東京都内の武蔵野線五日市駅。この駅から歩くことができる場所にある限界集落=深沢。都市と自然の境界線にある場所と言っていいかもしれない。こぼれ落ちていきそうなエリアを、新しい感性で再生させるためのアクションが動きはじめている。
文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 宮寺 功 photo = Isao Miyadera
–– 自然人村の成り立ちを教えてください。
今の自然人村のあるところは、深沢エリアの自治会で運営していた公園というか広場のようなものだったそうです。25年ほど前に父がキャンプ場として個人経営することになって。一方で父は、あきる野の町おこしとして秋川渓谷を走る自然人レースや「あきる野芸術祭」を企画運営していました。芸術祭の会場としてこの自然人村を使っていたんですね。芸術祭は10年近く続いたのですけど、ずっと渋さ知らズに出演してもらっていました。コロナのタイミングで、私が父から事業を継承することになりました。
–– 自然人村という場所を受け継いだ際にどんなことを思いましたか。
小さな頃から父を見ていて、自然人村だけではなく、自然人レースも芸術祭も、情熱を持って関わっていた。それはきっとこの地域を盛り上げたいという気持ちと自分たちも楽しみたいという思いからだったと思うんです。父が25年間に積み上げたものをいただく。それまで通りじゃいけなくて、その基盤の上に自分たちの時代だからこその色をプラスしていくこと。それを実現できて、はじめて父も認めてくれるのかなって。
–– 今の時代での自分たちのアクションであり目線のひとつが、コロナ禍がはじまったすぐ後にスタートした「ライブフォレスト」であると。
そうかもしれないですね。密にならない場所としての野外。自然人村にはステージがあったし、それを活用しての新しい場作り。東京にあるキャンプ場だからこそ担える役割があると思ったんですね。自分ひとりだけではなく、あきる野というかこの自然人村のある深沢という地域で、同時多発的にパワーが噴出して、それが「ライブフォレスト」という場になったように思います。
–– 今年、ステージも新設されました。
ステージに限らず、トイレやバンガローなど、一新したと言ってもいいくらい変わりました。「ライブフォレスト」や「ソラリズム」を開催することで、キャンプやバーベキュー目当てじゃないお客さんも来てもらえるようになった。そんな人たちの目線で考えたら、どのレベルだったら満足してもらえるのかっていう考え方。ワーケーションとしてもこの場所を使ってもらいたいし。今年になってサウナも作りました。川の清流が水風呂になる。バンガローやサウナなど、地元の木材である多摩産材を使っています。
–– 自然人村はどんな特徴を持った場所だと思っていますか。
五日市駅から歩ける距離であるにも関わらず、道から降りてくると景色が一変する。深い自然に囲まれた谷底のような空間。キャンプやバーベキューだけではなく、自然を気軽に感じてもらえる場所。
–– こんな自然に囲まれた場所にこんなステージがあるって、最初は驚きでした。
自然人村のものだけではなく、地域の資産として活用していければと思っています。地域の文化祭のようなイベントもいいだろうし。この地域が持つカルチャーを、大きく展開するというよりも淡々と続けていくこと。その時間の蓄積によってステージも育っていくと思います。
–– 文化を育てていく、地域を活性化させていくという意識も引き継いだものなのかもしれないですね。
自然人村を入口にした先が深沢というエリアです。ここには1万本ものあじさいが咲く南沢あじさい山があり、友永詔三さんの作品が展示された小さな美術館もあります。あじさい山はおじいちゃんが50年以上かけて作ったあじさいの山です。そこも事業継承させてもらいました。先人たちが築いてきたものを守りながら、新たな付加価値をつけていく。都心から近い自然。自然をバックボーンにした地域の文化。東京の自然を満喫してもらい、移住も含めて、地域の活性化を担える場所にしていきたいと思っています。
「令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成」
渋さ知らズオーケストラが出演し、10年以上続いた「あきる野芸術祭」の会場でもあった自然人村。このキャンプ&ベーベキュー場を、コロナのタイミングで父親から引き継ぐ。ソーシャルディスタンスが求められ、ライブハウスが密だと敬遠される時代になったことで、自然人村を野外ライブハウスと言っていいライブフォレストとしての運営を開始。今年、野外ステージを建設。「ソラリズム」などのライブイベントにも広く活用できるクオリティを整えている。
トーキョーマウンテン“山遊び” powered by ソラリズム
紅葉と焚き火の音楽ライブ。中央線オレンジ列車で気軽に行ける「トーキョー」。大道芸から山遊びまで親子で楽しめる東京の山の秋へ。
会場:多摩あきがわライブフォレスト自然人村
開催日:11月19日(土)20日(日)
出演:
19日/渋さ知らズオーケストラ、沖野修也、佐藤タイジ、DURAN、オマール・ゲンデファル、元晴 & cro-magnon、DJ YO-GIN、clown ものまる、大道芸人 彦一団子
20日/LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS、ASPARAGUS、The Firewood Project、勝井祐二、こでらんに~、大道芸人 彦一団子、熱血大道芸人 ドラマチック・ガマン
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