コスガ これからは劇的に変わってくると思います。ひたすらにやり続けるしかないのかなって俺は思いますけどね。俺たちみたいな存在が、常に何かを投げていかないと。やめてしまってそれが無くなってしまうと、引き継ぐものが無くなってしまうから。早く熟れたものは腐るのも早いって誰かが言ってましたしね。

大竹 それを証明するのは、まさにこれからだと思うんだ。俺たちが、この熱く語っているようなことを続けていけるか。やらなければいけないことをよく話していて、正しいとか正しくないとかじゃなくて、俺たちみたいなやり方もありでしょって提示したい。自分たちの頑張りによって証明できるんだから。


ー 究極は自分たちが満足できればいいわけだし。

大竹 俺たちのように、不良だって言われつつも好き勝手に粘っている先輩がいたとしたら、年下のミュージシャンにとって勇気が出るはず。


ー 成功の形はいくつもあるんだっていうことをcro-magnonには証明してほしい。

大竹 何を成功とするか。それは自分次第。cro-magnonにとっては成功の形はこれだけど、他の人にとっては違う。俺たちにとってはなんとなく見えてきていて、俺たちのゴールは続けていくこと。

金子 家族も増えているし仲間も増えています。だから成功しているかどうかって聞かれたら、今も成功なんですよね。アルバムを出せて、日本のいろんなところでライブができているっていうことが成功なんだと思います。

cro-magnon city
1996年、米国ボストンにて、大竹重寿、コスガツヨシ、金子巧が出会いセッションをはじめる。2004年にcro-magnonとして活動開始。2019年3月に6枚目のアルバム『cro-magnon city』をリリース。作品だけではなくライブにおいても、常にさらに深くて広い音世界の創造を追い求めている。8月末まで40本を超えるリリースライブを全国各地で敢行中。https://cro-magnon.jp

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