【RICE FIELD FES.レポート】 熊本と福島が「お米」で結ばれる。安心と安全が結ばれる日へ。

2019年6月末に熊本の田んぼで行われた田んぼ。数ヶ月が経過し、田んぼは黄金色に変わっていた。参加者が手刈りし、天日で干されたお米。1月には福島・南相馬のよつば保育園に、そのお米は届けられた。

文 = 宙野さかな  
写真 = 宇宙大使☆スター(熊本)/宙野さかな(福島)


2019年11月9日 熊本

 東田トモヒロさんが東日本大震災後に立ち上げたCHANGE THE WORLDが2019年春にスタートさせたRICE FIELD FES。東田さんの地元である熊本で田植えをし、稲を育て、稲刈りし、天日で干す。そしてそのお米を福島南相馬の幼稚園に届ける。熊本と福島をつなぐプロジェクトだ。11月に稲刈り会が開催された。(6月に行われた田植えのレポートはこちら。)

 雨続きの6月に泥の田んぼに入って手で植えられたお米は、元気に育っている。稲刈りした日は快晴。絶好の稲刈り日和となった。田んぼからは、遠くの阿蘇の姿も見える。稲刈り時期の田んぼは「黄金色」と表現されるけれど、黄金色が風によって揺れる景色は、豊かな秋の実りを感じさせてくれる。

 稲刈り会には、小さな子どもも含めおよそ70人が参加した。鎌を手に、分けつし大人の足首くらいの太さになった稲の株を根本からザクっと刈っていく。刈った株4〜5つを藁で束ねていく。稲の刈り方と藁の束ね方を教えてくれたのが、熊本の発酵農園のジャー村さん。古くからの農業には当たり前に存在していた再利用の智慧がそこにもある。その稲の束を、竹で組まれたハザ掛けに掛けていく。かつては多くの農家が、自分の家用のお米は天日干しにしていた。太陽の光と風によって、お米のおいしさがさらに深くなるに違いない。

 小さなお子さんも、稲刈りを楽しんでいる。炊き上がった白いご飯を食べるときに、子どもたちが、この田植えや稲刈りの体験を思い出すかもしれない。食べることを体験で学ぶ。これもRICE FIELD FESのミッションのひとつだろう。

 東田さんがアンバサダーを務めているKEENは全面的にこのプロジェクトに協力。6月に続いてブースを設け、シューズのチャリティ物販やTシャツプリントのワークショップを行った。

 午前中で、およそ一反五畝になるRICE FIELD FES田んぼでの作業は終了。野菜いっぱいのだんご汁とおにぎりを食べた後、田んぼに建てられたティピの前で東田トモヒロさんのミニライブが行われた。


2020年1月22日 福島・南相馬


 およそ一反五畝の熊本の田んぼで、手植えで育て、手刈りで収穫されたお米は270キロになった。RICE FIELD FESの中核メンバーであるのはら農研塾から寄付された30キロをプラスして、計300キロが、福島県南相馬のよつば保育園に届けられたのは1月22日のこと。東田さんがこだわったのが「自分たちで運ぶこと」だった。運送会社を使って届けるのではなく、届けることによって、実際に熊本と福島がつながる。その気持ちに賛同して、福島に一緒に向かったのがKEENアンバサダーのGravityfreeと、東田さんのアルバムをリリースするフタバフルーツ。

 福島第一原発から25キロの距離にあるよつば保育園。震災直後は「基本的に子どもは住まないほうが望ましい」とされた地域にあり、休園となった。原発の北側に位置することから、放射線量がそれほど多くなかったこともあり、原発事故の同年9月に避難準備区域から解除されたことによって再開。東田さんは、その年の12月によつば保育園をはじめて訪れた。そしてCHANGE THE WORLDを立ち上げた。

 300キロのお米を園児に渡す。よつば保育園の近藤能之先生によると、このセレモニーも子どもたちの教育のひとつなのだという。その後、東田さんのミニライブ、Gravityfreeのお絵描きワークショップが行われた。給食ではフタバフルーツが5種のフルーツセットをデザートとしてプレゼントした。

 よつば保育園では、給食などに使う食材は、今も県外産のものを使い、しかも線量検査を行っている。

「俺の夢のひとつって、CHANGE THE WORLDの活動を終えるっていうこと。CHANGE THE WORLDがやっていることが必要とされなくなること。福島に食べ物を送らなくていいという状況。安全な地元のものを、安心しておいしく食べられるっていうことが一番なわけだから」と東田さん。

 2020年も6月から2年目のRICE FIELD FESが動き出す。

東田トモヒロ 

 1972年生まれ熊本市在住。ニューヨークでのレコーディングを経て2003年にメジャーデビュー。旅とサーフィンとをこよなく愛し、音楽を通して『LOVE&FREEDOM』をメッセージし続けるシンガーソングライター。自然に寄り添った暮らしや、旅の中から紡ぎ出される飾り気の無い等身大の楽曲は、全国各地においてたくさんのファンを魅了し、長く愛され続けている。2020年には通算15作目となるアルバム「LIGHT」をリリース。配信限定で5月にニューシングル「風になれたら〜Stay Home,blues〜」を発表。「いまの気持ちを素直に書いたらこうなりました。音楽を愛する人々の暮らしの持続化のため、スピード感を持ってこの曲を給付いたします。」と東田トモヒロ。

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