mumokuteki marche
偶数月の第3土曜日に、京都市の中心部で開催されているマルシェ。無農薬の野菜、クラフト、パン、スイーツ、化粧品…。ここに並んでいるものは、すべてがこだわりのあるもの。そのこだわりには共通して「シンクグローバリー・アクトローカリー」というビジョンが根底に流れているに違いない。ビルの3階ということもあって出店数が多いわけではないけれど、お客さんの滞在している時間は長い。そこにこのマルシェの意義が見えてくる。
文 = 宙野さかな text = Sakana Sorano写真 = 林 大輔 photo = Daisuke Hayashi
アクセスのいい京都の中心部の寺町商店街。三条と四条を結ぶこのエリアにあるヒューマンフォーラムビルの3階でマルシェが開催されている。〈mumokutekiマルシェ〉だ。2017年の6月にスタートし、2カ月に1回のペースで開催が続けられている。6回目となったのが今年2月17日。「冬の終わりのご褒美」というタイトルが付けられた。
弘法市や天神市などに代表されるように、骨董市や手作り市、ガラクタ市など多彩な市が京都では古くから行われている。市はマルシェやマーケットへスタイルの変容や拡大をもたらしながら、今でも京都の暮らしのサイクルのなかにしっかりと存在しているのだろう。左京区につながりのある180ものインディペンデントなショップが出店する〈糺の森ワンダーマーケット〉などは、クラフト&オーガニックカルチャーの新しい流れとして注目を集めている。
〈mumokutekiマルシェ〉での出店は毎回20あまり、継続しての出店が7割で新規が3割程度だという。出店の公募はしていない。郊外の公園などで開催されているマーケットに比べればけっして多い数字ではない。けれど少ないからこそ、丹念にセレクトされたショップが並んでいる。しかも郊外で開催されるマルシェやマーケットが、そこに行くという目的を持って人が集まってくることに対し、市内の中心部で開催されるのだから目的を持たずにふらりと立ち寄っていく人も多い。2階のmumokutekiカフェに来た人が、気になって3階まで上がってきた、ということも少なくなかった。
「かつてノンベクレル食堂とホテヴィラを自分がやってきたことで、自分のところに仕入れている農家さんだけではなく、いろんなところで放射線量の測定をしてきました。この食物に対する真剣な思いがいろんな生産者さんに伝わっているんだと思います。そしてたくさんの生産者さんとつながりが持てています。出路(雅明)に、カフェの仕入れの体制とホールでのイベントの企画をしてもらえないかと言われ、そのつながりを今につなげたいと思って、それでマルシェを提案したんです。」と〈mumokutekiマルシェ〉を立ち上げた廣海緑朗さん。
当初はマルシェというひとつのイベントのことで構想は留まっていたのだけど、回数を重ねることで、そこから新たに生まれるものこそ、これからのライフスタイルの鍵になってくると思えるようになってきたという。多くの出店があるビッグマルシェではなく、すべての出店者の顔が見える小さなマルシェだからこそ、つながりが強く広がっているのかもしれない。ホールありきで、ホールでのイベントとしてスタートしたマルシェではあるのだけど、それが動き出したことによって、いろんな人がそこに加わり、いろんなことがそこから派生している。
マルシェのフロアを何度も行き来している人がいる。そして気になったものを見つけてはショップの人に質問していく。マルシェに出店しているのは、素材にまでこだわりを持った人たち。つまり自分の暮らしをないがしろにしていない人たちと言えるだろう。そんな人たちと話すことや聞くことで食や身体についての知識が広がり、関心が深くなっていく。売るや買うという行為だけではなく、自分たちの暮らしを考える場を共有すること。それがマルシェが持つ本来の可能性なのだろう。
国内の耕地面積における有機の畑の割合はわずか0.22%でしかない。面積を人数に置き換えたとしたら500人にひとり。多い数字とは言えない。オーガニックというライフスタイルを生活のなかに入れたいと願う人を増やすこと。それは持続可能な社会の実現へとつながっていく。mumokutekiのショップのコンセプトは「いきるをつくる」こと。私たちは地球の上で生きている。〈mumokutekiマルシェ〉を通して、新しい「いきるをつくる」ネットワークが広がっている。
八百屋369商店 鈴木 健太郎
オーガニックの農家さんはすごく増えているし、買いたいと思っている人も増えている。けれど田舎ではオーガニック野菜を買う場所がなかなかないんです。仕組みを考えていけば新しいコミュニ ティが生まれるかなってはじめたのが369商店という予約制移動販売の八百屋なんです。京都オー ガニックアクションという仕組みを構築して、新しい流通のスタイルを作ろうとしています。
ninmari marche 黒瀬 啓介
ひけらかす笑いじゃなくて、自分が納得する笑いっていうのが自分としてはニンマリなんですね。 オーガニックをひけらかすんじゃなくて、ほんまに身体が元気になっておいしくて、ついついニンマリするっていう状態。ニンマリボールって名付けているのが、いわゆるブリスボール。オーガニックの野菜を育てながら、加工場を設けてブリスボールや調味料を作っています。
アンジーナ 横山 ちひろ
アンジーナは今年で29年目。何からできていて何を使っているのかをすべてオープンにしていて、 髪や肌が本来持っている美しくなろうとする力を引き出すために、できるだけ自然な素材で製品作りをしています。コンセプトブックでは、家族全員が農業をしていて、食べるものと生活スタイルやリズムを整えることからはじめましょう、そっちのほうが大事ですよってうたっているんです。
フランク・菜ッパ 室井 隆宏
フランク・菜ッパはフランク・ザッパもポリスもライブした京大西部講堂の真裏の小さな場所を借りて8年前にスタートしたんです。いろんな人と野菜でつながっていった。特に福島の後はオー ガニックがライフスタイルに浸透してきていると思います。次の世界を若い農家さんたちが担って、 つながっていって、小さな経済が集まっていくとイオンモールもイランモールになると思うんです。
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