生きる目的を 見つけるための場所。【出路雅明(human forum)インタビュー】

出路雅明(human forum)

持続可能なライフスタイルを目指して立ち上がったmumokuteki。カフェ、ファーム、マルシェ、そしてファッション。さまざまなコンテンツには同じ核が存在している。

文 = 宙野さかな text = Sakana Sorano

写真 = 林 大輔 photo = Daisuke Hayashi


ー mumokutekiという名前について、まずお聞きしたいと思います。

出路 自分の好きな兄貴分が、三重で無目的ホールっていうものをやっていたんです。多目的ホールはあるけれど無目的ホールってないねってやってはったんです。月に1回か2回、日本中からおもしろい人を集めて、コミュニティみたいな感じでイベントをやっていて。スピリチュアル系とかが多かったかな。京都にあるフューマンフォーラムの3階のスペースが余っていたから同じ名前ではじめたんです。だからmumokuteki cafeやブランドのmumokutekiよりも、ホールがはじまり。カフェをmumokutekiに変えた頃に農業もはじめて。


ー それが京北にあるファームなのですね。

出路 若い頃、自分たちのコミュニティみたいなものの新しい形を作れたらいいなあっていう話をよくしていたんです。農業も含んだコミュニティ。10年くらい前に会社がつぶれそうになった時代があったんですね。そのときにもう一度頑張って、儲かったらアホな夢を実現させようということを社員に言って。そのひとつが「村」を作ることだったんですね。 DASH村も流行っていたし、そんなん作ったら楽しいし、研修施設にもできるし。それで京北にたまたま場所を見つけて。


ー mumokutekiの目的とはどういうものなのですか。

出路 確かにあまりにも気になる名前やと思います。なんで「無目的なんですか」ってよく聞かれる。そのときの答える手段として、じゃあ生きる目的ってなんですか、と聞き返す。その答えが見つかっていない人が多いと思います。あるのかどうかもわからないし、生きるって本当になんだろうと考えてみて、みんなで見つけて行こうっていうことなんですよ。mumokutekiビル自身のコンセプトが食べること、着ること、作ることも全部を受け取ってもらうこと。マルシェをはじめホールで開催していることからいろんなことを知ることも含め、こんな生き方もあるねっていうことを考えてもらうことなんですよ。mumokutekiも、このビル全体も、コミュニティにしたかったんです。東京にほびっと村ってあるじゃないですか。イメージとしてはあそこ。カフェがあって託児所があって本があって。コミュニティを作ることが、これからのビジネスの方向性だろうなと思っていて。量を売るとか多くのお客さんに来てもらうのではなく、ひとりのお客さんに長い期間にわたって愛してもらって買っていただくこと。


ー そのひとつがファームの存在であり、定期的に開催されているマルシェであり、カフェでの食材に対するこだわりであり。出路さんはmumokutekiでどんなことを目指していらっしゃるのですか。

出路 十数年前に、一緒に働いているメンバーのうちで、うつになる奴と辞める奴が出てきたんですね。ヒューマンフォーラムっていう会社名なんだけど、素晴らしき仲間の集いを目的にしているのに、これはちょっとあかんなって思って。年齢を重ねても働けるブランドを作ったらどう買っていうんで生まれたもののひとつがmumokutekiなんです。自分が一番したいのは生きていくための心と腕を育てること。


ー 人間力を養うということですか。

出路 まさにそう。腕と心ができたら、そこから先は自由にやってもらったらいい。土台とインフラを作ってあげること。これからの商売で何が一番売れるのかっていったら、やっぱり生き方やと思います。働く連中とともにお客さんも一緒に生き方を作っていく。


ー その生き方のひとつが都市と田舎を結ぶことなのかもしれないですね。京都以外にも、いろんな場所で計画が進んでいるとお聞きしましたが。

出路 京都では少しは生き方、働き方を作られています。けれどそれだけだったら、京都に来なあかんじゃないですか。だから九州でも名古屋でも東京でもどこでもいいんです。自分のやりたいと思う場所でやればいい。農業じゃなくてもいいし、例えば漁業だっていいでしょうし。田舎と街じゃなくても、街のなかにいろいろな形の働き方を作るっていうこともできますよね。


ー 生きていく腕、そして心を育てていくことが大切なんだということがよくわかります。

出路 仕事を教えて、人生を教えて、なんで金を払わなあかんねんって言ってんのが好きなんです。そう死ぬまで言っていたいです。会社を辞めようが辞めまいが、どこでどう活躍しようが、のんびり生きていようがどうでもいいんですけど、出路さんのおかげですと言って、たまに飲みに来てくれる奴がいたらいいですよね。



出路雅明(human forum)
京都市内で2坪の古着屋を立ち上げたことを出発地点に、1997年に(株)ヒューマンフォーラム を設立。2007年に京北でヒューマンフォーラム村をスタートさせ、2009年に農業生産法人を取 得し(株)塞翁が馬を設立。著書に『ちょっとアホ ! 理論』などがある。http://www.humanforum.co.jp/

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