長野県原村 自分たちのスタジオで音と向き合う。【OGRE YOU ASSHOLE】

OGRE YOU ASSHOLE

大学時代に一度離れたものの、その時代以外は、一貫して長野にベースを置き活動を続けているOGRE YOU ASSHOLE。自分たちのスタジオを持ち、そのスタジオで音と向き合い、新しいアイデアを音に託している。


文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 伊藤 愛輔 photo = Aisuke Ito



 長野県原村。八ヶ岳山麓の西南部に位置する人口7500人余りの小さな自治体。OGRE YOU ASSHOLEは、ここに自分たちのスタジオを構え、活動の拠点としている。「このバンド名になったのは、僕が高校生の頃。残っているメンバーは僕しかいないんですけどね。松本のライブハウスに出ることになって、バンド名を決めなくてはならない。そこで、ドラムだった西新太が名付けたんです。松本で見たモデスト・マウスのドラマーの腕に書いてあったサインがOGREYOU ASSHOLEだったんです」


 出戸学が中学2年のときに原村に引っ越してきた。以降、名古屋での大学時代を除きここで日常を過ごしている。「90年代とかは、近くでレイブなどの野外パーティーも多かったようですね。小さかったから、そんなことがやっているなんて当時は知りませんでしたが。今のメンバーになったのが2011年。この頃からサイケデリック路線がはじまっているんです。20代の半ばくらいから、そういう音楽を中心に聞くようになっていって。簡単に言えばピンク・フロイドや70年代のドイツ音楽。それ以前も耳にしていたんですが、もう一回再発見したというか。そこから作る曲とかライブでの演奏スタイルが変わっていって、バンドに対する評価も良い方向に変わっていきましたね」


 出戸だけではなく、他のメンバーも長野に住み、原村のスタジオで自分たちの音に向かいあっている。「自分で自分のやっていることに飽きなければいいかなって思いますね。消化試合にみたいになったり、マンネリしないような刺激とかアイデアが常に自分のなかから出てくれば。それに越したことはないんですよね。別に自分のなかだけではなく、バンドメンバーでも、スタッフでも、誰でもいいんんです。バンド全体がマンネリしないような状況に常になっていればいいと思いますね。ライブでは、例えば誰かが走る走らないで曲の雰囲気が変わってくる。テンションでBPMが速くなったり遅くなったりっていうのがあって、同じ曲でも何かが変わってくる。ライブでクリックを聞いているバンドも多いようですが、自分たちのスタイルだと、それではそこには何もプラスされない。演奏というよりも作業に近くなってくるから。それがOGREにとっては一番の敵だと思っているんです。ROVOの野音のときも、ドラムの勝浦さんが練習でやったことがないことを何個もぶっこんできましたよ。そのほうがバンドとしてはおもしろいんですよ」


 クリックに支配された完成形を目指すよりも、その瞬間にしか起こりえないハプニングを自分たちのものにすること。だからこそ、OGRE YOU ASSHOLEのライブは、見ていてもいつも新鮮だ。週末にライブを行い、月曜から水曜にはひとりでスタジオに入り、木曜と金曜がバンドの練習。それが出戸にとってのルーティーンだという。「練習では、本番さながらみたいなことはしないんです。ニュアンスなんかの細かいところを詰めていくだけで、自分たちを開放するような練習はまったくしないですね。何時間でも練習できるんですけど、やって3時間くらいですね。それ以上になると集中力がなくなってしまいますから。スタジオに長くいるときもあるんですけど、そんなときは喋っています。できれば、常に新しいことを、新しいと思えるようなことをやっていけたらいいなと思います。バンドのなかで違うことをしようっていうのが、みんなだいたい同じタイミングで来るんです。ずっと同じことをやれない人たち。飽きてくるというよりも、作業っぽくなってしまうことを嫌う。バンドの音や相手の音を聞かなくなって、自動化して弾けちゃうようになってくると、自分たちはもちろん、見ている側もおもしろくないかなって思うんです」


 自分たちのスタジオでベースとなるものを固めて、それ以外の場所で開放させる。このバランスが、OGREの4人にとっては最適なのだろう。そしてその環境を持つことが許されているのが、出戸が育った原村なのだろう。「僕らは、たまたま田舎で生まれ育ったというのが大きいと思います。バンドマンって出会いも大切ですよね。それを投げ打ってまで田舎に行くという人は、少しずつだけど増えてきているように思います。このスタジオでは時間の制約もないし、実際に自分たちがライブで使っている機材で練習ができる。経済面と時間のことを考えれば、バンドにとってはやりやすい環境です。ここに住むことでもらっているものが何かはわかりませんが、誘惑はないですよね。自分に向き合うしかないっていうか。時間はあり、他に遊ぶところはない。作家さんが締め切り間近になると旅館かなんかに籠るっていうことを聞きますが、ここでは同じような環境が日常生活なんですよね。東京はいいよなって思うこともあります。人から受け取れる情報で溢れていて、そういう意味の情報は原村には少ない。けれど結局はここなんですよね」


 ミュージシャンとして、何を核に置くか。OGRE YOU ASSHOLEにとっては、新しい音をクリエイトしていくことであり、そのための最善の方法が、原村という場所で自分たちのスタジオを持つことに他ならない。




関連情報

OGRE YOU ASSHOLE

2005年にセルフタイトルのファースト・アルバムを発表。出戸学、馬渕啓、勝浦隆嗣、清水隆史という現在のメンバーになったのは2011年。この年にリリースされた『homely』以降、サイケデリックロック、ポストロック色が強い作品へと移行。最新作は昨年秋にリリースされた『ハンドルを放す前に』。今年の夏はフジロック〉〈Topped〉などのフェスへの出演が決定している。http://www.ogreyouasshole.com/

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