アメリカの60年代前半という時代をボブ・ディランの映画から知る。

 2025年の97回アカデミー賞の作品賞など主要8部門にノミネートされている『名もなき者』。2015年に出版されたイライジャ・ウォルド著の『Dylan Goes Electric!』を原作に、ボブ・ディランの若き日の姿を描いた作品だ。

 物語は60年代初頭のニューヨークからはじまる。無名だったディランが、ピート・シーガーなどに認められ、フォークシンガーとして人気を獲得し時代の寵児となった。そして1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルで、エレクトリックギターを手にスタージで演奏する。アメリカンフォークの祭典での挑戦(あるいは音楽によるアジテーション)。観客席から「裏切り」と罵られても演奏することをやめなかった。

 60年代前半のアメリカはどういう時代だったのか。ニューヨークはどんな街だったのか。今から振り返れば、音楽史の大きな変換点となった時代だ。その一歩を記したのが「時代の代弁者」として崇められていたディランであり、新たなロックの時代への扉を開いたのがディランだ。

 ジョーン・バエズ、ジョニー・キャッシュ、ウディ・ガスリー…。そんな偉大なミュージシャンたちとディランの関わりも興味深い。ディランが好き、ロックが好きという人はもちろんのこと、フェスが好きという人にもおすすめだし、アメリカ文化に興味がある人にもおすすめ。若き時代のボブ・ディランを描くということは、今につながるアメリカ文化の起源を知るということでもあるのだから。

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』

2月28日(金) よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

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