植物が生きていくさまを線に託す。そこには自分の好きなことをして生きていきたいという思いと、母なる地球への感謝が込められているのかもしれない。
文 = 宙野さかな text = Sakana Sorano
写真 = 伊藤愛輔 photo = Aisuke Ito
ー絵を描くようになったきっかけを教えてください。
L 大学生の頃、halkと言うアートグループを女子4人で組んでいました。クラブでデコレーションをしていたんです。フェスなどでデコレーションしている大島エレク総業にお手伝いも行ってて。普通で生きていくことが自分の人生のベストだと思っていたんですけど、東京で自由を知って、好きなことで生きるっていいなって思うようになって。大学3年の頃に就活とかあって4人でアートグループを続けられなくなったんですよね。ひとりが「ルイーゼは絵が好きなんだから、クラブで絵を描いてみれば」って言ってくれて、その流れではじまりました。友だちの勧めです。
ー絵の勉強はしていなかった?
L していなかったですね。平塚出身なんですけど、家の近くに壁画があったんですね。その前の道を通って学校に通っていたんですけど、変化していないのになんとなく変化しているように見えていて。キリンの顔が動いたりだとか花が咲いたとか。目で見るだけではなく、身体で浴びるような壁画。そういう経験があって、心のどこかに絵のことがあったのかもしれないです。
ー実際にクラブでひとりで描いてみて、どんな感覚がありましたか?
L 最初の絵はペン一本で描いた毒々しい絵だったんです。自分の内面を示しているというか。当然なんですけどうまくいかなくて、自分がどうしたいのかもわからなくてしばらく模索していました。
ー描きたいものだったり、画風が見えてきたのはいつ頃だったのですか。
L 2016年にオーストラリアのメルボルンにワーキングクホリデーに行って、そこで絵を描かない暮らしをしばらくしていたんです。ふと描きたくなって、部屋で描き出したのが花だったんですね。それまでバラは苦手だったんですけど、描いてみたいって思って。そして案外描けるかもって。出てきたのが今の画風なんです。それまではもっと抽象的な表現でした。明るい絵を描いて、自分をちょっと変えたいというか。明るい人間になりたいっていうか。そんな願望があり、自分の絵から力をもらっているのかもしれないですね。
ーそこから、自分が描くテーマとかメッセージとして花が浮かび上がってきた?
L 植物が生きて伸びていくさまとか勢いとかを絵に込めたいと思っています。もうひとつの視点は俯瞰して見る絵っていうのかな。フラットな絵が好きなんですね。ストリートカルチャーで街中のいろんなところにステッカーやフライヤーを貼るじゃないですか。それと同じように、空から俯瞰して見たときに、ビルに描いた壁画が大きなステッカーが貼られているように見えたらいいなと、そんなイメージを持ちながら描いています。
ー大きな絵を描くほうが好き?
L そうですね。性格はすごく内気でネガティブで、自信もなくて高所恐怖症なんです。だから大きな絵を描くのは、ある意味では人生の修行かなって思って。体力もいるし、高いところにも登らなきゃいけないし。
ーライブペインティングをしているときはどんなことを考えていますか。
L その場の勢いですよね。ただ最近は、本当の意味でのライブとは言えないのかもしれないですけど、決めて描いていることがほとんどです。他のアーティストのライブペインティングを見ると、自分はライブペインティングじゃないなって思うことがあります。描いていることで人を感動させる。絵としての完成度を追いかけている段階で、その次まではまだまだ。私の性格だと焦っちゃって、心ここにあらずみたいな状態になってしまうんです。
ーいつかこんなものを描きたいっていう夢は?
L ビル一面に大きな絵を描きたいな。描けるような自分になりたいという思いがすごくあります。
ー絵は自分にとってどんな存在ですか。
L 絵によっていろんな出会いがあって、人生ってめっちゃ素晴らしいということを教えてもらいました。好きを見つけるって難しいことじゃないですか。私は絵という「好き」を見つけることができた。ただ、こうして素直に言えるようになったのもこの数年なんですけど。
ー好きなことをして生きていくって、結局はシンプルな思いですよね。
L 好きなことって辛くてもやれるじゃないですか。わずかの時間ですけど、絵をやってきたっていうこの年月と続けてこられているっていうことが自分には大きいんです。絵が自分の大きな軸になっています。
ー今、どんな目標を持っていますか。
L もうちょっと絵のディテールの表現力を出せたらなって。それと自分の情熱の源泉みたいなものを掘り当てたいなって思っています。
●EXHIBITION
Now On The Street(グループショー)
参加Artists:Dragon76、COOK、TadaomiShibuya、Gravityfree、KensukeTakahashi、TOKIO AOYAMA、WOOD、LuiseOno
会場:MEDEL GALLERY SHU(日比谷・帝国ホテルプラザ2F)
会期:2021年4月13日(火)〜4月25日(日)
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