コロナ時代を経た新たな日本発のフェスへ。【FUJI & SUN(井出辰之助)、FFKT(坂下真司)、GREENROOM FESTIVAL (釡萢直樹)、ONE PARK FESTIVAL(社長)】

2020年からコロナによって揺れた春フェス。中止や延期という決断から、どう次の開催へと意志を向けていったのか。4つのフェスのオーガナイザーが2年ぶりに集って語り合う。


文 = 菊地 崇 text = Takashi kikuchi  
写真 = 林 大輔 photo = Daisuke Hayashi


コロナ禍の3年。

ー みなさんには2年前(2021年)に発行した特別号で集まっていただきました。コロナが進行していたこの2年は、それぞれどんな状況でしたか。

釜萢 2020年はほとんどのフェスが中止になって、一昨年はやっとやれたっていうか。キャパをかなり削っての開催でしたけど、キャパが多いか少ないかっていうことよりも、開催できたことがうれしかったですね。去年はステージが有料エリアのみでしたけど、ある程度、形が戻ってきたなって感じていました。

井出 今もなおコロナは続いているんですけど、ブレーキがいろいろあって大変ではありました。コロナ禍であっても、なんとか開催して、足跡を残して次につなげようと思っていました。諦めるのではなくやり続けること。そこになんらかの光を見出そうとしていたのかもしれません。

坂下 一昨年は中止になりました。高齢化が進んでいる地域なので、怖いものは怖いと言われてしまい。去年はよくわからないまま、できるのかどうかみたいなことが開催日まで続いて、結果として開催できた。どこか東日本大震災があった2011年と似ているように感じていました。出演するアーティストのみなさんが、ライブにすごく気合いが入っていたんです。それがすごく良くて。コロナ禍において、もっとも良かったのはそのことかもしれないですね。

井出 コロナ禍で顕著だったのは、若いお客さんはとにかく元気だったっていうこと。ダンスミュージック系フェス、レイヴ系パーティーはすごくもり上がっていましたから。ダンス系のアンダーグラウンドなパーティーは、表に出にくかったということもあると思います。そこに若い世代が「これ、おもしろい」って受け取っていった。フェス全体を考えてもお客さんが入れ変わった感じもしています。

社長 一昨年は11月という少し寒い時期に延期して〈ONE PARK Restaurant〉として開催しました。できただけで十分というか。やれたことが、自分たちにとってもすごい活力になったし、福井という街も少し元気になってきたかないう印象もありました。


5類移行後のスタイル。

ー やっと5月からコロナは5類に移行されました。

釜萢 2年前は緊張感しかなかったというか、みんなが疑心暗鬼のままだったと思うんです。声を出していいのか。ソーシャルディスタンスって言われているけど、どれだけの距離感を保てばいいのか。近くで咳をする人がいたら振り向いちゃったり。オーディエンスも、運営している我々も、楽しむことよりもそこに向いていたっていうか。去年から、ちょっとずつですけどルールを守りながらみんなで盛り上がろうっていう感じになってきていますね。

井出 〈フジ&サン〉が開催されている富士市もそうだし、〈FFKT〉の長野や〈ワンパーク〉の福井も同じような状況だと思うのですけど、コロナに対してはまだまだネガティブに感じている人が少なくない。5類になったとはいえまだ影響は残るだろうし、対策もしっかり練ってい禍なければと思っています。

社長 自治体としてはやって欲しいという気持ちを表明してくれてはいるものの、地元の方々の声は無視できないんですよね。

釜萢 今年の開催で1番に決めたのは、海外のアーティストを復活させたいっていうこと。この3年間もずっとチャレンジはしてきたんですけど、なかなかまとめられませんでしたから。

坂下 〈FFKT〉では去年も海外から呼んでいたんですけど、空港で止められてしまってそのまま隔離になってしまったアーティストもいましたから。今年は海外のアーティストを招聘する壁が、少し低くなっているかもしれないですね。

社長 今年の〈ワンパーク〉は8月1週の開催になりました。引き続きのテーマとして、どれだけ首都圏から人を呼べるのかっていうことがあります。来年春には北陸新幹線が敦賀まで延長される。だからある意味では、今年が勝負の年とも言えるんです。

井出 来日アーティストも多くて、ライブハウスなどのハコは取り合いになっている。ライブに関しては、確実に「戻って」きています。ただ自分の場所から遠い場所に行くっていうボーダーラインは存在しているのかなって。ボーダーラインを超えていかに都市から来てもらうか。


フェスというカルチャーの復興。

ー いろんなことに悩み、いろんなことに挑戦したコロナ時代だったと思います。フェスを続けるモチベーションはどこから生まれているのですか。

社長 すごく待望してくれている方が多いんですよ。おそらく30代がコアファンになってくれていますが、下の世代をもうちょっと動かしたい。それが福井という地方都市の活性化につながるんだと思っています。10年先を見据えて下から耕していきたい。若い世代の心も動かせるアーティスト、ダンスミュージックとダンスを喚起させることができるライブバンドをブッキングしなきゃなって。

坂下 自分もそうなのですけど、大きな経済圏から入っていってフェスが終わったら帰るっていうことがほとんどだと思います。もうちょっと地域の人と一緒にやれればなって。

釜萢 フェスという場所が好きだし、自分に合っているんですよね。365日、同じ場所に何かを作っていくよりも、1年に1回、イベントがやってくるという作り方が個人的には好きだし。違う環境、違うコンセプトっていうことがワクワクするんですよね。今年は横浜のほかに、大阪でも開催するし、夏には南房総での〈グリーンルーム・キャンプ〉も復活させます。

井出 〈グリーンルーム〉が、国内外のアーティストを組み合わせていく先駆けのように思っています。〈フジ&サン〉でも初年度は海外アーティストを招聘しました。アジアをもっとフィーチャーするフェスがあってもいい。かつて〈タイコクラブ〉がレジデントアドバイザーというウェブで、ダンス系フェスの世界トップ10に入ったように、日本のフェスの良さを世界に広げていきたいんですよね。世界に通じるフェス。〈フジロック〉や〈サマソニ〉というビッグフェスではない、日本の魅力を高めたフェス。僕から見たら〈グリーンルーム〉こそ、コンセプチュアルだし次の時代のフェスだと思っています。日本を良くしていくっていうと大げさだけどなって、日本のフェスのクオリティを上げていって、海外のアーティストからも「行きたいよね」って思ってもらえるフェスのシーンを作っていきたいなって思っています。〈フジ&サン〉は今年で4回目なんですね。ただコロナ禍での開催は0.5として自分は捉えていて、まだ3回目までも達していないっていう考えなんです。お客さんも変わって、時代も変わってている。野外フェスは、ある意味では未来のライフスタイルを描いていると思っているし、〈フジ&サン〉ではそんな時間や体験を提供したいと思っています。


ー こういう対談の場ですから、それぞれに聞いてみたいことがあれば。

社長 フェスの回遊っていう部分で、キッチンカーを並べているエリアがあるんですけど、ステージから近いほうが売り上げが良くて、遠くなればなるだけ売り上げが下がってしまっているんです。遠いっていってもわずか数メートルなんですけど。

釜萢 〈グリーンルーム〉でよくやっているのは、人が少ない奥にベンチを置くこと。ベンチがあってベンチに人が座って飲みはじめることによって輪が生まれる。それで流れが変わることがあるんです。

社長 すごいノウハウをさらっと聞いているかも(笑)。

井出 〈グリーンルーム〉では初日と2日目では何かがちょっと変わって、バージョンアップされていることもありますから。

釜萢 初日の土曜の失敗というか反省点というか。実際にやってみて見えてくることもあるじゃないですか。1日目が終わったらチーム全員で修正するところがあるかどうか検討して、あればその夜に修正します。お客さんからこうしてほしいっていう意見を聞くこともあります。いかに居心地のいいフェスにするのか。お客さん目線を忘れないようにはしているつもりですから。


ー 今年の抱負を聞かせてもらえませんか。

社長 福井のあの規模感とあの街の雰囲気だからこそ生まれる〈ワンパーク〉の色みたいなものを作っていければと思っています。ダンスミュージックという軸があって、ライブとDJが都市空間のなかで両方楽しめる。そんな場を作りたいですね。

釜萢 今年は「復活」ですね。海外アーティストも含めて、コロナからの復活。我慢、我慢、我慢の3年間だったので爆発させたいっていう気持ちがあります。

井出 海外アーティストのライブをあの雄大な風景のなかで楽しんでもらいたい。そんな本来持っていた姿に戻すための粘りの年。

坂下 やれることをやるしかないですね(笑)。


FUJI & SUN ‘23

バリエーション豊かなライブアクトと、オリジナリティのあるアクティビティ企画も人気のキャンプインフェス。目の前にそびえる雄大な富士山を独り占めしたような贅沢すぎるロケーションも魅力。

開催日:5月13日(土)~14日(日)

会場:富士山こどもの国(静岡県富士市)

出演:EGO-WRAPPIN’(Acoustic set)、折坂悠太(band)、君島大空、cero、never young beach、ハナレグミ、ASIAN KUNG-FU GENERATION、スガ シカオ with FUYU、ブレッド&バター、ROTH BART BARON、ほか


GREENROOM FESTIVAL ’23

全国で急速に減少しているビーチと海の環境を守ることがコンセプト。ビーチカルチャーをバックボーンにした音楽とアートを融合させた都市型フェス。横浜に加え、6月11日12日には大阪で〈GREENROOM BEACH〉も開催。

開催日:5月27日(土)28日(日)

会場:横浜赤レンガ地区野外特設会場(神奈川県横浜市)

出演:AJR、Vintage Trouble、Sigrid、Oscar Jerome、Kamal.、Dragon Ash、UA、TASH SULTANA、Mamas Gun、UMI、Anomalie、ハナレグミ fever 中納良恵、ほか


 PHOTO  = Timothee Lambrecq (@moussti)

FFKT 2023

海外アーティストと国内のアーティストが融合するフェスとして人気の高かった〈TAICOCLUB〉のスピリットを引き継ぎ、2019年に初開催された〈FFKT〉。オールナイトのキャンプインというスタイルも変わらない。

開催日:5月27日(土)~28日(日)

会場:信州やぶはら高原こだまの森(長野県木祖村)

出演:Actress、青葉市子、Buttechno、Cabanne、D.Tiffany、どんぐりず、GEZAN、Gigi Masin、Kelly Lee Owens、yonawo、ほか


ONE PARK FESTIVAL 2023

「街がひとつのテーマパークになる音楽フェス」として2019年7月に立ち上がった都市型野外フェス。今年は8月に開催が決定。福井出身の社長(SOIL&“PIMP”SESSIONS)が音楽顧問を務めている。

開催日:8月5日(土)6日(日)

会場:福井市中央公園特設会場(福井県福井市)

出演:TBA


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