SONG OF THE EARTH 2017.3.11

福島県郡山市にある南一丁目仮設住宅で3月11日に開催された〈SONG OF THE EARTH〉。
この仮設には富岡町と川内村の方が暮らしている。Candle JUNEの呼びかけによって、ミュージシャンをはじめ多くの人がその場所に向かった。なぜ福島へ行くのか。福島の人たちと3月11日を同じ場所で過ごすことによって、自分の内から浮き上がってくるものを再確認すること。



文 = 宙野さかな 写真 = 宇宙大使☆スター


3月11日、郡山の仮設住宅にて。

東日本大震災以降、月命日の11日に、福島のどこかでキャンドルを灯してきた <ラブフォーニッポン>。7年目の3月11日は、福島県郡山市にある富岡町と川内村の仮設住宅の敷地で、〈SONG OF THE EARTH FUKUSHIMA〉として開催された。〈SONG OF THE EARTH〉は、中越地震の復興イベントとして新潟県でスタートしたイベントで、今回、福島でもこのタイトルが名付けられた。ライブで出演したのは、TOSHI-LOW若旦那細美武士ORANGE RANGE渡辺俊美谷本賢一郎片平里菜青谷明日香後藤正文MINMIなど。大震災以降、積極的に復興のために活動を続けているミュージシャンたちの名が並んだ。

SONG OF THE EARTH〉を立ち上げ、 <ラブフォーニッポン>の代表を務めているのがCandle JUNE。 JUNEさんは、毎月福島を訪れている。他にどんなイベントが入っていようと、毎月11日には福島にいる。その意志の強さには頭が下がるばかりだ。

6年前のこの日とは違い、福島は晴れ渡っていた。けれど高幡山や飯森山から冷たい風が吹き降ろしてきている。春がまだ遠い東北の1日。若旦那はテージでこんなことを語った。「この福島の今日の寒さを実感するために、毎年ここに来ています」と。

観測史上3回目となる最大震度7を記録したマグニチュード9の大地震。地震や津波の被害だけではなく、福島原発の放射能汚染は今も影を落としている。会場の仮設には富岡町と川内村の方が暮らいる。しかし全域に避難指示が出されていた富岡町ではイベントが終わった後の4月1日に帰還困難区域を除いて避難指示が解除された。

大震災から6年いう月日が経過した。強烈だった記憶も、少しずつ薄れていってしまう。忘れることも人間の能力のひとつだと言われるけれど、忘れてはならないこともある。被災した場所で暮らし続ける人に寄り添いながら、未来に向けての一歩を踏み出ことをサポートしたい。 JUNEさんは、きっとそんなシンプル思いを胸の奥底に秘めているのだろう。参加したミュージシャンも東京から駆け付けた多くの出店者も、その思いを共有するために福島に向かったに違いない。どのミュージシャンも、ステージから福島への思いを口にしていた。そして自分にできることとは何なのかを再確認していた。


悲しみから喜びへの道しるべ。

ライブや出店など、コンテンツを見ればフェスに違いない。〈SONG OF THE EARTH〉のテーマは「たのしいね、うれしいね、おいしいね、ありがとう」の命日を作ること。そして、 <ラブフォーニッポン> が活動してきた福島、新潟、熊本で生まれた絆を伝えていくこと。その場として、架空の街であり、1日限りのアミューズメントであるフェスは、うってつけのイベントに違いない。しかも入場料がないフリーフェスなのだから、誰をも受け入れる器の大きさを示している。

JUNEさんはイベントの最後に、こんなことを語った。「自分は追悼も黙祷もしないと言っています。なんでって言ったら、津波被害があった多くの町の人たちも、亡くした家族はあの世なんかに行っていないんだと思っているから。だから『安らかに』なんて、まだ絶対に言わないぞって。毎月毎月、みんなで訪れて、楽しい1日を過ごしているからねって、大丈夫だよって。そういう灯りを灯すからねって約束しています。だからいつも最後に全部の片付けが終わったときに、一本締めするんですけど、その手を空に掲げます。届けたいんです、キャンドルの灯りだけじゃなくて。いろんな人が集まって、命日や月命日を、みんな元気にやっているぞっていうことを、空で見ている人たちに届けたいので、最後はそういう締め方をしています。3月11日、そしてその日以降にも原発事故関連で多くの方たちが亡くなっています。その何万人すべてに届くくらい、大きな気持ちを空に飛ばしてくれたらうれしいなと思います。それがいつか、追悼の灯火を灯す11日までに続ける大きな仕事だと思っています」

7年目の一歩目となった仮設住宅での〈SONG OF THE EARTH FUKUSHIMA〉。この地球という星に暮らしているのなら、自然がもたらす災害とは背中合わせだ。今のこの瞬間に何が起こっても不思議ではない。だからこそ被災した方の体験は、次に生かされるべきだ。そこには命を繋いでいる人たちがいる。

新潟でも福島でも、 JUNEさんはこう言う。「悲しみから喜びへ」。その道しるべとなるものが、月命日に灯されるキャンドルであり〈SONG OF THE EARTH〉なのだろう。

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