【Seiichi Sakuma (SKM)】音の雑食から浮上したダンスの進化系。

コロナ禍で降りてきた「ジャズ」への渇望。頭のなかに浮かび上がってきた音像が、ライブで出会ったミュージシャンたちと奏でることで、リアルな音世界へと変容していった。


文・写真 = 菊地 崇 text & photo = Takashi Kikuchi


– 最初に簡単にドラマーとしての経歴を聞きたいのだけど。

 ドラムをはじめたのは中学2年のとき。全然弾けなかったけど、ギターをやっていたんですね。同じ年で無茶苦茶上手い奴がいて、ある日そいつが「今度ライブをしたいから、お前がドラムをやってくれ」って言い出して。俺は金がないし無理だって言ったんですけど、そいつがお年玉があるからってドラムセットを買ってくれたんです。


– そこからドラムにはまっていったんだ?

 そのバンドではじめてやったのがブランキージェットシティでした。中村達也さんのドラムってすごいじゃないですか。俺もこうなりたいって思ったんです(笑)。その後、ミクスチャーのバンドとかハードコア・メタルのバンドをやって。


– JAMやDJのシーンと出会っていったのは?

 2008年とか2009年とか。ターンテーブル3台を使ってバイナルを回すから、それに合わせてドラムを叩いてくれって言われて。その人が飛び音を出して、俺がドラムを叩く。それまでに出会ったことがない音楽を教えてもらった。ほぼ同じ頃に、夕焼け楽団のイノさん(井ノ浦英雄)さんに出会い、イノさんの家に遊びに行くようになって、60年代や70年代の音楽を学んだんです。イノさんは、ジャンルにとらわれないで、ドラマーとして確固たるものを持っていらっしゃる。ドラマーってこうあるべきなんだってことも教わったんですね。音楽に括りはないんだってことを教えてもらいました。自分の大切な師匠です。


– そこからdigdaなり、いろんな音楽の方向に向かっていった?

 エンターテイメント・ギャングを目指して(笑)。digdaもZAKINOも、聞いただけじゃつかめないかもしれないけど、見たらヤベエっていうバンドでありたいんですよね。ライブでは強力な波動が出ている。それはDJとは確実に違うものです。自分は超がつくほどの雑食。自分で自分のことを決めたくない。日々進化したいし、進化していく俺を見てもらいたいし聞いてもらいたい。縛れれたくないし、やりたい音楽はまだいっぱいありますから。

– リリースされたZAKINOはSKMのソロプロジェクトなの?

 digdaをやりつつ、JOHN NAKAYAMA TRIOをはじめたんですね。このバンドでヨーロピアンジャズと出会った。演奏していくうちに、俺はジャズが好きなんだって、単純になっちゃうんですね。コロナになってライブがなかなかできなくなったときに、自分が一番やってみたいと思った音楽がUKジャズだったんです。digdaでも他のバンドでも、いろんなフェスに出ているけれど、UKジャズのバンドでフェスに出たいなって思って。やりたい音楽が常に頭のなかに鳴っているんですよ。


– ZAKINOも、メンバーに声をかける前から、音が頭のなかで構築されていた?

 メンバーは自分のなかで声をかける前から決まっていました。キーボード2台、サックス、ベース、ドラムという編成が見えていましたね。ミュージシャンって2種類に分かれると思うんです。点で描くミュージシャンか、面で描くミュージシャンか。JOHN NAKAYAMAさんは面を描ける人。もうひとりのキーボードの(金子)巧ちゃんは面を点で描いてくれる。これが合わさったら絶対ヤバイと。案の定、ヤバかった(笑)。


– 頭のなかで音を構築する際に、自分のドラムもそこにあるわけ?

 自分がいたほうがわかりやすいですね。自分のドラムありきで考えます。実際にライブをやっているときは、そんなことを考えていないですけど。


– ライブをやっているときはどんな感覚なの?

 絵を描いている感覚に近いですね。身体が勝手に動いている。上のほうから、一緒に演奏しているみんなを見ている。感じている。ドラムってすごくスピリチュアルなんですよ。練習で12時間とか叩き続けることがあるんですけど、自分が自分じゃなくなるところまでいくんですね。そうなってからさらにおもしろい。


– それはセッションしていても、同じような境地になることも多いの?

 冷静な自分もいるんですよ。冷静と情熱の間に位置している楽器がドラムだと思います。すごい澄んだ湖で、炎を焚いているみたいな。音を妄想しながら、具現化させていく。この人の音をたぎらせたいなって思ったら、その人の音を手繰り寄せていったり、それぞれの色合いを混ぜていったり。だからいろんな人とやりたいし、括られたくないんです。


– 音が混ざることで新しいものが生まれていく。

 音楽なんて、化学反応でしかないわけですから。自分の頭のなかにあるっていうことは、この人とこの人と俺が混ざるとこうなるっていうことが見えているっていうこと。そして一緒に演奏したら、それ以上のものが生まれる。ZAKINOは、SKMというドラマーのソロプロジェクトです。ドラムのソロ作って、プレイヤーとしてのスキルやフィーリングを聞かせることが多いじゃないですか。そうじゃなくて、自分のドラムの振り幅を見せたかったんですよ。


– 最後にZAKINOってどういう意味?

 俺の地元が野崎なんですよ。NOZAKI(笑)。


取材協力 = チャンプルコーナー(茨城県下妻市)

Seiichi Sakuma(SKM)

10代から数々のバンドやセッションに参加してきたドラマー/コンポーザー。Cosino RyutarやNoryという新たなメンバーでdigdaを再始動させたのが2017年。数々のフェスやライブで全国各地を巡っていたが、コロナ禍で海外に出ることが難しくなってしまったことが要因で、ソロプロジェクトの制作に着手。ダンス・ジャズ・アルバム『ZAKINO』が完成した。ZAKINOはファーストアルバム名であり、SKMのソロプロジェクト名でもある。12月12日に川崎・元住吉Powers2にで「サク祭」が開催される。

サク祭

開催日:12月12日(日)

会場:Powers2(川崎・元住吉)

出演:鎮座DOPENESS、ZAKINO、digda、DAHMA、GPSY VIBS、Bunchum



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