最先端の共生。giFtという場作り。【山之内匠(天草/giFt)】

山之内匠(天草/giFt)
突然に親から告げられた伊豆南への移住。天草としての活動、giFtをスタートさせた今、それは決まっていた必然だったのかもしれない。脱資本主義のひとつのスタイルとしてのドネーションでの場作り。古くて最先端の共生がここから発信される。

文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi

写真 = 宇宙大使☆スター photo = Uchu Taishi ☆ Star


ー まずgiFtのコンセプトを教えてください。

 端的に言うと、giFtボックスで1階部分のスペースを成立させようということなんです。投げ銭、あるいはお賽銭であり寄付でもあるかもしれない。いろんな言い方があると思うんですけど。例えば誰かがコーヒーを飲んだとします。このボックスに100円を入れてくれるかもしれないし200円かもしれない。それはあくまで、こちらが決めるものではなく、払う人の気持ちもそこに含まれるというか。


ー 値段が決まっていないということ?

 サービスも値段も決まっていなくて。


ー そもそもは商店街にあるこの場所を活用しようということからのスタートだったのですか。

 南伊豆の地方創生という動きのなかで集まってきた人たちがいるんです。その人たちに僕が話を聞きにいくなかで、商店街で何かをやりたいっていうことになったんです。そして多拠点居住、コワーキングスペースっていう要素を含んだ場所を作ろうという話になって。

ー 多拠点居住のためにいろんな人が参加する?

 今は11人が月1万円のお金を出し合って運営をしているんです。多拠点居住ですから、南伊豆の人だけではなく。


ー 11人にとっては多拠点住居の場所であり、他の人に利用する人にとってはコミュニティスペースであり。それをドネーションというスタイルで成立させようというアイデアは、いつ浮かんでいたのですか。

 去年の12月に出てきたアイデアです。僕にとっては、投げ銭のライブもよくしているから、ドネーション自体はそんな目新しいものじゃなかったんですけど。


ー ただそれはライブに対して、楽しませてもらったことに対しての投げ銭であって。

 投げ銭でやることの難しさや苦しさ、いっぽうでは有り難さも知っています。あらゆる空間として、出来事として、食べもの、飲んだものということでの投げ銭はやったことがなかったから、もしかしたらこれは新しいスタイルなのかなって。それと場を持つことは絶対におもしろいだろうなと思っていたから。

ー 匠さんは、いつ伊豆に越してきたのですか。

 長野からここに来たのは高校2年の夏休みでした。全寮制の校則のない高校に通っていて、おかんから「伊豆に引っ越したから。次は長野じゃなくて熱海で乗り換えて下田っていう駅だから」と電話で告げられて。場所としては何度も来ていたから馴染みがあったんですけどね。


ー そして天草のメンバーとしても活動をはじめた。

 去年ちょうど10周年だったんですよね。メモリアルイヤーということもあって1年で70本くらいライブをしたんです。天草の10年っていうのは、いろんなところに旅して。100本やった年もありましたから、半分以上南伊豆にいなくて。だけど南伊豆にいる時間を増やしていきたいなとも思っていたんです。天草によって日本中に友だちができ、その友だちの多くは自分の拠点を持っている。だから自分でも南伊豆に場所を作りたいなって思うようになっていて。だからgiFtもいいタイミングだったんです。


ー シェアハウスでもあり、コミュニティスペースでもあるgiFtという存在。しかもサービスなりの金額が決まっていないということが本当に新しいスタイルだと思います。

 シェアハウスだと混ざるっていうことがなかなか起きにくいじゃないですか。ここでは混ざっちゃってもいいし、異種格闘技でもいいし。ある意味では、脱経済社会を目指すひとつのスタイルがここに隠れているのかもしれないって。


ー 地域通貨、あるいはもっと原初的は物々交換の感覚も持っているように思います。決して古くはない、これからの未来系に感じます。

 値段のないサービスであり値段を自分で決めるサービス。資本主義脱出も、心のどこかにあるのかもしれないですね。


ー 匠さんにとって南伊豆はどんな場所になっていますか?

 気がついたら、人生で一番長く住んでいる土地になっていたんですよね。だから故郷感は強くなっていると思います。10代でスパイスドッグでアルバイトさせてもらって、いろんな音楽やカルチャーを教えてもらったし。それが天草の音楽にもつながっていますから。


ー これからgiFtはどう成長させていきたいですか。

 どんどん利用者が増えていってほしいと思いますね。南伊豆商店街は80軒あり、今は半分がシャッターが下りたままなんですよ。 giFtに人が来ることによって、なんらかの町の活性化につながればいいなって思っています。

山之内匠(天草/giFt)
高校時代に実家が引越したことで長野から伊豆南に移住。2007年にアコースティックユニットの天草にベースで参加。仲間11人が集って今年春に「giFt」をスタート。ドネーションという新しいスタイルで古民家、そして地域の再生を目指している。giFtでは3月17日に糸つむぎワークショップ、3月20日に誰かと絵を描く日を開催。https://www.facebook.com/minamiizu.fun/

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