歌えるメロディをインストで奏でる。【jizue】

jizue

ロック・フィーリングが高いインストで、〈フジロック〉や〈朝霧JAM〉などのフェスでも人気を集めているjizue。昨年秋にはメジャーデビューを果たした。結成以来、京都をベースに活動を続けている。バンドとして京都にこだわり続ける意味とは。

文 = 菊地 崇  text = Takashi Kikuchi

写真 = 林 大輔  photo = Daisuke Hayashi


ー 結成は2006年でした。どうやって知り合ったのですか。

井上 男子3人は子どもの頃からの友人で。育ちは滋賀なんですけど、サッカースポーツ少年団でずっと一緒にやっていて。そこからバンドやろうぜみたいになった仲間です。そしてたまたま京都で暮らすことになって、たまたま片木に出会った。

片木 ずっとピアノをやっていて、高校ではクラシック、大学では現代音楽の作曲を勉強していたんです。粉川と共通の友人がいて、スタジオに入ろうと連れて来られて、それで僕のバンドがあるんやけどって言われて知り合ったのがjizueに入った経緯です。それまでの音楽体験とはまったく違う感覚でしたね。人の音と合わせたときの、音のエネルギーや厚みに感動しました。

井上 それまでは演奏メインの歌ものをやっていたんですよ。これからインストでやっていきたいと決めていて、その最初だったんですよ。これだったらなんでもできるわぁっていうのが3人の実感でした。


ー 去年はメジャーからデビューを果たしています。ずっと京都をベースに活動している理由はどこにあるのですか。

井上 絶対に京都が拠点で、ずっとここにこだわるという思いもなかったんですけど、京都の雰囲気も好きだし住みやすい街なんですよ。急激にネットなどで音楽が配信されるようになって、音楽を制作するためにはどこを拠点にしていようが問題なくなってきたことも大きな要因なんでしょうね。

粉川 出るなら東京ではなく、ニューヨークだと思っていました。ボストンのバークリー音楽大学に行こうやと言っていたこともありましたから。ニューヨークに強い魅力を感じてるんです。そこを経てから日本に戻ってきて活動を再開したほうが、バンドとして強くなっていくんじゃないかという考えがあって。みんな乗ってくれませんでしたけど。

片木 父が表具職人をしているんです。京都って専門職の人、例えば陶芸家さんとか書道家さんとか靴職人さんとか、ひとつの技術を突き詰めて、仕事的にも人間的にも素晴らしい方がすごくたくさんおられて。そういうおもしろい方々の世代を超えたコミュニティがあったりして、ここ数年そんな方々とつながらせてもらって、伝統も大事にしながら新しいことにチャレンジしてひとつの道を極めるように生き方にかなり刺激をもらっています。そんな伝統と文化がある土地なので、とても住みやすいですね。

山田 もう15年くらい京都に住んでいるんですけど、ここは本当に暮らしやすいですよ。

粉川 景観条例がある街って特徴的だと思うんです。いわば街ぐるみで空気を作っているわけじゃないですか。高い建物を建てちゃだめだし、看板の色も規制されているし。この意識が誰の心にも通じていることが、街の魅力になっていると思います。創作活動に関して、たぶん京都での毎日から無意識のうちに感じ取っている部分がたくさんあるんじゃないかと思いますね。結果として自分たちの音にも無意識のうちに出ている。伝統と先端が入り混じっている街。そういう意味では刺激的な街だと思います。


ー 曲を作るにあたってここだけは変えないというバンドとしてのルールみたいなものはあるのですか。

井上 根本に持っているのは、どんなに難しいことをしていても、楽器として歌えるものであること。インストって何をやっても自由じゃないですか。演奏することが好きやったんですかね。演奏だけでかっこいいことをしたほうがかっこいいやんって。

片木 学生の頃まではブラック・ミュージックを多く聞いていたんですね。ライブハウスではなくクラブで遊んでいる自分が一番表現できることがピアノを弾くことで、それが全部うまくつながる場所がjizueでした。このメンバーに出会えて、本当にラッキーだったと思います。言葉によるメッセージの強さって歌ものには絶対あると思いますが、 jizueは歌えるメロディとか心に伝わる音楽を意識して作っている。インストやって言われてハッとすることがあるんですね。そうか、自分たちには言葉がなかったのかっていうくらい、ひとつひとつの旋律や音楽に意味やメッセージを込めて作っています。

粉川 歌があるとどうしてもバックバンドになってしまうことがあるじゃないですか。自分も主役になれるし、誰でもが主役になれる。それがjizueでありインストのおもしろみかなって思いますね。

井上 12年続けて、音楽性は変わっては戻って変わっては戻ってという気もしますね。このメンバーがそろったときに「こんなことをやりたい」と思い描いていたものができてきているように思いますし、幅が広がっていることは確かだと思います。


ー 夏にはフルアルバムがリリースされるんですね。

井上 フルアルバムとしてはメジャーから初リリースとなるので、 jizueっておもしろいと思ってもらえるようなものを作れればと思っています。


ー 6年ぶりにフジロックの出演が決まりました。フジロックはJIZUEにとってどんな存在で、2回目の2018年はどんなライブをしたいと思っていますか。

粉川 この6年間にいろんなフェスに出てきましたが、やっぱりフジロックは特別で、毎年今年も 出れなかったかと悔しい思いでタイムラインを観ていたんです。そんないつまでも憧れのフェスな ので、6年間溜め込んだ思いのたけを全身全霊ぶつけるようなライブにしたいですね。


jizue

2006年、井上典政、山田剛、粉川心を中心に結成。翌年に片木希依が加入して現在のメンバーがそろった。京都を拠点に活動を続け、2017年にビクターよりメジャーデビュー。国内だけではな く、カナダ、インドネシア、中国、台湾など海外ツアーも精力的に行っている。最新作は4月にタワーレコードおよび配信限定で発売されたADAM at × jizue × Schroeder-Headzのスプリット・アルバム『COOLERS』。アルバムリリースライブ「ビクタージャズ祭り」が東京(5月7日)、大阪(5月19日)、名古屋(6月9日)に行われる。http://www.jizue.com/

0コメント

  • 1000 / 1000