【Gravityfree】空気感をつかみ、絵に昇華させていく感覚。

ふたりで絵を描きはじめてから20年目。初の絵画展が2020年11月に開催された。数多くのフェスやクラブでライブペインティングを行なってきたふたりにとって、ライブで描かれる絵も「残す」ものへといつしか変わっていったという。

文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 北村勇祐 photo = Yusuke Kitamura


ーふたりは都内にある同じ絵の専門学校で出会ったんでしたよね。絵の学校に進学したというのは、絵で仕事をしていきたいという思いがあったからなのですか?

イラストの仕事っていうよりも、オリジナルの絵を描きたいっていう願望のほうが強かったと思います。

知り合ったのは学校ではなく寮なんですよね。入ったのはイラストレーションだったんだけど、グラフィックデザイン専攻のほうが、おもしろそうな奴が多かったんですよ。イラストレーションがアニメ系でグラフィックデザインがストリートカルチャー系っていうか、音楽が好きでクラブ遊びをしているような奴が多かった。

ーGravityfreeとして活動するようになったきっかけを教えてください。

専門学校を卒業して実家のある茨城に帰ったんですよね。部屋を借りるお金がなくて。3年暮らして東京に戻ってきて、友だちに頼まれたイベントのフライヤーを描きながら、どうやったら絵で食っていけるのかって悩んでいた時代。

フライヤーだけの予定だったのが、イベントの当日にDJOWがイベントで大きな絵を描きたいって言い出したんです。

終わらなくてもいいから、大きな絵を描きたいと。茨城で看板屋でバイトしていたこともそう思ったひとつの要因だったのかもしれないですね。エイ君の他にクミちゃんって女の子も手をあげて、それで3人でベニヤ2枚に描くことになったんです。

だから最初はDJOW & 8G & KUMIみたいな名前でやっていたんですよ。何回かやっているうちにクミちゃんが「Gravityfree」という名前を付けてくれた。

ふたりになってからも、俺らは惰性のままその名前でやっている感もどこかにあるんですよ(笑)。


ーそれが2001年?

そのライブペインティングは2002年でした。


ー当時の絵はどういう感じだったの?

かなり衝動的でしたね。何を描くのかっていう目的を持つのではなく、小さな子どものように本能のおもむくまま。完全に遊びで、ライブペインティングで何かをなそうなんて魂胆はまったくなかったですから。


ー一貫した絵のテーマって持っているのですか。

自分たちの絵を振り返ってみると、結局「グラビティフリー〜無重力」っていうことがずっとテーマだったんだなって。そこからブレていないんです。心を開放させるっていう点においても。

若い頃ってすごく締め付けられることが嫌いじゃないですか。絵を描くことで、自分たちも開放されていたのかもしれないですね。その意味では、自分たちに絵という存在があってよかったと思います。

ーふたりでやっていくと決意したのはいつ頃だったのですか。

確信っていうものが、もしかしたら最初からあったのかもしれないし、今でもないのかもしれないし。声をかけてもらったらやりに行くということを続けていたらこうなっただけなんですよ。


ーGravityfreeにとってフジロックで絵を描くということも大きかったと思います。

最初は2006年でした。ストリング・チーズ・インシデントが出演した年。何もわからま

いまま出ていて。

あのヘブンで、いろんな人に出会ったし、いろんなことを教わりましたね。いつかはわからないんですけど、ライブペインティングでも残す絵にシフトしてきているんです。もうちょっとしっかりした絵にしたいっていう願望が大きくなってきたっていうことなんでしょうけど。それは〈フジロック〉での経験も大きかったと思います。描きっぱなしではなく、最後には着地させる。


ー自分たちの描いた絵の上に、新しい絵を描いていたりしたよね。

絵が何度か変わる。アニメーションみたいなこともやっていましたね。俺らは他のことを知らなかったからそんなことをやっていたんだと思う。俺らしかいないっていう感覚もありましたから。

今やっているライブ、会場を満たしている音楽と描いている絵がシンクロしないと納得できなかったんです。だからバンドのライブが終わって四つ打ちのDJになったら絵をまったく変えちゃっていた。その瞬間を感じてもらえればいいと思っていたんですね。普通に描いているだけでも、お客さんは見ていて楽しいんだ、おもしろんだって、自分たちで思えるようになってから、残す絵ということをより意識していったんだと思います。


ーライブペインティングはどんな存在ですか。

これからも遊びではありたいと思っていますね。自分たちも楽しみたいっていう思いが強い。

遊びの部分を入れないと自分たちにとっておもしろいものと思えるものに仕上がっていかない。音楽やその場の雰囲気によっていろんなアイデアが出てくる。いろんなところから何かをキャッチして絵に加えていく。それがライブペインティングの醍醐味ですから。

その場でしか生まれないもの。俺らは変更が多いですから(笑)。白い布にベタを塗る。一本の線を入れる。そうすると見えてくるものも違ってきたりするんです。

ライブペインティングにしてもアトリエで描く作品にしても、結局は自分らの血と肉が入っているわけじゃないですか。ある意味で絵は自分たちの子ども。そういう感覚もあるんです。今日のパーティーやフェスのなかで、子どもがちゃんと光っていてくれているのか。そういうことも気になりますよ。


ー11月にはGravityfreeの個展も開催されました。

ギャラリーを自分たちで借りて開催するGravityfreeの絵画展は初になります。20年目のGravityfree。新しい流れかなとも思っているんですけどね。


ー20年を振り返って、どんなことを感じていますか?

いろんな人にいろんなことを学ばせてもらったなあって思いますね。ほとんどいただいた仕事ばかり。ここで絵を描いてくれ、ここに絵を描いてくれって言っていただけた。それはフェスなど外で描いてきたことも大きいと思うんです。筆によって、いろんなカルチャーを教えてもらえたし、いろんなところに連れて行ってもらえましたね。

上を目指したらきりがないのだろうけど、自分たちの絵を描くということを続けて来られたことは幸せなことだと思います。

絵を描いて暮らしている。それって本当にありがたいですよね。これからどうしていきたいっていう目標はないんですけど、やりたいことはいっぱいあるんです。やりたいことをひとつひとつコツコツやって、自分たちの絵を描き続けていきたいと思っています。


Gravityfree Schedule

●EXHIBITION

Now On The Street(グループショー)

参加Artists:Dragon76、COOK、TadaomiShibuya、Gravityfree、KensukeTakahashi、TOKIO AOYAMA、WOOD、LuiseOno

会場:MEDEL GALLERY SHU(日比谷・帝国ホテルプラザ2F)

会期:4月13日(火)〜4月25日(日)

●LIVE PAINTING

4月10日(土)YOKOHAMA JUGBAND FESTIVAL vol.20@横浜駅西口NIIGO広場ほか

5月1日(土)DACHAMBO GW SPECIAL THUMBS UP 23rd ANNIVERSARY WEEK

《 HERBESTA ROOM vol.4 》@横浜THUMBS UP

0コメント

  • 1000 / 1000