【BANDERASインタビュー】ストリート・サルサの旗のもとに集った11人。TOKYO発信の世界基準。


プエルリコやキューバのニューヨークの移民コミュニティーから発生したサルサ。決して大人のシャレた音楽ではなく、ストリートに息づくものだった。ストリート・サルサを取り戻す、そんな動きが世界同時発生的に生まれているという。TOKYOから発信されているストリート・サルサの現在進行形がバンデラスだ。


文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 須古 恵 photo = Meg Suko


–––– バンデラスは、どんな経緯で結成されたのですか。

萩谷嘉秋 中心になったのはピアノの小関一馬なんです。一馬くんがラテン・クンビア・ロカビリー・バンドみたいなものをやっていたんですけど、それを止めて、自分で何か新しくやりたいって浮かび上がってきたのがサルサで。一馬くんはキューバにも行っていて、キューバで知り合った仲間など4人でスタジオに入ることになって。

–––– その4人に萩谷さんも入っていた?

そう。こんな曲はどうって持って行ったら、けっこうそれが良くて。4人じゃ広がりがないからってメンバーを集めていったんです。

–––– そこでIZPONさんも加わることになる?

IZPONさんは最後のほうだったんですけどね。自分らでカッコイイと思える人たちしか集めたくなくて。技術先行ではメンバーにしたくないって思っていて。そう考えると、日本には本当にいないんだけど、そこは妥協せずに。

IZPON 単純にサルサバンドをやってみたかったから加入したんですね。だから次はこのバンドで行くぜっていうようなテンションではなくて。音楽を職業にしていなかったり、譜面を読めなかったりするメンバーもいるんだけど、集まってみたらみんなキャラが濃くて、それがバンドの個性であり、おもしろいバンドになっていくんじゃないかっていう予感もあって。

–––– サルサはニューヨークで生まれた音楽という認識ですが。

I 確かにそれは間違いないなくて、ニューヨークで生まれたサルサが、いろんなラテンの国に逆輸入で入っていった。キューバン・サルサもあればプエリトリカン・サルサもあれば、パナマにもコロンビアにもサルサがある。

大元になったのは、キューバのソンっていう音楽。ソンがずいぶん昔にブレイクして、カリブ海や南米の国に入って行った。そのうち、ニューヨークに渡ったプエリトリカンたちがはじめたのがサルサ。日本では80年代後半から90年代前半に、サルサロマンチカというキラキラしたサルサが人気が出て、それを今も引きずったイメージとしてもたれていて。

I ニューヨークで生まれたサルサは、もっとストリートのものであり、ゲットーのものだったんですね。生きていくための怒りやフラストレーションなども入った音楽だったんだけど、だんだんラグジーロマンチック感ばかりが強くなっていってしまって。

–––– バンデラスではどんなサルサをやろうとしているのですか。

70年代から80年代のニューヨークが持っていた危うさとかっこよさ。ファニアオールスターズが持っていた熱量とか輝きとか、そういうものを今の時代感でできないかなって。ガレージ・サルサって言えばいいのかな。そう思ってやっていたら、同じような気持ちでやっているバンドが海外にもチラホラいるんです。

I 世界的にもパンクやヒップホップ、クラブミュージックを通過した世代が、初期のサルサがかっこいいよねっていう感じでやっていて、ちょっとしたムーブメントになっているみたいんなんです。バンデラスの音をインターネットで公開したら、スイスのレーベルからシングルでリリースしたいとかコロンビアからライブのオファーがあったり、世界中からアクセスがあって。

–––– それではバンドとして目指しているものは?

I 悪くてかっこよくてレベルミュージックであること。そこは絶対に存在していつつ、レベルミュージックということに興味がない人が聞いても、音楽として納得させられるものを作っていきたいって思っています。

サルサの認知度って、日本では低いんですね。今の日本では聞くことの少ない音楽かもしれないんですけど、本当はかっこいい音楽なんだっていうことを伝えたいんです。いろんな要素があって、いろんなことをやっていて、エネルギーの渦がライブでは感じられる。サルサは絶対に最高に魅力的な音楽なんですよ。

–––– 8月にファースト・アルバムがリリースされました。

I クラブミュージックが好きでクラブに通っていて、レイブパーティーにも行っていればフェスにも行っている。そんな雑食性の奴らがサルサをやっている。アルバムではそんなことを出したいと思っていたし、今の自分たちは出せたかなと思っています。下手なりにですけど。

–––– 最後にバンデラスってどういう意味なのですか。

I 「バンデラ」はスペイン語では旗っていう意味で。

複数では言わないんですけどね。「バンデーラ」。その一団ということでバンデラス。ひとりひとりが旗を立てつつ、同じビジョンを持って集まっている。

I でもこれは後付けで最初はアントニオ・バンデラスから取ったんだよね。実はチャラい奴らなんです(笑)。

ある意味で男の憧れがバンデラス。真面目にバンド名のことを答えなきゃいけないのが、実は悲しいんです(笑)。

BANDERAS

2014年11月、ファンク、レゲエ、キューバン、サルサ、アフロビート、ダンサー、DJなどさまざまな音楽の現場で独自のスタイルを持ち活躍する11人が呼応するかのようにサルサの名のもとに集まって結成。2016年5月にファースト・シングルをリリースし、夏には「フジロック」に出演を果たした。今年8月にファースト・アルバム『ラ・バンデラ』を発表。12月15日(渋谷クラブクアトロ)でワンマンライブが開催される。

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