GERONIMOという名の自由の戦士たち。

2017年から月に1回のペースでリハを続けたGERONIMO。そして今年の秋、その生とも言えるリハーサルの音源をファースト・アルバムとしてリリース。11月の沖縄からライブも始動する。

文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
photo = Toshimichi Tanaka


ー そもそも、歌いはじめたのはいつ頃だったのですか。

山仁 衝撃的に歌いたいと思ったのは20代の前半。LOOP JUNKTIONをやっていたときですね。LOOPJUNKTIONは、俺のなかでは歌っていたんです。


ー 歌とラップは、山仁のなかでは違うものなの?

山仁 ラップだとライムしなきゃならないっていう掟があって、必ず韻を踏まなきゃならないっていうことがあるから、それに縛られちゃう。心理的に人の心を掴むのは歌なのかなって今は思っていて。ラップはロックから派生した新しい手法。歌は人の心をひとつにするようなパワーがすごく強いのかなって思う。歌うととにかく気持ちよくなるじゃないですか。俺がアーティストだから歌うっていうだけではなく、みんなが歌えばいいと思う。自分のノリで自分のリズムで歌えばいい。


ー ラップでは、その瞬間に浮かんだことを言葉として置き換えていたのですか。

山仁 フリースタイルでやっている人も多いけど、俺の場合は完全に仕込み。何年も何年も生活して、そのなかから導き出された言葉が出てくるっていう。


ー 1曲ずつメッセージが込められている?

山仁 言いたいことがあるということ。音葉遊びというものが俺のなかにはなくて、明確なコンセプトと明確な意志と意図があります。

ー GERONIMOというバンドを新たに組んだ。バンドを組もうと思ったきっかけとは?

山仁 2017年のはじめに、社会と隔絶せざるをえない状況に陥ったんですね。考える時間がたっぷりあって、何を次にやりたいのかなって考えたときに、出てきたのがバンドをやりたいっていうことだったんです。一緒にやりたい仲間として頭に浮かんできたのが、ギターの越野竜太とドラムのカッキー(柿沼和成)だった。ふたりに「一緒の船に乗るような意識を持ってひとつになるようなバンドをやりたい。周りにいる人間はみんな頑張っているけれど、もう一回みんなを焚きつけたいんだよ」って話して。同世代はもちろんのこと、データを使って音楽を作っているような若い世代も、音楽を続けている先輩たちも。そしてスタジオでのセッションがはじまったんです。


ー 定期的にスタジオでのセッションは続いたのですか。

山仁 2017年から月に1回のペースで今も続いています。1年近く3人でやって、やっぱりベースが欲しいということになってTOMOHIKOを誘って。集まってセッションして、セッションで生まれたメロディに対して俺が曲を書き下ろして、次にそれを再現する。3人のミュージシャンは、ある意味で職人だと思っている。どこでも自分の色を出せる腕のいい職人。確かにそうであるのだけど、バンドは腕がいいミュージシャンが集まってかっこいい音楽になっているというわけでは決してない。自分たちの曲を俺たちのノリでやることこそがバンドであり、その意味では少数精鋭の軍隊を作っているような感じ。「GERONIMOにはお前たちしかいない。自分のバンドだと思ってくれ」と3人には伝えているんです。ジャムセッションのなかから生まれたメロディに導かれた詩。もし音がなかったら生まれていなかった詩です。俺ひとりでは決して生まれないものがここにあるんです。


ー GERONIMOは4人がいてこそのバンドだと。

山仁 そうです。自分が声をかけたのだけど、全員が共通の意志を持ってバンドとして集約される。4人でしか生まれない音があり、音に対して全員で責任を持つ。誰かが欠けたとしたら、それはGERONIMOではなくなってしまいますから。


ー GERONIMOというバンド名は?

山仁 インディアンのジェロニモがすごく好きなんです。権力や納得のいかないことに対してはずっと反発していくという精神を持ち合わせているジェロニモ。大きな存在に対しては牙を向け、戦いを挑む。同じような意志が俺のなかにもあって。みんなも4人ならGERONIMOしかないと言ってくれた。


ー GERONIMOでは、どんなことを目指しているのですか。

山仁 嘘っぱちの自由じゃなくて、本当の自由。楽しみながら社会をカラフルにしていければいいなと思っています。


ー これからライブも始動していくのですね。

山仁 11月の沖縄が初ライブ。年内はそれ以外に岡山と山形。来年以降は、呼ばれたところには行ってライブをする。それは日本に限らず、世界中に行って楽しもうと思っています。バンドを続けるって奇跡だと思うんです。ひとりひとりの状況もどんどん変わっていく。そんなことはわかっているんですけど、バンドをやりたくなった。モチベーションを持続させることが難しくなってしまうかもしれない。だけど俺の場合は表現することが第一で、それが無くなってしまったら死んでしまう。40歳を過ぎて命も残っている。やっと本気になったということです。


『リハーサルテイクを君に』
山仁ことAPACHEMAN(Vo / LOOP JUNKTION)。柿沼和成ことPACKY(Ds / 犬式、光風&GREEN MASSIVE)。越野竜太ことGERO MAN(Gt / らぞく、(仮)ALBATRUS、digda)。TOMOHIKOことPORNO(Ba / SUPER BUTTER DOG)。ヒップホップ、ロック、ジャム、レゲエ、ブルース、ソウル、ファンク…。参加するバンドや数々のセッションで、感性とスキルを磨いてきた4人のミュージシャン/アーティストたち。共有するものを創造するために、バンドとしてスタジオで音を出し始めたのは2017年早春。そして2019年秋、ファースト・アルバム『リハーサルテイクを君に』を発表。11月24日沖縄 ・波の上フェスティバル、12月21日山形Sandinista、12月29日岡山えびすやでライブが予定されている。http://geronimospectrum.com/

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