【大塚隆(Spring Love 春風 実行委員長)インタビュー】みんなでみんなが楽しめる場を作ること。

1998年に代々木公園で入場無料のフリーパーティーとしてスタートした「春風」。
開催を見合わせていた時期もあったけれど2007年に復活。以降、その年のフェスはじめとして、多くの人が集う都心のパーティーであり続けている。創世記から20年以上にわたって「春風」の中心として関わってきたカドマンさんの思い。


––– ここでも、いつものようにカドマンさんと呼ばせていただきます。カドマンさんは、1回目の春風の立ち上げから関わっていらっしゃるんですよね。

 1992年のアースデイから代々木公園と関わるようになったんです。当時は、代々木公園で大きなイベントってほとんどなかったんですね。どこからかカドマンが代々木公園でイベントをやっているということを聞きつけて、「こんなことをやりたいんですよ」とか聞きにくるやつらもいて。95年になるくらいかな。亡くなったアコースティックの小野(志郎)ちゃんや、M.M.DelightというVJチームを率いることになる森田(勝)さんらと知り合って、「今はレイブがおもしろい」って話をしてくれて。それが富士山の裾野で開催されたRAINBOW2000に繋がっていったんです。

––– 96年に開催されたRAINBOW2000でもそうでしたけど、レイブパーティーにはマーケットがありましたから。

 アンダーグランドだったレイブパーティーが人を集めるようになっていった。と同時に、場が荒れるようになっていったんですね。ゴミの問題やら何やら。みんなで楽しいことをやろうとしているのに、人が集まることによってのマイナス面も出てきてしまった。小野ちゃんが「カドマンがアースデイをやっているんだったら、代々木公園で太陽光発電でパーティーをできないか」っていう話になって。それでゴミ問題とクリーンエネルギーにこだわったフリーパーティーとして「春風」がスタートしたんです。

––– それが98年?

 そう。97年に京都で温暖化防止京都会議が行われたのも、春風が立ち上がったきっかけのひとつでしたね。

––– 最初はそんなに大きな規模ではなかったですよね。

 90年代中盤から後半にかけて、雨後の筍のように、いろんなレイブパーティーが生まれた。「春風」は4月の開催だったから、いろんなお祭りやパーティーのその年の初っぱなだったし、いろんな人が遊び来てくれた。多くのDJも気持ちよく出てくれたし。

––– いわゆる90年代の第1期が5年?

 90年代は表参道から山手通りが歩行者天国だったのね。道ではバンドが演奏していて、「土日は若い人間が集まって楽しむ場」的な受け入れられ方が、近隣には残ってたんですよね。90年代後半から2000年代に入る頃から、近隣にマンションが建ちはじめて。春風としても、出す音が年を重ねるごとにどんどん大きくなっていったから、近隣方苦情がくるようになってしまって。

––– 年を重ねるごとに、人が増えていっているように感じていました。

 携帯が普及していった時期でもあり、「代々木公園でおもしろそうなことをやっている」と携帯で広まって、センター街でたむろしていたような輩もいっぱい来ちゃったんです。それで場が荒れちゃって。俺らの根底にあったゴミ問題やクリーンエネルギーについては何も伝わっていない。何をやってもいいフリーパーティーなんだって、自由を履き違えた輩がいっぱいになって。みんなで自由で楽しくいることは、とても責任が伴うことなのに、それが伝わっているという実感が持てない。自分たちの場を作ろうと思ったのに、自分たちの思い描いていたものからかけ離れていく。「あれをやっちゃいけない、これもやっちゃいけない」って言うことが大嫌い。でもそれを言わざるを得なくなってしまっていた。それで2002年でやめたんです。

––– 復活したのが2007年?

 ゴスペルシンガーの亀渕友香さんに「カドマン、そろそろ声を出していこうよ、春風を復活しない?」って言われて。DJが中心のパーティーではなく、音楽は生音を中心にして、のんびりした雰囲気でやったんです。それが今の春風につながっている。

––– 90年代と現在、変化って感じています?

 感じますね。第1期時代に遊びに来ていたティーンエイジャーも、今ではファミリーで来るようになっている。アートを代々木公園内で展開し、キッズエリアもできて、ファミリーで楽しめる場になっている。そのなかでメッセージも発信しつつ、少し尖ったところも見せたい。その見せ方や表現の仕方っていうのが、若い世代が担ってくれていますから。

––– カドマンさんにとって、春風ってどんな場所ですか。

 その年のスタートっていう。ここで今年がはじまる。春風で場開きになる。「おめでとう、今年も頑張りましょう」ってみんなで顔を合わせる。俺らの世代にとっては、安否確認の場でもあるけどね(笑)。ハコでのライブでもなく、大きすぎるフェスでもない。みんなが入っていける場所。春風はちょうどいい規模と時期なんですよ。

––– 東京の真ん中だしフリーでもある。そこが集まりやすい要因ですよね。

 代々木公園ほど自由にできる場所ってないんですよ。ちゃんとしたルールに則ってやれば、こんなに自由なところはないですから。だからこそ大切にしたいんです。第1期の90年代と現在の2020年代。周りの状況は変わっている。その変化を受け入れながら、春風という表現を、春風という場を守っていくこと。節度って、何のお祭りにもあるじゃないですか。それを春風でも伝えていきたいですね。

––– 今年のテーマは?

「ポリフォニックラブ」。多種多様な人や文化を調和させる愛。戦争に対して、愛で対抗するしかないじゃないですか。

––– どんな春風にしたいですか。

 とにかく和やかな春風にしたいですね。音も、代々木公園の外まで聞こえる必要はないと思うんです。聞きたい人はステージの近くに集まればいい。そのくらいの音量で構わない。「ここで今年も会えたね」っていう再会の場所。それを大切にしたい。誰でも気軽に入れるっていう公園の本来のあるべき使い方もしていかないとと思っています。

––– 自由に参加できる春風という祭り。

 公園って公の園なんですよね。だからこそ、ここで催しものをするのであれば大切にしていかないと。小さな気遣いこそがラブ&ピースなんですから。

––– その小さな気遣いが広がっていけばいいんですよね。

 気遣いが広がっていけば戦争なんて起こらないわけだし。みんなで楽しいことをやる。それが春風の原点なんですよ。楽しい場って、自分だけが楽しむのじゃなくて、人も楽しくなければならない。目の前にいる人も、周りにいる人も、みんなが楽しくなれる時間。それってすごく難しいんですけど、春風をそういう場にしたいんです。それがずっと根元で思っていることです。

––– 最後にカドマンってどういうきっかけで呼ばれるようになったんですか。

 昭和の時代に、大塚に「角満」っていう結婚式場があったんです。テレビCMも深夜枠でガンガンやっていて、そこから(笑)。

Spring Love 春風 2024

開催日:3月16日(土)17日(日)

会場:代々木公園イベント広場(雨天決行・荒天中止)

出演:MATSUMOTO ZOKU BAND、オカモトレイジ(OKAMOTO'S)、KURUSU、曽我部恵一、sugar plant、HENTAICAMERAMAN❤️+YOUTHEROCK★、ZAKINO、Marter and Yohei Takada、ほか

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