【空中水泳】未来の未来の音。混沌のなかのイマジネーション。

今の音をサンプリングしてコラージュする。そこには、音に込められたメッセージが確かに存在している。数々の野外パーティーやイベントで、唯一無二の世界観を浴びせてくれる空中水泳が3年ぶりのアルバムをリリース。そこに込められたコロナの時代のメッセージとは。

文・写真 = 菊地 崇 text & photo = Takashi Kikuchi

-音楽をやりはじめたのはいつだったのですか。

空中 子どもの頃にピアノやエレクトーンとかを習ってましたが、全然駄目で。高校3年の頃にミキサーとターンテーブルを買って、2枚使いとかしてDJの真似事みたいなことをはじめました、何人かで地元でイベントをやってみたり。


-空中水泳の名前で動き出したのは?

空中 DJでは毎回名前を変えていました。空中水泳はひとりでノイズのような音楽をやるときの名前でした。心霊スポットとかの音をサンプリングして、それをコラージュして。いつの間にかDJも空中名義になっていました、そしてライブはやらなくなったんです。


-ライブをやらなくなったというのは何か要因があって?

空中 911でかなりくらっちゃって、理不尽に死んでいった人たちの命を考えると辛くなってしまって。世の中ではレイブパーティーが流行っていて、そこでテクノDJを依頼されてもノイズをかけたりしていました。この世界狂ってますよ〜って。ライブをしなくなったのは311以降。みんなが楽しもうと思って集まる場所で、あえて問題提起する必要はないんじゃないかって。そんなことはもうみんな知っているし、そんなことをわかったうえで楽しんでいる。その場の空気をよくするというDJの本来の役割というか、それをすごく意識するようになりました。


-4月にアルバムをリリースしました。

空中 昔から気が向いたときにつくってて、発想が最初に出てきて、こういう感じのこういうことをやってみたいって。それが少しずつ溜まっていって、溜まったのでアルバムかな、みたいな。


-前作は『世界の世界』。

空中 このアルバムはいろいろな感じの曲の集合体だったので、いろいろな世界を現しているのかなと思って。自分が最近気になっていることって未来で、今の自分たちも未来に生きてる人たちもその先の未来のことを考えているわけで。地球に生きてると考えることが多くて。不安と希望、未来を考えることって重要なことっていうか。いろいろな選択といろいろなパラレルがあると、少なくとも自分たちの今の環境よりも未来が悪い環境にならないためにはどうすればいいのかって考えるようになりまして。アルバムにテーマがあるとしたら、前作が「いろんな世界があります」、今作が「いろんな未来があります」みたいな。


-コロナ前とコロナ以後。DJの本数は変わりましたか。

空中 コロナ前は年間に100本くらいやっていたと思います。去年は数えていないけど60本くらい。春の2カ月間はまったくなかった。その時期はパーティーもなかったし、コロナと自分の距離感というか付き合い方が、まだ謎に満ちていました。


-コロナ以降、パーティーの雰囲気は変わっていますか。

空中 みんな前よりも一瞬一瞬を大事に遊んでいるように感じます。私も大事にDJしています。パーティーで人が集まる、そこにはいろいろな意識の交換があるわけで、集まることが悪いことだって到底思えないんです。コロナという状況で、パーティーに行くか行かないかはそれぞれが選択して決めていて、それはDJの私らも同じで、悩んだうえでの選択。今はコロナより人間が怖いと思うこともあるし、避けては通れないコロナという状況に、いいか悪いかは別にして順応しちゃっている部分も自分自身にはあると思う。個人的には日によって気分も考えも変わりますし、その都度って感じですが、パーティーの雰囲気はいつも最高ですね。


-発信している意識としてはアーティスト?それともDJ?

空中 DJは楽しいから呼ばれる限りは続けていきたいと思っています。曲をつくり続けるかどうかはわからないですね。漫画や映画にも興味があるし、絵を描いたりコラージュをつくったりもしています、音楽制作もそれらと同じように、自分の内から発信するもののひとつで。次のアルバムの構想はすでにあるので、次はつくりたいと思ってますが、未来は未定です。

取材協力 = WADA SHOKUDOU


「未来の未来」
金沢を拠点に、DJキャリア20年目を迎え、ジャンルや流行にとらわれない独特のストレンジな世界観で、北陸のみならず日本各地でプレイを続けている。自ら描くアートワークも含め、ストーリー・メッセージ性が豊かなMixシリーズは毎回好評を博している。2021年4月にリリースした最新作が、やけのはら、鎮座DOPENESS、三宅洋平、RITTO、三根星太郎、IZPONらが参加した『未来の未来』。20曲76分に及ぶ、未来を描くコラージュ・アルバム。https://kuucyuu.thebase.in/

空中水泳 DJ EVENT

7月9日(金)福岡bar sirocco

7月10日(土)別府StudioRoots

7月11日(日)福岡IBIZA祭り

7月17日(土)山口RA

7月18日(日)山口 三角屋

7月23日(金・祝) 新潟paradise

7月31日(土)代々木 予感/Hunch

8月3日(火)渋谷contact

8月20日(金)山形sandinista

8月21日(土)新潟paradise

8月25日(水)神宮前bonobo

0コメント

  • 1000 / 1000