自分たちでエネルギーを自給していくためのアイデア。【大塚尚幹(自エネ組)】

原発事故によって目の当たりにした「お金の無価値感」。自分や家族だけではなく、日本という国がエネルギーを自給するためには、ローテクなアイデアを無理せずに継続させていく方法が真っ当な道なのかもしれない。

文・写真 = 宙野さかな
text・photo = Sakana Sorano


ー 大塚さんが共同代表を務められている自エネ組はいつ立ち上がったのですか。

大塚 福島原発事故があった翌年の春あたりに、自エネ組っていう名前をつけたのがはじまりです。自分たちで自給できることはしていきましょうと。その中心となる要素がエネルギーでした。できる限り独立電源で暮らしていこう。このメッセージは全国に広まっていきましたね。


ー 自エネ組が関わったなかで、どのくらい独立電源になさったご家庭があるのですか。

大塚 名刺の裏には独立電源として70カ所、送電線なしが18カ所と記していますけど、今はもう少し増えています。日本は資源がないとされ、自給率が低いわけです。特にエネルギーは。ソーラーパネルなり真空管温水器なりを自分の家でも利用していけば、燃料代がそれほどかからなくなるわけだから、老後も幸福に暮らせる。エネルギー代がどんどん上がるっていうことは、原発事故の前から言われてきていたことですし。


ー 大塚さんが自給自足の暮らしに入っていったきっかけを教えてください。

大塚 福島の獏原人村に7年いたんです。そこには電線も電話線も通っていない。携帯もつながらない。それまでは横浜で設計事務所をしていて、田舎暮らしに興味がなかったんですね。自給自足の暮らしをしていくなかで、お金の概念が変わっていったたんですね。1日働いたらいくらになる。七瀬ほどの田んぼもあってお米も育てていたんですけど、田植えや稲刈りなどの作業の時間を考えて売値を想定したとしたら、ものすごく高価なお米になってしまう。労働の対価が、喜びとか幸せではなくお金になっている。東日本大震災を福島で体験したんですけど、西に避難していくなかで3月12日の朝に福島県三春町のセブンイレブンに行ったら、食べ物が何も売っていない。その後に行った会津のスーパーでも何も売っていない。要するにお金があっても物が買えないっていう経験をしたんです。


ー その体験があって、自エネ組をスタートさせたのですね。

大塚 いつかフリーエネルギー装置が出てくるだろう。それを普及させるためにもベースがあったほうが早いじゃないですか。我が家では今、ソーラーで発電しています。勝手に発電するような装置ができたのなら、ソーラーの代わりにその装置をパコッとはめればいいわけですから。

ー 大塚さんが、今注目しているエネルギーはどんなものがあるのですか。

大塚 ふたつあります。ひとつはオオマサガス。水素エネルギーが注目されていますけど、水素って水を分解しないと出てこないものなんです。水に電気エネルギーをかけることによってH2とO2に分解する。水素だけ使って酸素を使わないってもったいないじゃないですか。水素も燃えるし、酸素も燃える。両方使おうっていうのがオオマサガスなんです。電気があって水があればガスが作られる。そのガスを燃やしたら水に戻る。クリーンなエネルギーです。もうひとつがエマルジョン燃料。水と軽油を半分ずつ混ぜることによって、軽油100パーセントと変わらないものにする技術から生まれた燃料です。この技術を開発した会社では、すでに水87.5パーセント軽油12.5パーセントの混合率のエマルジョン燃料の実験も成功させています。水50パーセントでも軽油に混ぜることができて、それが問題ないとしたら、いきなりエネルギー自給率が上がるわけです。オオマサガスはHーⅡロケットの燃料とも言われているし、エマルジョン燃料は山梨ではバスの燃料として使われていた実績もありますから。


ー エネルギーを自給するにあたって、まず何からはじめればいいと思っていますか。

大塚 省エネですね。例えばトイレの電気便座とか炊飯器の保温とか給湯器の凍結防止ヒーターとか。細かいことですけど、ひとつひとつを潰していくと、意外と電気を使わない家になる。電気をあまり使わない生活の先に自給があったのなら、かなりメリットが生まれてくると思います。円の価値がどんどん下がっている現状では、今後もしばらくはエネルギーが高騰していく。けれど自給できていれば、高くなったとしても問題ないですから。


ー オオマサガス、エマルジョン燃料、そして太陽光による発電。もっともっと広まって一般的になっていけばいいのですけど。


大塚 日本でもエネルギーに関しての心配の種はなくなっていくわけですからね。だからすごく未来は明るいと思っています。これらの技術は10年も前からあるはずなのに、なかなか広まっていかない。知ってしまったからこそ、なんとかしたいっていう思いがありますけどね。ちょっと前の数字ですが、日本は年間に28兆円もの燃料を買っているんです。その何割かが水で賄えたとしたら、国外に行っていたお金が国内で回ることができたら、この日本も変わりますよ。日本は水が豊かな国です。降り注ぐ太陽光も少ないわけじゃない。


ー 日本の未来を考えたときに、暗くなってしまうような話しか出てこない現状を変えられる可能性があるのかもしれないです。

大塚 ちょっとしたきっかけで、一気に日本はエネルギー大国になれるポテンシャルを持っている。日本にはこんなすごい技術がある。日本もまだ捨てたもんじゃないって意識を若者が持ってもらえたらいいですね。そのなかから新たな技術を開発するっていう人が出てくるかもしれないしね。


大塚尚幹(自エネ組)
福島県川内村の獏原人村で暮らしていたが、福島原発事故によって岡山に移住。自分たちでエネルギーを自給していこうという主旨で自エネ組(自給エネルギーチーム)を立ち上げ、 ローテクなアイデアでさまざまな方法を提案している。一級建築士であり、SHOKAN designの代表として、建築材は出来るだけ自然に還りやすいものを選び、未来の子どもたちに負担にならい住宅づくりを目指している。https://shokan.jp/

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