2022年、〈橋の下世界音楽祭〉が4年ぶりに開催された。束縛されることのない自由に満ちた時間。オーガナイズされるのではなく、参加する人たちの意識で村が形成されていく。コロナ禍によって集うことが制限され続けていた時間からの開放も、みんなが求めていたことなのかもしれない。
文 = 菊地 崇 text = Takashi kikuchi
写真 = 宇宙大使☆スター
2022年の〈橋の下世界音楽祭〉の開催発表に際し、主催するTURTLE ISLANDの永山愛樹は、ホームページで、こんな声明を出した。「この時代に生まれ落ちた我々にはコレからやらなければならないことはまだまだ沢山あるのだと思いますぜい。楽しむことをやめずに。そんな始まりのお祭りをしましょうよ。新しい時代のお祭りを!戦争より祭りを! 世界中を祭り尽くせ!!全世界お祭りコンバットのみなさん! お待せしました!! 天下御免の橋の下世界音楽祭。全身全霊で生命を祀ろうぞ!!」
この言葉に応えたい。2022年、この祭りだけにはどうしても参加しなければならない。そう思った人が、全国から豊田の「橋の下」に集った。
〈橋の下世界音楽祭〉は2012年にスタートした。トヨタスタジアム近くの豊田大橋の下に広がる堤防が舞台だ。ステージ設営から地盤整備まで、ほとんどすべてが手作りの祭りだ。電源も太陽光を利用したPersonal Energyのオフグリッドシステムを主電源に使い、この年から補助電源としてEV車やPHV車の蓄電が利用された。入場無料の祭りとして、年に1回の集いの場として継続していたものの、あまりに人が多くなったこともあって2019年は開催を断念。コロナ禍以降も開催されなかった。2021年は東京オリンピックの開会式の日に合わせて〈橋の下盆踊りンピック〉として行われ、ついに2022年復活開催された。
橋の下にある本丸エリア。ここにふたつのステージと櫓、そして横丁が設営される。昭和の街にタイムスリップしたかのような感覚を覚える。
そしてもうひとつの橋の下の顔と言っていいのが草原エリアだ。いろんな場所からやってきた「お祭りコンバット」が、それぞれの場所での自分の暮らしを〈橋の下〉に持ち寄って、数日間だけの自由な村を形成する。その村には衣・食・楽があり、タイムテーブルに載っていないライブがあったりもする。ただし勝手にそれぞれがやっているのではなく〈橋の下〉という調和がある。〈橋の下〉が国だとすれば、自由で平和な共和国に違いない。個人個人がしっかり存在し、その個人が集合することで成立する場。自立したひとりひとりが集う場が市だとすれば、〈橋の下〉の草原エリアはまさしく市に違いない。
〈橋の下世界音楽祭〉の根本にあるのは「伝統」と「世界」と「平和」。先達の智慧を受け継ぎ、今の時代に記し、次世代にバトンタッチしていくこと。ひとりでいると自分自身のちっぽけな思いはふらついてしまうことばかりだけど、ここに来て、同じ視線を持っている仲間がこれだけいるっていうことを再確認する。そしてつながることで、新たな希望が生まれてくる。
「参加するみなさん自身が考えこの祭りを成長させ、自分らの居場所を守っていただけたらこの先も続いていくのかなと思います。また、ここで感じたことを自分の場所へ帰ったら、何かしら日常にみなさんの暮らしに還元されたら何よりの本望です」と永山愛樹は声明でつづっている。
新たな時代の創造は、伝統と世界への視線から生まれる。
豊田市の「橋の下」が会場のDIYの世界音楽祭。2023年は遊牧民祭として山形県蔵王で地元スタッフとともに開催されたが、今年は豊田に戻って開催される。日本各地やアジアに根付いている大衆芸術をマツリのなかで混合させる。そこで生まれるのは唯一無二のものだ。
開催日:9月13日(金)~15日(日)
会場:豊田大橋下 千石公園(愛知県豊田市)
出演:TURTLE ISLAND、WINDY CITY(KR)、OBSG(KR)、INNER TERRESTRIALS(UK)、THA BLUE HERB 、大工哲弘 with 苗子+ 大嶋章 、切腹ピストルズ、T字路s、滞空時間 TAIKUH JIKANG、FREAKY MACHINE、サヨコオトナラ、GEZAN、OKI REKPO、江戸糸あやつり人形 上條充、幻燈座、ほか
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