綿密な鍛錬と構成から生み出される舞台での統一された様式美。即興はそんな鼓童の伝統から逸脱するものなのかもしれない。鼓童という自負を持ちつつ、外部のアーティストたちともセッションする3人のメンバー(中込健太・住吉佑太・木村佑太)による対談。
文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi 写真 = 鼓童 photo = kodo
この対談で参加してもらっている3人は、鼓童とは別に他のアーティストとライブや作品でセッションもなさっています。そのひとつひとつのコラボレーションが、鼓童とは違うベクトルのように感じています。どのようにして他のアーティストの方々とのセッションがはじまったのですか。
中込 黒田征太郎さんと中村達也さんのライブを見て、すごい食らってしまったんです。「こんな人たちがいるんだ」という衝撃。当時、鼓童でどうしていいのかわからずに悩んでいたんです。おふたりが即興で描いたり叩いたりしているのを見て、シンプルなんだけど広がっていく世界を感じて。ライブが終わって、そのまま楽屋に突っ込んで行ってしまって(笑)。それで2015年の「アースセレブレーション(EC)」で一緒にやらせてもらうことになったんです。それが自分にとってのはじめての即興セッションでした。
ドラムの中村達也さんと中込さんは、去年と今年に一緒にライブをしています。
中込 「EC」の後も、ずっとやりたいと思っていたんですけど、なかなか実現できずにいました。自分も40歳になるから、違うことをやろうと思っておふたりに話して。それで黒田さんとは九州の展覧会で、達也さんとは東京のライブハウスでセッションさせていただきました。鼓童では、個人でやるってことがほとんどなかったんですよね。達也さんに「健太は人に合わせるすぎるから、音なんかに合わせるな」って言われて。本当は何をしたいんだろうっていうことを10年間考えていた俺に、「自分の音を出してりゃいいんだ」みたいなことをさらっと教えてくれた。人のためっていうよりも、自分のために叩いてみたいなって思ったんです。
住吉 僕も、もともと即興も好きだったんです。自分ひとりでどこまでやれるか試したいっていう気持ちも芽生えてきて。2015年に「アメリカにでも行っとくか」って勝手に思いついて、当時の社長に「アメリカに行きたい」って相談したんです。そしてひとりアメリカツアーみたいなことをしたんです。カリフォルニアやニューヨークなどで、いろんな人とセッションして。この旅が、ひとりで何かやるっていうことの最初のステップでしたね。
太鼓は自分でアメリカに持って行ったのですか。
住吉 現地で調達しました。それもいい経験でした。そこにあるもので自分を表現する。絶対っていうものは自分のなかにあって、例え何を叩こうが自分を表現できないとなってすごく思いましたね。その思いが健太さんとのケンタタクユウタタクにも繋がっています。いろんな方と即興をやるたびに、いまだにいろんな発見があります。自分の感覚も変わっていきますしね。鼓童の舞台でも、即興を多用した作品を作っています。
木村 鼓童では篠笛を吹いているのですけど、自信が持てないままの状態が続いていました。自分が任された演目はそつなくこなせるようになってはきているのですけど、いっぽうで「自分はどう評価されているんだろう、どういうふうにおもしろがってもらえるんだろう」って思ってたんです。あるとき飲み屋で、「あらかじめ決められた恋人たちへ(あら恋)」の池永(正二)さんを紹介してもらって。池永さんが「君のために一曲作るよ」って言ってくださって。そこからあら恋とのコラボがスタートしたんです。
それがデジタル配信された「火の子」ですね。3月にはあら恋のワンマンライブにもゲストで出演なさった。
木村 そのライブのときに「笛って爆発力みたいなものはないけど、君自身の魂が音に乗り移ってきてすごいおもしろいね」って言ってもらえたんですね。鼓童では笛は当たり前にある楽器。けれど他では異質にもなるし、おもしろがってもらえる楽器なんだなって。あら恋のファンのみなさんにも受け入れてもらえた。セッションとまでは言えないのですけど、他のアーティストの方と演奏することによって、自分が出している音の個性に少し自信が持てたというか。
他のアーティストの方とセッション、あるいはコラボしたことによって、見えてきたこととはどういうものでしたか。
中込 自分がどういう音を出したいのか。音を楽しいと思えているのか。自分の気持ちに素直にならなきゃと思いましたね。外の人だけではなく、鼓童のメンバーとも、一緒にやるときは対等なコラボレーションなんだなって。今を生きているひとりの人間として、鼓童の先輩だろうが後輩だろうが、一緒に今感じている気分で作ろうよっていう気持ちになりました。
住吉 最近になってすごく思うのは、即興はやったほうがいいっていうこと。理由はふたつあって、ひとつは録音や再生の技術はどんどん上がっていくから、あと数年もすれば「生で聞くより音はいいぞ」みたいなタイミングが来ると思うんです。いつでもある程度のクオリティが見られるっていうことが鼓童の良さでもあると思うんですけど、果たしてそれでいいのかなって。毎日ちょっと違うみたいな、ある部分では再現性の低さみたいなものが大事になってくる時代が来るんじゃないかと。もうひとつは、即興って非言語コミュニケーションだと思うんです。今って、なんでもかんでも整理しなきゃいけない時代というか、ちょっとでもわからないことがあったらAIに聞いてしまう。整理する、簡潔にする、一元化する。本来、物事ってそれとは逆で、複合的で多元的なものだと思うんですね。即興は多元的なもの同士がやり合うしかないっていうか。整理している時間もないし、考えている時間さえない。常に瞬間の連続なんですね。その表現が、これからの時代にはより必要になってくるんじゃないかなって。プロのミュージシャンなのだから、超うまいのが前提で、そこから何ができるか。この意識を、鼓童にも還元していきたいって思っています。
木村 住吉から一昨年くらいから「即興もやってみたら」って言われていて。それを自分でも組み込んでいるんですけど、単純に地力がつくなって感じています。最初は、こういうふうにしようってざっくり道筋を立てていたんですね。今は終わりに向かえるようになった。いつかは自分で終わりを作れるぐらいになりたいですね。
今年の「EC」のハーバーコンサートでは、中込さんは初日、木村さんは最終日の演出をする。住吉さんは中日の演出補佐。どんな時間にしていきたいと思っていますか。
中込 実は初日もコラボなんです。三宅島芸能同志会さんは、鼓童に三宅太鼓を教えてくれたお師匠さん。その息子が僕と研修所の同期。鼓童のメンバーにはならなかったんですけど、研修所から20年を経てまた一緒にやる。ただただ男たちが太鼓を叩き合って、プロレスの試合みたいな舞台(笑)。それをフェス仕様にして「ハッピーサマードンドン」を合言葉にして盛り上げます。
住吉 (野仲)純平がいろいろ演出を考えてくれています。モンゴルのフスグトゥンの音源を聞いていると、音楽性に富んだ人たちだなと思っていて。モンゴルの広大な草原を感じさせてくれるような気持ちいいところから、土着的な、超民族的なグルーブみたいなものも「EC」ではやりたいなって思っていて。純平に曲を作っていいと言われたので、超やばい曲を作ってますよ(笑)。
木村 3 年連続でハーバーコンサートの演出をやらせてもらうんですけど、去年までの2回は自分が思い描いていたことをやっていたんですね。けれど今年は、太鼓って言ったらこれ、「EC」って言ったらこれ、最終日ならこれっていうような、誰が見ても最終日にふさわしい内容に仕上げていこうと思ってます。この夜を「Onwards」っていうタイトルにしているんですけど、弾みをつけるっていう意味なんですね。「EC」は2027年が40回目。来年に向けて弾みをつける。期待感をあおる。2026年の最終日から来年に向かってつながっていく。それを感じられるような3日間にしたいと思っています。
1988年が初開催で今回が39回目。佐渡(ローカル)から世界(グローバル)に向けて
発信し続けている鼓童による太鼓カルチャー。「佐渡で地球はひとつになる」がテーマ。
ハーバーマーケットや数々のワークショップなど、ライブ以外の楽しみもここだけの魅力。
開催日:8月21日(金)22日(土)23日(日)
会場:佐渡島小木(新潟県佐渡市)
出演:鼓童、三宅島芸能同志会、Khusugtun、ほか
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