DEAD & COMPANY The Final Tour【MANABU(MAJESTIC CIRCUS)/TAKA(DUDE INN)/SHINHA(cetana works)】

DEAD & COMPANYのファイナルツアーが2023年5月から7月に行われた。グレイトフル・デッドが描いたカウンターのビジョンと新しい時代の融合。過去を懐かしむのではなく、今を楽しみ未来を築くこと。このファイナルツアーを体験した3人が語る「今のグレイトフル・デッド・カルチャー」。

文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 山田博行(SF)/林大輔 photo = Hiroyuki Yamada(SF)/Daisuke Hayashi

ー 3人は5月から7月にかけて開催されたデッド&カンパニーのファイナルツアーに参加してきました。まず行こうと決めたきっかけから教えてください。

 DUDE INNをシンハと一緒に立ち上げたのが2018年の暮れのことでした。そして19年夏にベイエリアのショアラインで開催されたデッド&カンパニーのショーを見に行ったんです。それからずっと、チャンスがあればまた行こうねって話していて。コロナがあって、今年こそはって話していたんですよ。


S ツアーの日程を見て、コロラドのボウルダーに行こうかって話になって。ボウルダーにはショアラインのときに出会ったロット仲間もいますから。


 ただ俺たちはLAのデッドヘッズと最初につながって、そこからメチャクチャ広がっていったんで、俺たちが行くべき場所はLAなんじゃないかって思うようになって。ツアーのファイナルツアーのオープナーの場所がLAだったことも決めた理由のひとつでした。


 ふたりがアメリカで体験したインスタグラムの投稿を見ているうちに刺激を受けて、やっぱり自分もアメリカに行って見ておきたいっていう気持ちが大きくなっていったんですね。そしてツアーの最終地であるサンフランシスコに行きました。

ー カリフォルニアではじまって、カリフォルニアで終わるツアー。実際に会場に行ってどうでしたか?

 百聞は一見にしかずで最高でした。ジェリー・ガルシアの時代と比べるんじゃなくて、今ある最高のデッドがそこにあり、デッドのショーが展開され、デッドヘッズが集まっている。デッド曲をみんなで大合唱ですよ。その環境にいられるっていうことが最高なわけですよね。自分はデッドの曲が好きで、自分の好きっていう気持ちを再確認する。ライティングも音響も、ドローンが飛んでくるという演出もクオリティが高い。そして今の時代にアップデートされていたんですね。自分が見た90年代のグレイトフル・デッドや2015年のデッド50より、何もかもがアップデートされている。ライブとして世界最高のクオリティのひとつがここにあるって。行ったことで自分もアップデートできたし。


T 俺たちは、今回も自分たちのTシャツを持って行って、パーキングロットで展開していました。

ー 2015年のデッド50、あるいは2019年と今回はどんな違いがありましたか。

 ベイエリアとLAという違いはあると思うのですけど、すごくポップさを感じたんですね。ショアラインではヒッピーの雰囲気が残っていたんですけど、LAではその濃さを感じなくて。デッドというフィールドだけではなく、エンターテインメントとして完成されていて、誰もが楽しめる空間に仕上がっていたという印象でした。新しい時代になったのかなって思いましたね。


T ロットで出会ったアーティストたちは、ツールとしてSNSを使いながら、今のこのヤバイ時代をどうサバイブしていくのかを楽しんでいる。それぞれがいろんな見方、いろんな楽しみ方をしていて、しかも自立している。デッドが好き、デッドヘッズだっていう共通点はあるんだけど、違う目線を持っているというか。それが自分たちにとっても性に合ったんですね。


 デッド50と違うのは、デッド&カンパニーはバンドとして完成されているっていうこと。今年だけではなく、何年もツアーをしているわけだから。会場では10代らしきグループも見かけましたね。90年代風のパッチワークのようなファッションをしていて。「こんな子がまた現れてきたんだ」っていう印象でした。


T ヒッピーライクなパッチワークって、日本ではかなりニッチなものじゃないですか。でも自分にはその感覚はないんですね。俺とシンハにとっては、むしろすげえいけてるヤツらの集まり。コロナを経験して、さらにみんながストレートに自分のメッセージを伝えてくるし、健全さも感じたし。メチャクチャ、インスピレーションを受け取りました。ライブからもインスピレーションを与えてもらったんだけど、そこにいる人間もやっぱりおもしろいなって。

ー グレイトフル・デッド、そしてデッドのカルチャーは、なぜアメリカで途絶えることなく受け継がれていっていると思いますか?

 今回も感じましたけど、安心できる場所なんですよね。変わっているんだけど、本質にあるものは変わっていない。


T 答え合わせができる場所っていうか。シェアの精神はずっと継承されているし。


 今回はジョン・メイヤーがお膳立てしてた雰囲気はありますよね。ファッションカルチャーに関わっているクリエイターが入ってきたいたりとか、ファッションに対しての目線が増えたと思うんです。インスタグラムを使いながら拡散していくっていうのは、ジョン・メイヤーのファンの世代が持っているものっていうか。古き良きグレイトフル・デッドのカルチャーを、新しいテクノロジーも巧みに使ってリバイバルしているっていう感じ。ショーそのものもそうだし、YouTubeを使っての映像のシェアもそう。そしてロットも。


T ジャムバンド的なグルグルのジャムっていうよりも、もっと大きなものが存在していて、その大きさをみんなが受け入れて共有している。3世代ではなく、4世代の遊びになっていました。それを成立させているのがジョン・メイヤーの存在なんだと思います。

ー 本当に2023年のツアーが「ファイナル」だと思っています?

 ジョン・メイヤーが、インスタの投稿で、自身が学んだことを熱く書いていたんです。それはきっとこの夏を体験した誰もが共感できることを代弁していたように思うんですよ。


T ツアーは終わりだけど、バンドとしては終わりではないっていうようなことも言ってましたね。


 あれだけの熱烈なファンがいて、終わりにはできないと思いまますよ。サンフランシスコの3日間では、初日が「Not Fade Away」ではじまったんですね。そして3日目の最終日のアンコールの最後に「Not Fade Away」に戻ってきた。それって何かしらの意味があるのかなって。


T デッドに自分を重ねることがあるんですね。古くさいものって思いたくないっていうか。デッド&カンパニーは超最先端でした。そこに集っている人も、バンドの演奏も。そこにリンクできているっていうことがうれしいんですね。ロットにしろライブにしろ、俺たちにとってはありえないほど最高の場所でした。だからまたあの場所に戻りたいですよ。


 デッドは好きでしたけど、そこで出会うことの大切さをデッドやデッドヘッズ、ロットにいる仲間から教わった気がします。とにかくみんな優しいですから。


SHINHAがデザインしたDUDE INN STOREのアニバーサリーイベントのポスターやアイテム。そのデザインはアメリカのヘッズからも注目を集めている。


MANABU(MAJESTIC CIRCUS)
MAJESTIC CIRCUSを2002年に結成。一昨年に結成20年を迎え、インスピレーションを音でデザインしていくようなジャムの旅を、今もなおライブで展開し続けている。デッドナンバーをカバーするソロプロジェクト、MABROCKとしてもライブを行なっている。http://www.majestic-circus.com/
TAKA(DUDE INN)
平塚で2018年暮れにオープンしたDUDE INN STORE。アメリカのヘッズともトレードや情報交換することで日本のデッドカルチャーを発信している。2023年12月17日にMAJESTIC CIRCUSをメインアクトに5周年パーティーが平塚Happy Mountain Barで開催された。https://dude-inn.stores.jp/
SHINHA(cetana works)
2018年よりフリーランスのデザイナーとして活動。アメリカのポップアートやヴィンテージファッション、クラシックロックに通じるデザインを得意としている。藤沢市を中心に展開するマーケットフェスティバル〈MARKESTA〉のオーガナイズメンバーでもある。https://www.instagram.com/mshinha/
DEAD & COMPANY
2015年にグレイトフル・デッド結成50年を記念してデッド・メンバーが20年ぶりに集結して開催された〈DEAD 50〉。このショーをきっかけに、ボブ・ウィア、ビル・クルーツマン、ミッキー・ハートの3人が、ギタリストにジョン・メイヤーを迎え入れて始動させたのがDEAD & COMPANY。2024年5月16日から7月13日まで、アメリカ・ラスベガスのSPHRREで24回ものショーが行われる。https://deadandcompany.com/

取材協力:Pathouri(横浜)

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