コロナの時代に生み落とされた名盤。【AO YOUNG(DACHAMBO)】

「もう2度とできないだろう」と本人が語るほど、時間と労力を込めたソロアルバムが完成した。時代を追うことではなく、いつまでも残っていく歌。コロナの時代だからこそ、そんなアルバムが生まれた。

文・写真 = 菊地 崇 text & photo = Takashi Kikuchi


— ソロとしては何年ぶりのリリースになるの?

AO 前の『Heartfull Moon』が2012年だから9年ぶりになります。


— 9年前ということは東日本大震災の翌年だから、リリースに関してもその影響って少なからずあったのかな。

AO 振り返ると急いで作った気がします。作らなきゃっていう思いが先走っていたというか。


— 高校のときには、どんな音楽を目指していた?大学時代はブラックミュージックだったよね。

AO ブリティッシュロックとか。キンクスとかもコピーしていましたね。今回のソロアルバムでも共作させてもらった 「DRIVE」の山根(ただし)師匠と知り合って、師匠に「オーティス(・レディング)を聞きなさい」って言われたんですよ。それからオーティスを聞きはじめたんですね。それが高校1年のときで。その後にRCサクセションのライブを見に行ったら、(忌野)清志郎さんが滅茶苦茶オーティスで、RCにはまってしまって。俺の世代でRCのライブを見ているのって、わりとレアなんです。


— RCの解散は91年だったから。

AO RCやブラックミュージックが好きな大学生たちが集うライブハウスに入り浸るようになって。いろんな音楽、いろんなミュージシャンを教えてもらって。札幌の高校生にとっては、かなりおもしろい体験でしたね。


— クラウドファンディング(クラファン)によって、ソロアルバムの制作を発表した。もちろんクラファンという手段を取る前から作りたいと思っていたんだよね?

AO ずっと思っていたんですけど、タイミングときっかけが自分のなかでつかめなったんですね。去年の夏前に、コロナによってライブができなくなって、ちょっと塞ぎ込んでいた時期があったんです。そのときに新しいアルバムを作ろうかっていう考えが浮かび上がってきて。AO YOUNG TRIOのMr.Stoneが茅ヶ崎でスタジオを持っているんですけど、「まずは一発録りでいいから、ひとりで録ってみれば」って言ってくれて。それでスタジオに入って。2日で一気に12曲くらい録っちゃんたんです。それがもう1枚の弾き語りアルバムの『NOW HERE ↔ NO WHERE』です。いい音で録れたし、作品としても胸を張れるものだなって思えたんだけど、CDとしてリリースするっていうまでにはいたらない。


— それはソロアルバムとしては、もっと違うものをという思いがあったから?

AO きっとそうだったんでしょうね。ライブがなくなってしまったことで時間もたっぷりあるし、次のステップに行ってもいいなって考えていたら、いろんな人に後押ししてもらって、クラファンという手段もあるって教えてもらって。


— クラファンをすることでプレッシャーもあった?

AO 当然ありましたよ(笑)。当初は年明けに発送します、ということをクラファンに載せていたから。でも実際にアルバムを作りはじめたら、想定していたスケジュール通りには行かず。ひとつひとつの過程が勉強にもなりましたね。


— 参加しているミュージシャンも多い。どうやってレコーディングは進めていったの?

AO ドラムとベースがメインのスタジオベーシックに仮歌を入れておいて。こんな感じでやってほしいということを伝えて演奏してもらう。レコーディングはずっと楽しかったですよ。仲間を呼んで、仲間が演奏するのを聞いて。アルバムにこの曲を入れたいと思ったときに、自分の頭のなかで鳴っていたイメージがあって、どんどん形になっていくことをずっと見ていたわけですからね。本当にワクワクしっぱなし。コロナ禍ということもあって、このメンツを呼べることができた。だからすごく満足していますね。

— アルバム制作に関してのDACHAMBOとの違いは?

AO DACHAMBOは、基本はギターで曲を奏でていくんですね。誰が中心になるというわけではなく、バンドで作っていく。ソロに関しては、歌があって、そこから演奏が加わっていく。そういう意味では、ベクトルがまったく違うんですよね。『AROUND AND AROUND』は完全に自分のわがままというか。頭のなかにあるものを形にしたかったし、それをやらせてもらった。


— その意味では満足度も高い?

AO かなり高いですよ。長く時間もかかったけど、妥協をしなかったというか。納得できるまでやり切れた作品だと思います。


— CDというパッケージとしても、かなり凝っているしね。

AO クラファンで応援してくれた人たちが手に取って「絶対にヤバい」って思ってもらえるものにしたいじゃないですか。音はもちろん、ジャケットも、発送の際の梱包までこだわって。すべての面で、予算をかけ過ぎちゃいました(笑)。


— コロナという時代に陥って、その時代の自分の歌を残していきたいという思いもあった?

AO そういうものはないですね。自分の好みの問題だけど、普遍的なもの、ずっと聞いてもらえるものを作りたいなって。その思いは高校時代に、オーティスやRCを聞いてソウルシンガーを目指したときからずっと変わっていないですよ。


— このアルバムのレコ発ライブを期待しています。「いきている限りパーティーはつづく」だから。

AO メンバー全員を呼んでね。このメンバーで〈フジロック〉に出たいなあ。もちろんヘブンで。

取材協力 = チャンプルコーナー(茨城県下妻市)


AO YOUNG『AROUND AND AROUND』
今年20周年のメモリアルイヤーを迎えたDACHAMBO。日本が宇宙に誇るサイケデリック・ジャムバンドのフロントマン。ソロ名義としてはおよそ9年ぶりとなるアルバムが『AROUND AND AROUND』。2020年夏にクラウドファンディングによってアルバム制作を発表。総勢20名を超えるミュージシャンが参加した、ソロ名義としては初のフルバンド・アルバムが完成した。同時にアコースティックによる『NOWHERE ⇔ NOWHERE』もリリースした。http://dachambo.com https://aoyoung.base.shop/

LIVE SCHEDULE

21/12/25(土)@静岡 FreakyShow  

DACHAMBO

121/2/26(日)@東京 金町AO’s BAR  

DACHAMBO

21/12/27(月)@所沢 音楽喫茶MOJO  

Indus & Rocks presents ミラクル忘年会 DACHAMBO

21/12/31(大晦日)@横浜 Grass Roots

Count Down Party !! DACHAMBO w/ 元晴 etc…

22/01/02(日)@江ノ島 OPPA-LA

AO YOUNG TRIO

22/01/08(土)@横浜 THUMB’S UP

AO YOUNG

22/01/09(日)@渋谷 club asia

DACHAMBO

22/01/23(土)@横浜 THUMB’S UP

DACHAMBO新年会「HERBESTA ROOM vol.6」Guest : らぞく

0コメント

  • 1000 / 1000