【ハイライフ八ヶ岳レポート】コロナ時代のフェスのカタチを示してくれたハイライフ八ヶ岳で感じたこと。

やっぱり暮らしにフェスは必要だ!という実感

 9月12日(土)、13日(日)の週末、野外音楽フェス「ハイライフ八ヶ岳」が山梨県北杜市で開催された。フジロックをはじめとする多くのフェスが延期、中止となった2020年。「ハイライフ八ヶ岳」も当初予定していた7月開催を見送り、9月に延期しての開催となった。2日間の来場者人数は述べ3,000人。出店ブースが並び、多くの人の笑顔が溢れるフェスの風景は本当に久しぶりのものだった。

 会場を歩きながら胸に込み上げてきたのは、「やっぱりフェスって必要だよなぁ」という思いだった。キッチンカーからは食欲をそそるな匂いが漂い、そのまわりでは子どもたちが元気に走り回っている。雑貨やウェアを販売する出店ブースを物色するのに夢中になっていると、遠くからお目当のミュージシャンのライブが聞こえはじめ、高鳴る気持ちを抑えながら急ぎ足でステージに向かう。目の前で演奏される生の音楽を全身で感じ、その感動を参加者みんなで共有する……。そのひとつひとつが、決してフェスは「不要不急」なんかじゃないと強く実感させてくれるものだった。

徹底したコロナ対策の構築


「ハイライフ八ヶ岳」を主催したのは、東京のイベント制作会社アースガーデンと山梨県北杜市の地元メンバーによる実行委員会だ。アースガーデンでは、緊急事態宣言下の5月から無観客ライブ配信をおこない、6月以降も政府のガイドラインや社会状況を見極めながら70人、150人と徐々に規模を大きくしながら野外音楽イベントを続けていた。会場ではマスクの着用や手の消毒、ステージ前の密を避けるため間隔を空けてチェアを並べるなどのコロナ対策が取られていた。「フェスの灯を絶やさぬように」と、コロナ時代の新しいフェスの在り方を模索し続けていたのだ。

 そうした経験とノウハウを重ねたうえで開催された今回の〈ハイライフ八ヶ岳〉。来場者にはあらかじめ接触確認アプリ「COCOA」のダウンロードや個人情報の提供をお願いしていたほか、開催当日は会場ゲートにてマスク着用や体温チェックに協力してもらうなど、徹底したコロナ対策が講じられていた。

フェスの感動とコロナに対する責任を分かち合う

 コロナ時代初の野外フェスとなった「ハイライフ八ヶ岳」。感染のリスクもあるなか、それでもチケットを買い、会場に足を運んだ来場者たちは一人一人がそのリスクと責任に向き合っているように感じた。「みんなでこのフェスを成功させるんだ」という意識が共有されていたし、だからこそ会場ではルールとマナーは守られていた。フェイスシールドをしながら体を揺らす来場者の姿がとくに印象的だった。

 そしてなにより、フェスという空間への感謝の気持ちが会場に溢れていた。なかには「テント張っていたら『本当にフェスに来たんだなぁ』って泣きそうになっちゃいました」と話す参加者もいた。

 それは出演ミュージシャンもおなじだった。2日目に出演したクラムボンは2020年のライブスケジュールがすべて白紙になり、「ハイライフ八ヶ岳」のステージが今年初のライブパフォーマンスとなった。Vo&Keyの原田郁子は「ライブできないって状況になると、こんなにやりたくなるんだね。だめだ、もう泣きそう……」と目を潤ませ、Baのミトは「マジで本当に尊いです!」と感情を漏らし、会場は拍手とともに独特な一体感に包まれていった。

新しい時代を生きていくしかない

「絶対に感染者は出しません、とは言えない。嘘になっちゃうから。だから徹底的に対策をしたうえで、もしかしたら出るかもしれない、という覚悟を持つしかない。そのときはまたみんなで考えて、一歩ずつ進んでいくしかないんだと思う」とはアースガーデン代表の南兵衛さん。

 この時期にフェスを開催することには、さまざまな意見があるだろう。「感染者が出たらどう責任を取るんだ!」という批判もあるかもしれない。しかし、感染を防ぐためにすべての活動を止めていたら私たちは生きていけないし、音楽が、フェスがなければそれこそ心が廃れてしまうという人が少なからずいるのだ。小さな子供を抱える女性参加者は次のように話してくれた。「まだフェス開催は早いという意見もあるかもしれないけど、誰かがやらないといけないでしょ」。


 加藤登紀子さんはステージ1曲目にジョン・レノンの「イマジン」を歌った。「想像しよう……」。語りかけるように歌う加藤登紀子さんの「イマジン」は、目に見えないコロナウイルスのことを想像し続けること、そして一人一人がこれからのコロナ時代との付き合い方を考え続けることの意味を伝えてくれていたように思う。


 コロナのリスクをゼロにすることはできない。しかし、リスクがあるからとフェスを無くしてしまえば、ひとつの文化が社会から消えることになる。ならば、どのようなカタチであればフェスが開催できるのかを模索し続けていくしかない。〈ハイライフ八ヶ岳〉はそのひとつの指針を示してくれた。

 アースガーデンでは10月31日(土)、11月1日(日)に東京の代々木公園でマーケットフェスイベント「earth garden秋」を開催する。野外ステージでのフリーライブやトークが繰り広げられるほか、マーケットエリアではオーガニックに根ざしたクラフト、雑貨、衣類、フードがズラリと並ぶ。興味のある方はぜひ足を運んでみてほしい。

文・写真 = 加茂 光

アーティスト写真 = 高橋良平(加藤登紀子)、丹澤由棋(ROVO)


earth garden秋

開催日:10月31日(土)11月1日(日)

会場:代々木公園イベント広場・けやき並木

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