表現力とアイデアを詰めた アコースティック型。【SPECIAL OTHERS ACOUSTIC】

SPECIAL OTHERS ACOUSTIC

表現としてまったく別というエレクトリックとアコースティック。個々のスキルや楽器の持つ特性がより表現せざるをえないのがアコースティックかもしれない。

文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 伊藤愛輔 photo = Aisuke Ito


ー SPECIAL OTHERS とSPECIAL OTHERS ACOUSTIC。エレクトリックとアコースティックというコンセプトだけではなく、自分たちのなかではどんな違いを持っているのですか。

又吉 楽器の身軽さの違いは大きいですね。エレクトリックになるとどうしても機材が増えてしまう。

宮原 メンバーがいて楽器を持っていれば、ストリートでもすぐにライブができちゃうみたいな感じがコンセプトなんですよ。

芹澤 楽器も違うしアプローチも違う。だからSPECIAL OTHERSの曲をアコースティック楽器でカバーしているだけのものじゃないってことを伝えたいっていうことが一番に持っていますね。

柳下 エレクトリックだとエフェクターだったり、多くのことに気をくばってライブしたりレコーディングしたりしているんですね。アコーステックだと楽器だけに集中できるっていうか。楽器そのものを楽しめるっていうことがあると思います。楽器自体が持っているポテンシャルをどうやって引き出そうかみたいな。あともうひとつ、原点に帰っているという感じがしますね。

宮原 演奏していても、直接音を出しているっていうことがやっぱりでかいですよね。電気を使わず、ちゃんと音の波を生んでいるっていう。


ー そもそもアコースティックでも音作りをしていこうと思ったきっかけはどういうものだったのですか。

宮原 ライブを続けていくうちに、いろんなオファーがあったんです。そのなかのひとつにアコースティックでやってくれないかっていうのもあって。かつては自分たちだけでライブをしていた。それを今やったらどうなるのか。アコースティックではセッティングに人手を使うような楽器はひとつも使っていないんですよ。やっていくうちに自分たちもはまっていって。エレクトリックとは違う楽しさがあったんですよね。

芹澤 そんなときにみんなでマイス・パレードのライブを見に行ったんですよ。 2013年かな。

柳下 アコースティック・ライブなのに音を作り込んでいて、こんなにおもしろいことができるんだっていうことが刺激になって。

芹澤 俺らはライブからほとんどのインスピレーションを受け取っているって言っても過言じゃないくらいなんですね。期待していなかったけど、そのライブでものすごい刺激をもらって、みんなで興奮しながらしゃべりながら帰って。アコースティックならどんな編成がいいのかっていうことまで、その帰りに話していましたよ。


ー レコーディングの方法は変わったりするのですか?

又吉 アコースティックだと楽器の鳴りが少ない。だからアレンジを練らないと曲にならないといういうか。けれど、アコースティックだろうがエレクトリックだろうがレコーディングのスタイルは変わっていなくて。常々みんなで集まってセッションして、今のフレーズは良かったねって録っておくという作業をしているんです。

宮原 アコースティックは音色の変化も少ないし、アンサンブルで聞かせなければならないし。そこがおもしろいところでもあるんですけど。

芹澤 今は自宅録音の作品も多い。そっちが主流じゃないかって思えるほどです。そんな時代になって、みんなでセッションして組み立てていくというスタイルは、もしかしたら前時代的かもしれないですよね。

宮原 セッションからしか生まれない曲っていうのは絶対にある。偶然に生まれるもの。家で個人作業の過程では計算された音楽ができちゃう。それはそれでめっちゃかっこいいものもできるんだろうけど、俺たちは4人が集って、4人でしか作れないアプローチで曲が作られる。それって俺らの強みであるし、俺らだけの個性ですよね。柳下 打ち合わせをしていなくても、それぞれの音がいいバランスで成立していることも多いと思いますね。計算されたものではない何かが4人にはあるんじゃないかって。

芹澤 すべてにおいて、時代は便利な方向へ、効率的な方向へ流れていると思います。ただ俺らみたいに、わざわざスタジオに集まって、楽器を並べて、バンドで音を鳴らして、手間をかけて。これって壮大な無駄かもしれないけど、その無駄こそが何かすごいものを生んだり、いい音を生んだりするんですよ。これからも、無駄を大切にしていきたいと思っています。


Profile;
SPECIAL OTHERSのメンバーによるアコースティック・プロジェクト。いつもの楽器をアコースティック楽器に持ち替え、2014年にデビューアルバムをリリースし活動を開始。8月25日には上野恩賜公園野外ステージでレコ発ツアーの追加公演が決定している。http://www.jvcmusic.co.jp/specialothersacoustic/


CD TELEPATHY;
3年半ぶりとなるセカンド・アルバム。6曲の新曲とスペアザの4曲をセルフカバーした全10曲を収録。初回限定版にはプラハで撮影されたスペシャルDVDが付属されている。


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