かつてフィールドオブヘブンで出店し、食からヘブンをヘブンらしく彩っていた縄。恵比寿から長浜に移っても、味と笑顔の再会を求めて、多くの人が集っている。
文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi 写真 = 佐藤 元紀 photo = Genki Sato
ー恵比寿で縄をはじめたきっかけってどういうものだったんですか。
かよ 友だちと広尾で「陽炎苑(かげろうえん)」っていう隠れ飲み屋をやってたんですよ。週2日だけのオープンで、飲み放題3000円。その頃から、次はお店を出したいなって思っていて。そこにも来てくれていたある会社の社長に「お店やりたいんです」って言ったら、「いいよいいよ、お金出してあげるから」って言ってくれて。
きくりん バブルの余韻が残っていた時代だったね。
ースポンサーがいらしたんですね。
かよ そう、ビッグスポンサー。頭のなかに浮かんでくるものを、あんな感じがいいかな、こんな感じもいいなって話していたんです。そんな話の流れのなかで、「物件を借りるのはもったいないから、土地を買って建てたらどうですか」って口にしたら、「いいよいいよ」って。「かよちゃん、お店は10年は絶対に続けてよ」とも言われて。
ーそれが恵比寿の縄になったんですね。
きくりん 古い家が建ってたんだけど、それを壊して更地にして。建築まで時間があったんで、その場所を遊ばせておくにはもったいないってことで、更地にティピを建てて、ティピだけの飲み屋をやってたの。かよ ティピの外に赤い提灯がひとつだけぶさ下がっているお店。ティピのなかで焚き火をして、その火で焼いたものを出したりしていたんですよ。
ーかなり目立っていたというか、不思議がられていたかもしれないですね。90年代には、ティピはそれほど認知されていなかったでしょうし。
かよ 大久保にパオの店があったのね。それに衝撃を受けて、ティピがあるお店にしたいなって思ったの。庭があって、そこにティピがある。ネイティブ・アメリカンの世界観。だから建物はアドビにしたかったし。
ーそれもリクエストして建ててもらったんですね。
かよ 店の名前も「縄」にして。縄文の縄。それでコンセプトっていうか、イメージが決まったんですよ。自然のものを大切にしたいと思ったから、レンジを使わずに、全部手作りのものを出すっていう。
きくりん 好きなものを全部入れて。桜の木もあったしデイゴの木もあった。
ー竈もありました。竈で炊いたご飯のおにぎりが縄のイメージでしたから。
かよ とりあえず19時半になったら竈でご飯を炊く。これがルーティーン。
ーイベントやライブもよくやってましたよね。
きくりん 最初は下村誠っていうシンガーでありライターの人がいて、彼がイベントを持ってきてね。セブンジェネレーションの連中も来てたし、ナナオサカキも泊めてくれって来てたし。
ーそんな人たちが恵比寿の縄に集まるようになったのは、〈フジロック〉のフィールドオブヘブンへの出店も関係していたのですか。
きくりん 〈フジロック〉に行ったり〈朝霧JAM〉に行ったりした人たちが、東京に帰ってきたら縄に寄ってくれたの。コンクリートジャングルに疲れたって言って。
ーヘブンには何年くらい出店していたんですか。
きくりん 5年くらいかな。
かよ 当時は〈朝霧JAM〉や〈ワンラブジャマイカ〉とか、いろんなフェスに出ていたから。「遊びたいから行こう」っていう感覚で。
ー恵比寿の縄は、何年やられていたんですか。
きくりん 1998年11月にはじめて2008年2月に閉めて。
ー次の場所として長浜はすぐに決まったのですか。
きくりん 長浜に決めていたわけじゃないのよ。恵比寿で10年やって、沖縄か伊豆で、小さい店をやろうと決めてたんだけど。かよちゃんのお父さんの体調が悪くなって、何度か長浜に見舞いに来るうちに、「長浜もいいじゃん、琵琶湖も近いし」って思うようになって、「じゃあ、ここにするか」って。
かよ どこかではやろうって思ってたよね。自分たちがご飯を食べていく手段は、お店をやるしか考えられなかったら。
きくりん 長浜でって決めたのはいいけど、いい物件はなかなか見つからなくてね。当時はハチ(店長の犬)がいたんだけど、かよちゃんとハチと僕の3人で、毎日ぶらぶら散歩していた。周りの人からは不審に思われたかもしれないね。そしたらある日、こんな古民家の物件が空きましたよって連絡が入って。その物件を見に行って、あっという間に決まっちゃって。小さな店をやろうと思ってたんだけど、恵比寿より大きくなっちゃった。
ーそれが築100年近い、ここ。
きくりん もともとは金持ちの旦那が、町一番の棟梁を使って、おめかけさんのために作った家。細部まで、すごい凝ってるからさ。
ーメニューは恵比寿時代から変わっていないんですか。
きくりん 恵比寿から、かよちゃんの自己流。かよちゃんは料理が趣味だから。料理の先生は近所に住んでいるおかんだけ。
かよ 飲むのが好きだから、酒のつまみっていう感じで。自分が食べたいと思っているものを作っているだけ。
ー恵比寿時代に開催されていた〈縄の市〉は長浜でも続いていますね。
きくりん 今は2年に1度にしたけど。長浜での縄の市も、出店してくれる多くは恵比寿時代の仲間。手作りでものを作っている人間も、縄には多く遊びに来てたから。みんなとのいい関係が続いている。
ー場所が変わっても、いい関係が続いているということが縄の魅力なんでしょね。ふたりにとって縄はどんな存在ですか。
かよ みんなが集まるところだよね。
きくりん そのことは恵比寿時代から変わんないかな。おもしろいやつが集まってくる場所。
長浜の縄
東京・恵比寿で1998年にオープン。〈フジロック〉フィールドオブヘブンや〈朝霧JAM〉などにも出店。10年で恵比寿の店を閉め、滋賀・長浜で築100年近くの古民家をリノベーションして再始動。2年に1度のペースで春に「縄の市」を開催。次回は26年4月12日(日)に開催。不定期にライブも行われている。@nagahama78
縄の市
開催日時:4月12日(日)10時〜17時
会場:長浜の縄
出店:Art Life Lab Yoichiro&Erika(北海道)、みつめ処(長野)、山ノ音光(長野)、DOWN ON THE CORNER(東京)、井上ヤスミチ(東京)、須賀キヨミ(東京)、Happy Buddha(伊豆)、真珠子(富山)、こいえあかね(常滑)、ムラカミ座(長浜)、PocaPoca(鍛冶屋)、Morning Dew Farm(神戸)、CHiQ(淡路)、ネコライオン(今帰仁)、縄ごはん(長浜)
縄の市LIVE
開演:18時〜
出演:かむあそうトライブ3
※縄の市は入場無料。縄の市LIVEは¥3,000+1ドリンクオーダー
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