20代から続けてきたDJ。都市の夜を遊ぶことで培ってきたつながりと経験が、あきる野(五日市)の自然のなかで過ごすアイデアに生かされている。
文・写真 = クリススカル text & photo = Sukaru Kurisu
–– 今もDJとしても活動なさっています。
世田谷生まれで、10代の頃から渋谷で遊んでいました。90年代後半になって、19歳でクラブDJとしてスタートしたんです。
–– 20年以上のキャリアがあるわけですね。いわばクラブDJとは大都市の夜を彩る。古民家宿の大峰、そしてグランピングのWOODLANDBOTHYがあるこの場所との出会いを教えてもらえませんか。
結婚した妻の実家の山なんです。古民家も義父が所有しているのですけど、しばらく誰も住んでいなかったので朽ち果てていました。DJとともに料理人も並行してやってたんですど、飲食店で独立しようと思っていた時期があって。けれどなかなか自分が思い描くような物件に出会えない。義父が「こっちの山で何か新しいことをはじめてもおもしろいんじゃないか」っていうようなことを言ったんですね。その言葉が刺さって。とにかく、最初にここに来たときに、こんなところが東京にあるのかって驚いたんですね。
–– それで場所を利用しての古民家宿とグランピングになった?
自分ひとりではなかなかアイデアも浮かばないので、広告代理店に勤めていた友人に相談したところ、「グランピングが流行りそうだ」と。私は料理も作れるし、オーベルジュスタイルのグランピングにしたらおもしろいんじゃないかっていう話になって。一級建築士でもある義父も「お前のために作ろう」と言ってくれて。
–– 自然の近くで暮らしたいという欲求はあったのですか。
まったくなかったですね。アウトドアに興味はなかったし、人を集めてバーベキューをすることが好きだったくらいで。
–– 思いついてからオープンさせるまで、どのくらいかかっているのですか。
3年くらいかかってますね。ほとんどがDIYですから。それで6年前にグランピングと古民家を一緒にオープンさせました。
–– 最初から、それぞれ一日ひと組限定で?
東京にもこんなところがあるっていう感動を、東京の人にも感じて欲しい。そんな思いがあって。ひと組限定でしたら、他のグループのことを気にすることなく、じっくりこの場所と向き合ってもらえるのかなって。
–– 五日市に来るにあたって、かなりの決断はあったのですか。
まったくなかったですね。新しいことにチャレンジするワクワク感のほうが強かった。ずっと東京で遊んできたので、あまり未練もなく。ここも東京ではあるんですけどね。そのワクワク感は今も続いています。自然に学ぶ。それって自分にとっては遊びみたいなものでもあるんです。毎日、お客さんのために火起こししても、全然飽きないんですよ。
–– 都心の飲食店やクラブは主に夜の時間。ここの森のなかでは主に昼の時間。
DJをやることで培ってきたことが、ここでも生かされているなって思います。一番大きなものは人脈です。ひとつのことを本気で続けること。そのことで生まれる関係。本気で遊んできたことが、今のここにつながっている。遊んでいた時代に知り合った先輩や仲間たちが、ここをおもしろがってくれるし、遊びに来るたびにいろんなアイデアをくれる。それが自分にとっても刺激になっている。都市の目線で自然と遊ぶ。
–– ここでどんなことをしたら楽しんでもらえるのか。それはある意味ではDJの選曲に近いものがあるのかもしれないですね。
DJはすでにある楽曲を選曲して時間を作る。ここではすでにある自然を利用して時間を作る。いろいろやってきたことを、ここで還元しているっていう感じですね。古民家には
大きなスピーカーもあるので、その日の最後に帰るお客さんに、バイバイソングで「もののけ姫」をかけたりするんです。お客さんも喜んでくれるんですね。これって友達がはじめたことなんだけど、こんな些細なことも、音楽の現場で本気で遊んでいないと出てこない発想だと思うんです。
–– ここをどんな場所にしていきたいですか。
小さいけれど、音楽イベントをやったりしているんですね。隣に家はないし、上にもないから、爆音で音楽をかけられる。いろんな人が交流する場になればと思っています。人と人だけではなく、人と自然も交流する場。自然はすべての季節でいろんな表情を見せてくれる。雨は雨で風情がある。
–– 自分の携帯はドコモなんですけど、ここではつながらないですね。
ソフトバンクはつながるし、ワイファイも完備してますよ(笑)。でも携帯がつながらないからこそ得られる自由な時間もあるはず。日常から離れてもらいたいという気持ちもあります。森のこの場所だけではなく、五日市という町を自分の感性で盛り上げていきたいとも思っています。地元の人、私のような移住者が混じり合って、五日市の新しい文化が生まれていく。こんな自然に囲まれていても東京なんですから。五日市って、もっとポテンシャルがある町だって思っています。
バス停から軽の4WDでしか上がれないような山道を300メートルも登った先にある別天地。義理の父親が数十年前に住んでいた古民家をリノベーションして古民家「大峰」をオープン。同時に専属シェフ付きのグランピング「WOODLAND BOTHY」もスタートさせた。コロナ時代になってキャンプサイト「WOODLAND CAMPUS」を始動。いずれも1日ひと組限定の貸切スタイルをとっている。この古民家の隣がバス停近くの民家。つまり都市から隔絶された時間がここでは約束されている。11月10日に秋川駅から徒歩3分の場所にYAKITORI&WINEアキルノキッチンがグランドオープン。
トーキョーマウンテン“山遊び” powered by ソラリズム
紅葉と焚き火の音楽ライブ。中央線オレンジ列車で気軽に行ける「トーキョー」。大道芸から山遊びまで親子で楽しめる東京の山の秋へ。
会場:多摩あきがわライブフォレスト自然人村
開催日:11月19日(土)20日(日)
出演:
19日/渋さ知らズオーケストラ、沖野修也、佐藤タイジ、DURAN、オマール・ゲンデファル、元晴 & cro-magnon、DJ YO-GIN、clown ものまる、大道芸人 彦一団子
20日/LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS、ASPARAGUS、The Firewood Project、勝井祐二、こでらんに~、大道芸人 彦一団子、熱血大道芸人 ドラマチック・ガマン
「令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成」
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