DAWES@フジロック。ヘブンのヘッドライナーにふさわしい自由に満ちた時間。

 2022年のフジロックで集中して見たライブは、THE HU、KIKAGAKU MOYO、DAWES、BLOODYWOOD、SNAIL MAIL、FOALS、JACK WHITE、ALTIN GÜN、TOM MISCH、MOGWAI、MURA MASA、そして最後のTAKKYU ISHINO。このなかで、特に印象に残っているのが、初日のヘブンで体験したDAWESだった。

 DAWES(ドーズ)のことを簡単に紹介しておこう。アメリカ・ロサンゼルスを拠点にするフォーク・ロックバンド。2009年にファースト・アルバム『North Hills』をリリース。2015年に発表した4枚目のアルバム『All Your Favorite Bands』が、米ビルボード・フォーク・アルバム・チャートで1位、ロック・アルバム・チャートで4位を獲得。ボブ・ディランやジョン・メイヤーとツアーを周っている。最新作が来日直前に発表された『Misadventures of Doomscroller』。メンバーはテイラー・ゴールドスミス(ボーカル/ギター)、グリフィン・ゴールドスミス(ドラム/パーカッション/バック・ボーカル)、リー・パルディニ(ピアノ/オルガン/シンセ/バック・ボーカル) 、ワイリー・ゲルバー (ベース)の4人。名前からわかるように、テイラーとグリフィンは兄弟。ライブではサポートギタリストのトレヴァー・メネアが加わり5人編成となる。

 バンドのキャリアで特に気になっていたのが、昨年からフィル・レッシュ&フレンズのメンバーとしてクレジットされていること。グレイトフル・デッドのフィルは、若いミュージシャンとステージを共にすることで、サイケデリック〜ジャムの可能性を教授してきている。80歳を超えた今もなおインプロビゼーションを開拓し続けている。そんなフィルと一緒にやることになったミュージシャンたちによるバンド。フジロックに来日する直前の7月4日もフィル&フレンズとしてライブをしている。

 スタジオ盤から聞こえてくるウェスト・コースト・サウンドが、どういうふうにライブのなかで展開されて行くのか。どんなジャムを浴びさせてくれるのか。ロック系のジャムバンドの来日が久しぶりだったということもあって大いに期待してのライブだったけれど、期待以上のライブだった。1時間半というライブで、大きな物語を奏でる。一曲一曲のなかでも、それぞれに物語を構築していく。予想を超えるジャムではないけれど、ときにフッと別世界に誘ってくれる。そしてまた戻してくれる。それを何度も味わうことができた。音の中に入り込んでいく時間と、そこから一気に開放させてくれる時間のバランスが絶妙で心地よかった。メンバーそれぞれがフリーに遊べる余白を持って演奏しているのだろう。

 終演後、セットリストをもらった。演奏されていたのは12曲。あっという間に終わってしまった自分の印象では、もっと少ない曲数だと感じていた。演奏が止まることなく、次の曲へとつなげられていった証明でもある。初来日で初公演。お披露目という思いも、メンバーのなかにはあったに違いない。ヘブンのヘッドライナーにふさわしいライブ。単独のツアーならもっと深いところまで持っていってくれる。そんなことを期待させてくれるライブだった。

DAWES

07.29.22@FIELD OF HEAVEN

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