今年のフジロックで初来日したPARLOR GREENS(パーラー・グリーンズ)。ファンク、ソウル、ジャズをベースにしたインスト・オルガン・トリオ。メンバーはティム・カーマン(Dr)、アダム・スコーン(Org)、ジミー・ジェイムス(Gt)の3人。それぞれが様々なプロジェクトを経たことで培われてきた感性とテクニックが、パーラー・グリーンズとしてひとつの音の塊になる。どんな経緯でバンドがスタートしたのか。3人で演奏して生み出されるものとは何か。そんな話を苗場で聞いた。
文・写真 = 菊地 崇 text・photo = Takashi Kikuchi
––– まず結成のいきさつから聞かせてください。
ティム・カーマン 僕らはそれぞれ違うプロジェクトやバンドで活動してたんだ。ある時にオハイオにあるコールマイン・レコードのテリー・コールと、オルガン・トリオをやりたいって話をしていたんだ。その話が進んで、アダムとジミーの3人でプロジェクトをスタートすることになった。そして一緒にスタジオに入ったんだ。それが2023年4月のこと。セッションをはじめて10分くらいで「West Memphis」が生まれてしまったんだよ。
––– 最初に3人でやってみて、どんな感じがありましたか。
ティム 一言で言えば「イージー」。前からふたりのプレイを知っていたこともあって、すぐに打ち解けて、楽しく演奏することができた。それが良かったんだと思う。
––– 誰かが中心になってパーラー・グリーンズをスタートさせたというよりも、3人のセッションが最初にあったということですか。
ジミー・ジェイムス そう。レコーディングなどの、いわゆるステージではないフィールドでの活動は、みんな均等で、誰かがメインになってやってるわけじゃないんだ。それぞれが自分の音を出すことで、バンドの音として成立させている。ジャムセッションをやることで、自分が引っ張っていくこともあれば、ドラムのティムがグルーブを上げていってくれることもある。誰の指示でもなく、3人の自然なスタンスで、最初から気持ちよく演奏できたんだよ。
ティム それがこの3人の1番のポイントなんだろうね。3人が等しくて、均等にみんなが同じテンションでやれるっていうこと。
アダム・スコーン ただステージではやっぱりジミーがメインで動かしていくことが多い。バンドを、そして会場全体を盛り上げていくっていう役割を果たしてるんじゃないかな。
––– ライブではジャムが中心になってるのですか?
アダム 3人それぞれが音楽的背景というか、音楽のヒストリーがあって、その知識もある。それを自分の音として表現するテクニックやフィーリングも持ち合わせている。ライブでも3人の個性を融合させて展開させていく。それがライブで目指しているところなんだ。その意味では、演奏していてすごくスリリングな瞬間もある。もちろんライブなので、その場でいい感じでジャムするっていうこともあるんだけどね。
––– ライブで1番大切だと思ってることは?
アダム ショー自体のエネルギーを1番大事にしてるね。そのときそのときの盛り上がりであったり。もちろんお客さんの反応っていうのも気にしているし、それも交えてのエネルギーだったりもするんだけれども。
ティム お客さんの反応も含めて自分たちの音楽をすごくよく聞くようにしてる。お客さんの反応から生み出されるものもあるし、自分たちの内面から浮かび上がってくるものもあるし。こういうタイプではないプロジェクトにいたこともあるので、瞬間瞬間に何かが生み出されていくっていうことがすごく新鮮で、それを大事にしているね。
ジミー ショーってサーフィンしてるみたいなんだ。水面に浮かんで波まで泳いでいく。そして自分の波を見つけて、波のトップに乗っていく。そこからは波に任せて一体化する。それと同じように、すべてのライブに流れがあって、その流れをものすごく大事にしているんだよ。
––– フジロックの前夜祭が日本での初のライブでした。
アダム 出演者の発表が直前だったにも関わらず、ものすごく盛り上がってくれた。オーディエンスの反応がすごくダイレクトで、自分たちもすごく楽しんで演奏ができたから。
––– その前夜祭のセットリストはどうやって決めたのですか。
ティム いつもは最初の2〜3曲を決めるだけで、あとは流れに任せるでというスタイルでやってるんだ。フジロックの前夜祭は、30分という短い時間だった。そんな短いライブはやったことがなかったから、日本でのはじめてのライブだし、セットリストを決めるのはちょっとハードだったんだけどね。パーラー・グリーンズを紹介するという思いも込めて、新しい曲も入れたセットリストを最終的には決めたんだよ。
––– フィールドオブヘブンでは1時間のライブでした。
ティム 1時間あると演奏の自由さはより増すね。
––– 1時間のライブでは何曲ぐらいになることが多いのですか。
ティム 8曲から10曲ぐらいにしたいとは思っている。
アダム 1曲が長くなってしまうこともあれば、短い曲も繋いでいくこともある。きっと流れで決まっていくんだろうな。
––– フェスと単独コンサートでは、パーラー・グリーンズのライブでは何か違いはあるのですか。セットリストが変わるとか。
アダム 個人的には、フェスであろうと単独公演であろうと、ショーには変わりはないと思っているよ。
ティム 日本での単独ツアーがフジロックから3ヶ月先になるので、実際にやるまでには、いろんなことを考えたりとか、試してみたり、生み出されると思う。前夜祭ともヘブンの1時間とも、違った感じになると思うね。個人的にはフェスだから、単独のショーだからといって、何かを変えたり、違うようにしてやってる意識はないけど。
アダム 新しいアルバムを制作中なんだ。新しい曲もセットに加えていくってことはあると思うけどね。
––– いろんなフェスに出てると思いますけど、フジロックの印象はどうですか。
アダム 前からフジロックでプレイしたいって思っていたんだ。夢が叶ったよ。
ティム 今までやったフェスの中で、もっとも好きな時間になったね。もちろんフェス自体も素敵だし、いいフェスだし。とてもよくオーガナイズされてるので非常にプレイしやすかった。
––– 制作中という新作のことをお聞きしたいと思います。テーマとかコンセプトを決めてスタジオに入っているのですか。
アダム それぞれが音楽に対しての深い知識もあり技術もある。それをもっと追求して、もっともっと深いところまで到達したうえで、逆にそこから新しい何かを生み出せればいいなと思っているんだ。その到達点がどういうものなのか。自分たちでも楽しみにしているね。
ティム 前のアルバムと極端に何かが変わってるっていうことはないと思う。最初のアルバムを作ったときは、まだツアーに行ったりライブをしたりっていうのはない状態だったんだ。スタジオに入って、セッションして生まれた3人の音。次の新しいアルバムは、数年にわたって一緒にやってきて、ツアーもしてきたなかで制作に取り掛かっている。この何年かの経験によって、違ったケミストリーが起こるだろうし、前のアルバムとは違う何かが生まれるんじゃないかな。
––– ライブをどんな時間にしたいと思っていることが多いですか。
ジミー バンドのタイプ的にもそうなんだけれども、こういうふうにしたいとか、ああいうふうにしたいとかっていうことはないんだ。とにかくフィーリングとモーメントに任せる。その場の空気を大事ににすることが一番だと思っているから。
––– それがライブの本質なんでしょうね。そこでしか味わえない一期一会の体験がライブですから。
ティム ショーで演奏することで、自分たちが楽しめることはわかってるんだ。それをさらに膨らませて、みんなも楽しめるショーにしていこうっていう気持ちを持っているよ。
––– 3人の音楽って言葉で表すと何になると思いますか。
ティム インストゥルメンタル・ソウル・ミュージック。
アダム それぞれが違うエレメントを持っていて、技術も知識もある。それを一言で表すのは、かなり難しいよ(笑)。
––– やはりインストにはこだわっていきたいのですか。
ジミー この3人でいる限りはね。
アメリカ・オハイオ州をベースとしファンクやソウルやジャズ好きから絶対的な支持を集める良質な音源をリリースし続けるCOLEMINE RECORDSが解き放ったオ ルガン・トリオ。2024年にデビューアル バム『IN GREEN / WE DREAM』をリリース。今年のフジロックでは前夜祭とフィールドオブヘブンでライブ。現代最強のオルガントリオと呼ばれる実力をステージで証明した。初来日ツアーも行われる。
11月5日(水)東京・渋谷 CLUB QUATTRO
11月6日(木)大阪・梅田 SHANGRI-LA
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