【Momyインタビュー】自分の音楽を再探求する旅。

コロナ禍に湧き上がった、自分の表現を追求したいという思い。それを実現させたのがアメリカでのレコーディングだった。アメリカのミュージシャンと音楽をともにすることは、自分のルーツである音楽の探求とともに、表現者としてのスタンスの再確認でもあった。
文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi 
写真 = 須古 恵 photo = Meg Suko


–– 4月に初のソロアルバム『MEGA』がリリースになりました。

 アルバムを制作するにあたっての一番の大きなきっかけは、ニューヨーク在住のベーシストでありプロデューサーのNORI NARAOKAの言葉でした。彼が帰国した際によくセッションしていたんですけど、「準備ができていようがいまいが、とにかくアメリカに来い」と誘ってくれたんです。

–– ニューヨークに行きたいという思いは、ずいぶん前から持っていたのですか。

 ファンクという音楽をやっているミュージシャンなら、ほぼ全員が行きたいって強く思っているはずなんです。ただ自分は呑気だっていうか、あまり行きたいって思ったことがなかったんですね。モミーFUNK!を10年以上やってきて、バンドメンバーの一員としてのモミーとは別に、自分が主宰するソロのモミーとしての活動をしてみたいっていう気持ちが強くなってきていたんです。そのタイミングで、NORIさんからニューヨークの誘いがあって。

–– アメリカでのレコーディングに対して、クラウドファンディングをスタートさせて、みなさんに協力を仰ぎました。

 単純にお金を集めないと行けないと思って。それと宣伝も兼ねるっていう思いもありました。MOMYというバンドマンがソロプロジェクトを始動させたっていうことを多くの人に知ってもらいたい。だからクラファンが終わった今も、そのページは残っているんです。募ってもらうことはもうできないのだけど、みなさんが応援してくれたっていうことが僕にとっては大切なので。今も活動報告は続けています。

–– アメリカのスタジオに入ってみて、どんなことを感じましたか。

そもそも海外渡航がはじめてだったんですよね。ニューヨークでのレコーディングの初日はガチガチで、ほとんど気をつけ状態でした(笑)。演奏が終わった後に、みんなにガヤを入れてもらったんです。セカンドラインのマーチングっていうか、ファンキーなリズムの曲にいれてもらいました。そのガヤが素晴らしくて、それ自体が音楽なんですよ。僕は音源さえ聞いていれば、そこに近づいていこうとすればするほど近づいていけるんだと思っていたんです。その思いが初日であっけなく崩れた。彼らが20年とか30年とかかけて自分で得たものではなく、おじいちゃん、そのおじいちゃんと、連綿と続いているブラックという文化があるっていうことを実感したんですね。体内にあるリズムは受け継がれていて、それがそのまま音楽になっているというか。音楽の根幹にあるものっていうか。

–– 血の問題ということですか。

 受け継がれているっていうことが文化なんでしょうね。『MEGA』はほぼ全ての曲が違うメンバーなんです。 毎日違うミュージシャンがスタジオに訪れてくる。1日目がニューヨーク在住のニューオーリンズのミュージシャン、2日目がキューバ出身のミュージシャン、3日目がブルースマン。そのどれもがクオリティが高くて。ニューヨークとニューオーリンズの2都市でレコーディングしたんですけど、ニューヨークは突出した総合力の街だなって思いましたね。ニューオーリンズは4日間だけの滞在で、しかもマルディグラの開催中ということもあったのかもしれないですけど、圧倒的なパワーを感じさせてくれる街でした。

–– アメリカの滞在は3週間でしたっけ?

 そうです。アメリカに行こうと思わなかったのは、音源を聞いてさえいればっていう思いが強かったのかもしれないですね。レコードに収められているものがずべての答えだっていう。それはあくまで氷山の一角であって、水面下にある部分がものすごく大きいってことを感じて。それをできる限り、3週間で詰め込んだんです。

–– 確かに目に見えないもの重要なんですよね。それが大きいほど、提出されるものは豊かになるはずだし。

 僕は見える部分だけ、聞こえる部分だけで判断しようとしていました。日本に戻ってきてから、他の人と演奏するのがすごく楽になったんですよね。「ここだったらこうするはずなのに」っていうことをまったく思わなくなっちゃった。「お互いがお互いを受け入れて、そこからどうしていこうかっていうことがより大事だと思えるようになったんです。

–– 今、CDとなった作品を聞き返して、自分ではどう感じていますか。

 ひとつの集大成であると思っています。それは自分にとってでもあり、そして「MOMYはこういうビジョンを持っているよ」っていろんな道を提示してくれたプロデューサーのNORIさんにとっても。そのビジョンのいくつかは、アルバムのなかに入っているんですけど、まだここに到着していない自分もいるっていう感じなんですよ。NORIさんは「リリースライブが終わって、MOMYがどう思うのかが一番重要になる」とも言ってくれていて。レコーディングはプロセスでしかなく、リリースライブまで終えて、今回のプロジェクトについて何を思うか。それが自分でも楽しみなんです。

取材協力 = 樹下夢(武蔵溝の口)

Momy

ファンクに根差したグルーブでエンターテイメントを追求するパフォーマー。2010年よりモミーFUNK!名義でのライブ活動を開始し、現在まで2枚のアルバムを発表している。コロナ禍を経て、自身の表現を追求したいとの思いからソロプロジェクトを始動。アメリカでレコーディングした『MEGA』を今年4月にリリース。リリースツアーのファイナルが代官山の晴れたら空に豆まいてで8月3日に行われる。

Momy&The Mega「MEGA」Release Party

開催日:8月3日(土)

会場:晴れたら空に豆まいて(東京・代官山)

出演:[出演] Momy(Vo) 、Nori Naraoka(Bass, from NY)、鈴木郁(Dr)、山﨑麻里(Key)、田中充(Tp)、首藤晃志(As)、Mac福田(Gt)、エリック・オンリー(友情出演)


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