音楽の消費速度が速くなっている 現在への提唱【D.A.N.インタビュー】

まだ20代前半の3人から響いてくるミニマル・メロウのサウンド。音に対する無垢なフィーリング。それは日本発信のクラブ・ミュージックの最新系なのかもしれない。


文=菊地 崇 text = Takashi Kikuchi

写真=伊藤愛輔 photo = Aisuke Ito



––– 3人が出会ったのは、いつでしたか?

市川 僕と大悟は小学1年の同級生なんです。中学3年のときに、みんなでバンド音楽にはまりだして、自分の好きな楽器を買って。僕はそのときにベースを、大悟はギターを買ったんです。別の高校に進学したんですけど、中学校の同級生たちとバンドを組むことになって。そのバンドは大学1年のときに解散したのですが、もう一回ちゃんとバンドをしたいと思って、再び集まったのが3人でした。

川上 高校のときに、僕も仁也と一緒にバンドをやっていたんです。


––– なぜ3人が残ったと思います?

櫻木 お互いの短所と長所を、相互補完できるような関係性がこの3人だったということだと思います。言葉では説明しきれないニュアンスだったりセンスだったりという部分でも、共鳴することが多いんですね。3人でやろうって決めてから、わりにすぐ方向性は決まって。3カ月か4カ月で自主制作の作品を発表したんです。

––– それが2014年?

市川 はい。大学3年のときですね。


––– 大学を卒業するときは、音楽とどう付き合っていくのかの岐路でもあるわけですよね。バンドでやっていくと意思統一された?

市川 大学3年というタイミングではじめるのだから、しっかり話し合っての結成だったんです。バンドをはじめたすぐ後に就職活動というのでは、バンドとして高い目標を掲げても、うまく活動できないわけだから。

櫻木 僕は音楽を続けていくことが怖かったんです。音楽を続けていく覚悟があるのかどうか。飛び込んでみると、予想していた以上に楽しいし、なんとかなるかなあと感じていますが。覚悟することの重要性を、ふたりに教わったかな。

川上 バンドが解散することで音楽が続けられなくなるという失敗はもうしたくないと思っていましたね。こうやっていかなきゃいけないんだろうなっていうイメージはありました。その意味では、変な自信があったのかもしれないですね。

市川 僕も自信はなかったけれど、渋谷のWWWでライブをするとか、〈フジロック〉のステージに立つとか、ターニングポイントをひとつずつクリアしていくことで、少しずつ自信となって次に向かっていけた。

––– WWWというハコの持つ発信力は、今のシーンにおいて、重要なポイントを担っていると思います。

櫻木 2 0 1 5 年2 月にはじめてWWWでライブをさせてもらったんですけど、WWWに出るようになったタイミングが、自分たちにとっていい方向に向いていった要因のひとつだと思いますね。今の空気感を敏感にキャッチしている。そういうスペースだと思うので、僕らと

共鳴する部分も多いと思います。


––– どんな音楽をがバックボーンとして存在しているのですか。

櫻木 好きな音楽はどんどん変わっていくのですけど、音楽を聴きはじめてからずっと好きなのはRADIOHEADですね。

川上 音楽を好きになって、音楽をはじめたときからずっと一緒にいる仲間だから。これ良かったよと教えてもらったり教えたり。誰かはこれしか聴かないとか、そういうことはない。音楽の嗜好に関してのズレはないですね。みんな同じものが好きで、曲を作っているときでも感覚でわかるというか。

––– 4月にEP『TEMPEST』がリリースされました。制作に入るとき、何らかのコンセプトを設けるのですか。

櫻木 ないですよ。明確にこういうことをやりたいというものが出ない限り、作品に対してのコンセプトは作らないと思います。常に新しく作って発表する曲がベストだと思っています。この『TEMPEST』はプリプロダクションからいろいろ録っていたんですけど、アレンジが納得できずにいたんです。

市川 すぐに納得できるときもあれば、どこまで行っても到達点が見えてこないときもあるし。中途半端な感覚で、これならいいかという作り方はしたくないと思っています。

櫻木 レコーディング当日にアレンジが決まったことは幸いだったんですが、そのときの直感というか閃きが、鮮度が高い状態で録れているような気がします。自分たちでも驚くようなものが生まれたと思います。


––– WWWからは同世代のミュージシャンが数多く出てきている。同世代のバンドを意識することはあるのですか。

櫻木 意識していないって言ったら嘘になりますけど。ただ自分たちのスタイルを信じて、自分の音を作っていこうと。自分たちが表現したいものをしっかり作り、出していくことが大切だと思っています。


––– CDにしろアナログにしろ配信にしろ、自分たちで発信方法を選べる時代ですよね。

櫻木 その部分においては、僕はいい状況だと思いますね。唯一悲観することがあるとすれば、消費速度がどんどん速くなっていること。新譜がリリースされてもどんどんアップデートされて曲の寿命が短くなっているような気がします。だから耐久性のあるもの、長く聴いてもらえる作品を作れたらなとは思っています。



D.A.N.

2014年8月に、櫻木大悟、市川仁也、川上輝の3人で活動開始。ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション。2015年7月にデビューEP『EP』をリリースし、〈フジロック〉のルーキーアゴーゴーに出演。2016年4月待望のファースト・アルバム『D.A.N.』をリリースし、CDショップ大賞の入賞作品に選出された。〈フジロック〉には2年連続で出演を果たした。この4月にセカンドEP『TEMPEST』を発表。11月17日の仙台Darwinから12月22日の東京LIQUIDROOMまで、ワンマンツアー“4231”が行われている。
http://d-a-n-music.com/

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