【Mei Semonesインタビュー】繊細さのなかのインディー・ジャズ。

2025年の〈フジロック〉で、5人編成のバンドとしてはじめて日本でライブをしたメイ・シモネス。繊細で多様性のある音楽を聞かせてくれた。母親が日本人で日本語も堪能。歌詞は日本語と英語で書かれている。ジャズをバックボーンにしながら、さまざまな音楽が内包されている。


文・写真= 宙野さかな text & photo = Sakana Sorano


––– 音楽をはじめたきっかけはどういうものだったのですか。

 私が4歳のときに、おばあちゃんがピアノを買ってくれたんです。そしてピアノのレッスンがはじまって。

––– 最初はピアノだったのですね

 クラシックピアノでした。11歳になってギターにスイッチしました。

––– 〈フジロック〉のライブでもギターでしたし、ギターに弾かれたんですね。

 今は全然ピアノを弾いてないんです。11歳になってからはギターしか弾かなくなりました。

––– ギターのどんなところに魅力を感じていたのですか。

 単純にかっこいいと思ってしまったんだと思います。ギターを弾きたいと思ったきっかけは、『バックトゥザフューチャー』っていう映画があるじゃないですか。この映画で主人公のマイケル・J・フォックスが、部屋でチャック・ベリーの曲を弾くシーンがあるんです。そのシーンを見て、「エレキギターってかっこいい」ってなぜか思ってしまって。それでエレキギターを弾きたくなってしまったんです。

––– 歌はいつ頃から作っていたのですか。

 中学生の頃に、一応作曲はしていました。ロックっぽい曲もあったし、ポップな曲も多かったですね。大学2年のときに、ジャズの影響が強い曲を作ったんです。それが最初にリリースした「Hfoas」という曲です。

––– 大学はボストンのバークリー音楽大学でしたよね。

 そうです。高校の頃は、もう音楽しか興味がなくなっていたんです。音楽以外にやりたいことは何もなかったし、音楽じゃなきゃダメだとさえ思って。それでバークリーに行くことを決めたんです。

––– 音楽にのめり込んでいった高校時代は、どんな音楽をよく聞いていたのですか。

 ジャズに集中していました。マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、チャーリー・パーカーとか。

––– 確かにジャズのニュアンスも〈フジロック〉のライブでは感じられました。そのライブでは、5人のバンドなのにバイオリンとビオラがいる。ちょっと変わったというか、おもしろいバンド編成なんですね。

 ビオラを弾いていたのがノラっていうんですけど、ノラが「Hfoas」をプロデュースしてくれたんです。レコーディングとかミキシングもすべてしてくれました。私はストリングスを入れるつもりがなかったんですけど、「ストリングス・アレンジメントを最後の方に入れてみたらどう?」ってアイデアを出してくれて。それでやってみたら、私の曲とマッチして。それからライブでもストリングスが入るようになったんです。

––– ライブでビオラとバイオリンというふたりをメンバーにしたのも、ノアさんのアイデアだったのですか。

 ノアがストリングス・アレンジメントを作ったときは、ノアひとりがビオラを弾いて、バイオリンの音に変えたり、チェロの音に変えたりしていたんです。けれどライブでは、ひとりじゃなくそれぞれのパートに別のメンバーがいた方がいいってことになって。初期はチェロのメンバーもいた6人編成だったんですよ。

––– 「Hfoas」がリリースされたのはコロナ禍の2020年でした。いわばライブができなかった時代。そんな時代背景もあって、作品を発表したいと思うようになっていたのですか。

 バークリーだと、周りのみんなも自分の音楽を作ってリリースしていたんですよね。だから私もやってみようと思っただけで。自然な流れでした。

––– バークリーではいろんな刺激もあったんでしょうね。

 今のバンドメンバー全員がバークリーなんです。みんなとそこで出会えたのが一番の宝物ですね。もしバンドメンバーに出会えてなかったら、今の音楽を作っていないと思います。私が思いつかないことも表現してくれるから。

––– 「Itsumo」とか「Kabutomushi」とか日本語をタイトルにした曲も多い。歌詞は日本語と英語のどちらが多いのですか。

 どっちが多いかな。半分半分くらいだと思います。ほとんどが日本語でちょっとだけ英語が入っている曲もあるし、ほとんどが英語で日本語がちょっとだけ入っている曲もあるし。

––– この曲は日本語の歌詞にしようとか、自然に決まるのですか。

 なんか自然と決まりますね。頭に浮かんできた言葉をそのまま書いている感じ。ときどき、日本語の言葉がこのリズムに合わないっなって感じたら英語の言葉に変えたりはしますけど。それとは逆に、英語の言葉がはまらないなって思ったら日本語にしたり。

––– 〈フジロック〉のライブはどうでしたか。

 すごく楽しかったです。たぶん今までの自分の人生のなかで、一番大きなライブでした。人が多いなって思いながらライブしていました。他にいろんなステージでライブをやっているのに私を見に来てくれて、すごくうれしかったです。

––– すごく優しい気持ちになれたライブでした。

 ありがとうございます。

––– 自分の音楽はどういう音楽だと思っていますか。

 いつも言っているのは、ジャズに影響を受けたインディーズ。

––– 1月には初の日本ツアーが待っています。

 私もすごく楽しみにしています。

Mei Semones

アメリカ・ミシガン州生まれ。4歳でピアノをはじめ、11歳でエレクトリック・ギターに転向。高校卒業後、バークリー音楽大学でジャズギターを学んだ。2025年5月にデビューアルバム『アニマル』をリリース。〈フジロック〉への出演も果たした。12月に7インチシングル「Kurayami / Get Used To It」をリリース。26年1月には初の来日ツアーも決定している。


Japan Tour 2026

01.20(火) Zepp Namba(大阪・難波)Supporting:MEN I TRUST

01.21(水)DIAMOND HALL(愛知・名古屋)Supporting:MEN I TRUST

01.22(木) 東京ガーデンシアター(東京・有明)Supporting:MEN I TRUST

01/23(金) duo MUSIC EXCHANGE(東京・渋谷)※SOLD OUT

01/24(土) Live & Lounge Vio(愛知・名古屋)※SOLD OUT

01/25(日) Shangri-La(大阪・梅田)※SOLD OUT

01/27(火) HIROSHIMA CLUB QUATTRO(広島・広島)

01/28(水) FUKUOKA BEAT STATION(福岡・福岡)

01/30(金) 桜坂セントラル(沖縄・那覇)

02/01(日) duo MUSIC EXCHANGE(東京・渋谷)追加公演 ※SOLD OUT


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