東田トモヒロ
ギターとサーフボードを車に乗せてオンザロードへ。旅から生まれる感情を言葉やメロディに変えていく。だからこそそこには等身大のメッセージがある。
文 = 宙野さかな text = Sakana Sorano写真 = 飯塚キアラ photo = Kiara Iizuka
ー 新作『WONDERFUL ROAD』は、いつ頃から制作を開始したのですか。
東田 曲作りに取り掛かったのは、確か去年の2月。ミニアルバムの「ひだまり」を録音し終わってすぐでした。ひとつのことを消化しきった感じにならないと、なかなか次に行けない性分なもので。なんとなく浮かんだアイデアをいつもポケットサイズのレコーダーにたくさん残しているんだけど、そいつを改めて聴き直す作業からはじめるんです。これはいい曲になりそうだな、これはボツだなとかからはじまって。なかには、げっ、これなんかニール・ヤングの曲をパクってる感じするじゃん、みたいなのもあったりしてね。(笑)。
ー 『WONDERFUL ROAD』というアルバムに、どんな思いを込めているのですか。
東田 ここ数年、飛行機に乗る回数を減らして、なるべく熊本から車で出発してツアーやライブをこなすようにしているんです。その方がギターだけじゃなくてピアノもサーフボードも積めるしね。季節のいいときなんかは好きなところで休める。そうしているうちに旅がより濃密になってきたんですよね。運転している時間は、自分と向き合う時間でもあるから、風景だけでなく思考のなかでもたくさんの旅ができる。そんな旅の暮らしから、ときには波乗りしながら海の上から、少しだけ俯瞰で世界や物事を感じたり考えたりしていたのかもしれない。きっとそんな思いをまとめてみたのが今回のアルバムですね。すべてできあがって気がついたことなんだけど。旅はリアルであり偉大だなっていう。
ー 「いのち」とか「旅」といった言葉が耳に残りますが、歌に込めているものって何ですか?
東田 1 曲目の「世界の唄」に意外とメッセージを集約させているかも。大袈裟かもしれないけど、ブッディズムの自分なりの解釈というか。身近な人やできごとの存在を尊敬し、シンプルに愛することこそ尊いことだと。なかなかそんな風に生きられないけど、ときどきは意識したいなっていうか。
ー 毎年のように作品を発表しています。その創作の源泉はどこから生まれるのですか。
東田 うーん、茅ヶ崎のライブバーの小田さんって大好きなソウルフレンドについこの前言われたんだけどさ、「トモくんすげー作ってるけど出しといたほうがいいよ、枯れるときもくるから」だって(笑)。確かにそう思う。でも枯れること考えたことなかったな。自分としては生きてる限り歌を書き続けたいと願っているけどね。
ー 今回のMVはアメリカの映像です。アメリカにした理由は?
東田 たまたま映像の制作会社をやってるサーフィン仲間(僕の音楽のファンでもある方)に、一緒に「ムービー作りたいね、セドナとかで」って波乗りした後にぽろっと僕が言ったらしいんだけど、気がついたら実現しちゃってた。長いこと憧れていたんですよね、アメリカ大陸をひた走るロードトリップに。最初のシナリオでは僕は出演する予定ではなかったんです。直前になってある事情で流れが変わって、僕もフィルムに収まるストーリーになった。ラストシーンのセドナは前日まで雨の予報だったけど、当日になってホテルのドアを開けると、眩しいほどの晴天。僕が行くことになったことも含め、すべての物事がさ、何か見えない力、グレイトスピリットのような存在に導かれていった感覚でしたね。
ー 自分にとって『WONDERFULROAD』はどんな作品になっていますか。
東田 到達点であり、始発点であり、通過点。みたいな感じかな。
ー 音楽とは東田さんにとってどんな存在なのですか。
東田 音楽こそ無限の自由を表現できる最高のメディアだと思います。形はないけれど、だからこそ人類の宝だと。
ー それではライブとは東田さんにとってどんな場所?
東田 ライブはひたすら自分を燃やす場所ですね。アルバムの最後の曲にも書いたけど、いつもこれが最後のライブだと思ってやっているんです。特に震災を複数回経験して強くそう思うようになったかな。と言っても毎回大したことはできてませんけどね(笑)。
Profile;
旅とサーフィンとをこよなく愛し、音楽を通して『LOVE&FREEDOM』をメッセージし続けている。自然に寄り添った暮らしや旅のなかから紡ぎ出される飾り気の無い等身大の楽曲は、多くののファンを魅了し、長く愛され続けている。福島県南相馬よつば保育園の子どもたちに九州から季節の野菜や果物・穀物などを届けるプロジェクト
「change the world」の代表を務める。http://www.higashidatomohiro.jp/
CD Wonderful Road;
収益の10%を自然環境の保護に取り組むアウトドアアパレルブランドpatagonia に寄付されたミニアルバム「ひだまり」に続く、通算14枚目となるアルバム。濃密な旅のなかから生まれた曲が収録されている。
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