【ボランティアインフォ(北村孝之)】日本のボランティアをもっとカジュアルに。フェスからつながっていく笑顔。

東日本大震災をきっかけに、災害時のボランティア情報の発信とフェスのボランティアコーディネートという2つを軸にしながら活動を続けているボランティアインフォ。日本のボランティアの裾野が広がることを目指している。


文・写真 = 菊地 崇 text・photo = Takashi Kikuch


–––– NPO法人のボランティアインフォを立ち上げたきっかけを教えてください。

 以前、 IT系の会社で働いていたんです。その会社を辞めて、カンボジアなどの東南アジアで学校を作りたいという人たちのお手伝いをしていたんですね。東南アジアにも行ったり来たりしていて、ちょうど日本にいるタイミングで東日本大震災が起きたんです。 IT仲間がYahooなどと連携して、ボランティア情報を集めて発信する動きをやろうとしていて、「自分も何かできることはないですか」って話したら、現地に行って生の情報を仕入れてくる人間がいないから、現地に行ってくれないかって頼まれて。そして3月中旬に仙台に入ったんです。

–––– 確かに情報って必要ですね。

 自分でも石巻に行って泥かきなどもしつつ、情報を集めて、それをネットで発信していたんです。何も情報を持たずに新幹線に乗って仙台に来るボランティアさんが、ゴールデンウィークにはかなり増えるだろうという話も聞こえてきました。仙台駅の案内所は、観光案内はできてもボランティアの案内はできない。いろんなところに協力してもらいながら、仙台駅構内に、ネットで発信していたボランティア案内のリアルバージョンを作ったんです。今はここでこんな作業を必要としていますとか、石巻に行くのにはこの交通手段で行けばいいとか、必要な装備は仙台ならここで揃えられるとか。

–––– ボランティアとひと言でくくってしまうけど、いろんな役割があると。

 災害のボランティア活動って、泥かきをはじめ、現場に行って手を動かすイメージじゃないですか。その人たちを支えたりつなげたりするためのボランティア。中間支援っていう言い方をするんですけど、そういう役割も大切だっていうことをはじめて知って。復旧復興のスピードを速めるために多くのボランティアさんを確保していくっていう意味では、情報をたくさん出していくことも必要なんだっていうことを、やりながら感じていました。そして大震災の翌年に法人化したんです。

–––– 法人化したのは、やはり続けて行かなければならないという使命感から?

 大震災の復旧復興は1年という時間では終わらない。僕らが辞めてしまったら、ボランティアはもう必要ないんだって思われかねないので、情報は出し続けていかなければという義務感を持っていました。事業モデルというか、活動費をどう作っていけばいいのか悩んでいたときに、ハイスタンダードが「AIR JAM」を宮城で開催することになって、ボランティアコーディネートをできる人を探しているっていう話があり、やらせてくださいって手をあげたんですね。

–––– その前にフェスなどには行っていたのですか。

 自分はもろにハイスタ世代。フェスにも行っていたので、空気感みたいなものはなんとなくわかっていました。ただ本当に手探りで、何もわからないままフェスのボランティア

コーディネートを、はじめて「AIR JAM」でやらせてもらったんです。

–––– フェスボランティアのコーディネートもそこから広がっていった?

 はい。当時、復興支援系の音楽フェスが多かったですから。僕と一緒で、ノウハウもないまま気持ちと勢いだけでやっている人が多かった。「AIR JAM」で学んだこと、そしてその後のフェスで覚えていったノウハウを一緒にシェアしながら、ボランティアさんも連れていって、一緒に場を作っていくという感じでした。そして支援系フェスだけではなく、いろんなフェスから声をかけていただくようになって。

–––– 災害ボランティアとフェスボランティア、どこか通じるところもあるのではないですか。

 ボランティアに行くことの思いというかマインドが似ている。その似ている部分あるからこそ、フェスも自分を生かせるフィールドだなって。

–––– ボランティアのコーディネートを、続けてこられた理由はなんだと思います?

 まず僕自身がずっとボランティアをしているということ。そして楽しめているっていうこと。参加してくれるみなさんがどうやったら楽しめるのかっていう環境を考えながら、ひとつひとつの現場を作っています。結果としてリピート率も高くて、それもうれしいんですね。フェスなどのボランティアコーディネートをすることで、事業収益をもらえるようになっています。イベントに出していただいたお金で震災復興の中間支援的な活動にも回すことができています。どっちがっていうことではなく、自分にとってはどっちも大切なんですね。

–––– 日本ではボランティアは増えていると思いますか?

 僕が見たり接っするところでは増えているんですけど、全体で見ると全然なんですよね。自分ごととして、自分の足で自分の思いで行って経験する。そして人のためになって「ありがとう」って言葉をもらう。そんな成功体験がないと次に続かないのかなって思います。フェスでファーストボランティアの体験を作ってあげることができたら、その敷居は低くなるかもしれない。ボランティアをもっとカジュアルにしていく。そして日本のボランティアをもっと増やしていければって思っています。


ボランティアインフォ(北村孝之)

東日本大震災後の2011年から「ボランティアを求める人とボランティアをつなげる」ことをミッションに活動しているNPO法人ボランティアインフォ。当初はボランティアと被災地をつなぐ中間支援を行なっていたが、宮城県で開催された〈AIR JAM〉をきっかけに、フェスでのボランティアコーディネートもするようになった。現在では災害時のボランティア情報の発信と、数多くのフェスでのボランティアコーディネートを行なっている。能登半島地震でのボランティア情報も掲載中。


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